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新首都圏ネットワーク


『紀伊民報』2004年12月1日付

和歌山大学
三重大と連携調印
大学法人化 県南部研究で独自性


 和歌山大学と三重大学(津市)は11月30日、共同研究や単位互換など大学間
連携を進める協定書に調印した。大学法人化を受けた生き残り策の一つで、研
究が遅れている両県南部の中山間地域の課題に取り組んで独自性を打ち出す。
世界遺産地域や紀伊半島沖地震の共同研究、紀南地方を拠点にした講座が予定
されている。

 大学、学部の枠を越えて教員が共同で研究したり、学生の単位取得を相互認
定したりして交流を進め、互いの人材、施設、ノウハウを有効利用する。研究
など連携の一部は新年度から始める。

 三重大は人文、教育、医学、工学、生物資源の5学部に学生7500人、教
員800人を抱える。3学部で半分近い規模の和大側は、三重大の豊富な教員
や医学部を含む広い分野の研究ノウハウに期待する。三重大側は、和大システ
ム工学部のIT技術や経済学部の社会人教育など先進的な取り組みに注目して
いる。

 三重と和歌山の県境から離れた両県北部にある2つの大学が、共通テーマに
位置づけているのは、高等教育や研究が遅れてきた紀伊半島南部の課題だ。

 調印式の後開かれた記者会見で、小田章・和大学長は「紀南の高等教育に力
を注ぐためには単独では不十分。防災面など課題が山積する紀伊半島の全体像
を描きたい」、森野捷輔・三重大副学長は「連携に当たって北を目指すか、南
を目指すか。北部の大都市の問題よりも、県南部が抱える地域の問題を見据え
た方が実りがある」と連携の理由を説明した。

 連携話が持ち上がった直接のきっかけは、今年4月の国立大学法人化。「法
人化で個性が求められる中、都市の大学と連携するとサテライト校化してしま
う」(森野副学長)という事情もある。

 共同公開講座やシンポジウムは、田辺市の県立情報交流センター「ビッグ・
ユー」内の和大紀南サテライト校など県南部を中心に開く。将来は県境の新宮
市周辺に連携拠点を設ける構想もある。

 共同研究の内容は、両大理事でつくる運営委員会が近く決定するが、両県に
またがる熊野古道などの世界遺産、東南海・南海地震や台風の防災など、紀伊
半島固有の課題が主なテーマになる。

 互いのキャンパスへの移動に時間がかかるため、テレビ会議システムなどを
多用するという。「距離の壁の克服」(小田学長)が大きな課題に位置づけら
れている。