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新首都圏ネットワーク


『朝日新聞』愛知版 2004年11月30日付

コスト削減で利点/県立3大学「一括運営」提言

大学・経営間の連携に懸念

 県立大、県立芸術大、県立看護大の3大学の「あり方検討会議」(座長・奥
野信宏中京大大学院教授)が29日、1法人が3大学を運営する「1法人3大
学」を提言したのを受け、県側は今後、法人の組織づくりの検討に入る。教員
やカリキュラムの共有化やコスト削減、職員の専門化などで利点が生まれるが、
経営側の法人と大学との連携を懸念する声もある。1法人による複数大学運営
は、全国初の試みで、その効果は未知数だ。

 報告書は、法人化に伴い、大学運営に経営の視点が導入され、教員以外の職
員の専門化を図ることができるとした。また「1法人3大学」は、小規模の法
人と比べ、(1)3大学間の教員や施設など知的資源の共通化・共有化を促進
できる(2)総務・財務・人事・企画などの法人部門一本化で、間接コストを
軽減できる(3)法人で採用した職員の人事異動の範囲を拡大できる、といっ
た利点があるとした。学長選考機関や教育研究審議機関は、大学ごとに設けら
れ、個々の大学の特性を生かすこともできるとした。

 奥野座長は「1法人1大学では、経営的なセンスが運営の中に入ってこない」
という。

 一方、県立大の佐々木雄太学長は「経営効率を求める法人側と、教育研究の
充実を求める大学側が衝突しない形を考えねばならない。経営効率優先で、本
来の目的の大学の活性化が失われていけない」と懸念を示す。

 法人化の時期は示されなかったが、奥野座長は「4年も5年もかかる話では
ない。可及的速やかに法人化してほしい。どんなに遅くとも08年度以降にな
ることはありえない」としている。

 報告書は将来、県立大と県立看護大の統合の可能性に含みを持たせた。

 県立大は、教育研究活動や昼夜開講制で県民の生涯学習への需要に応えてい
るとする一方で、少子化により教員需要が減っており、学部・学科構成でも際
立った特徴が見えにくいと、存在意義に厳しい評価がなされた。県立看護大に
ついても、委員から「小規模で運営するよりも、県立大と一般教養を一緒にや
り、県立大の校舎立地の良さを生かした方がいい」との意見が出された。

 委員からは「3大学が血を流す覚悟でやってもらわないと、再び統合の議論
になる」「10年、20年と目標を設定して独立採算にしてほしい」という厳
しい意見もあり、3大学を運営する法人の考え方次第では、再び統合が議論さ
れる可能性もある。

 県立3大学  県立大(長久手町、学生3186人)、県立芸術大(同、9
66人)、県立看護大(名古屋市守山区、370人)。学費が安く、自宅から
通学できるなどとして人気があり、今年度入試の競争倍率は4・6〜7・4倍
と高い。今年度予算では3大学で約42億円の県費が投入されている。