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毎日教育メール 2004年11月19日付 <視点>国立大学法人化と非常勤講師 矢倉久泰 先日、ある会合で関西の国立大学法学部長に会ったので「国立大学が法人化 されて何が課題になっていますか?」と尋ねたら「非常勤講師の問題です」と いう答えが返ってきた。文部科学省が国立大学に渡す運営費交付金が厳しくなっ ているので、大学全体の経費を抑えるためにも非常勤講師の給与や人員の削減 がターゲットになっているというのだ。 その話を聞いた後、しばらくして今度は東京で偶然、関東の国立大学の非常 勤講師に出会った。初対面である。立ち話だったが、「あなたの大学は如何で すか?」と聞くと、彼は「うちの大学は大変ですよ」と、非常勤講師に対する 大学のリストラ策を、堰を切ったようにしゃべり始めた。 彼によると、その大学は今年度から抜き打ち的に非常勤講師の給与がカット されたという。送ってもらった資料によると、非常勤講師給与の単価(1時間) は、Aランクが5850円へと11%減、Bランクが5400円へ、Cランク が4700円へとそれぞれ約2%カットされていた。彼によると、Aランクの 人が一番多いそうだ。 なぜ、こうなったのか。大学側の説明によると、文科省から交付された非常 勤分の予算は前年度比43%で、必要予算2億5000万円に対して1億60 0万円にすぎなかったという。しかし、非常勤組合が文科省に質したところ、 「専任・非常勤分を一括して、前年度分を上積みした額を出している」とのこ とだった。 「給与カットだけではありません。来年度以降、大学は非常勤講師を大幅に 減らす計画を持っているのです」。大学は教養教育を改革して実用英語の教育 に重点を置くことにし、英語以外の非常勤講師は大幅に減らすのだそうだ。な んでも「コールシステム」というコンピューターを使った英語教育システムを 導入するために費用がかかることもあり、英語以外の語学や教養の非常勤講師 のコマ数を2005年度から2年間で6割削減することになるという。 この大学に限らず非常勤講師は、法人化によって、どうやら整理の対象にさ れているようだ。その原因は、文科省の運営交付金の削減のほか、各国立大学 が「特色ある大学づくり」の方に予算をつぎ込んでいるからだ。非常勤講師の 役割は専任教員では手が回らない語学や教養科目、実践的専門科目について講 義することにある。したがって、大変重要な存在なのだ。 とりわけ最近は教養教育の重要性が教育界だけでなく各方面から指摘されて いるところだ。また国際化の中で英語以外の語学教育もますます必要になって きている。それなのに、それに逆行する動きになっていることは由々しきこと だ。各国立大学は考え違いをしていないか。(教育ジャーナリスト) |