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新首都圏ネットワーク


『科学新聞』2004年11月12日付

大学の競争力向上へ
スタッフにプロ意識を持たせよ

基本計画特別委で野依氏が発言


 大学に比べて理研の事務員が充実しており能力も高い。プロフェッショナル
スタッフを大学も集めなければならない。野依良治・理化学研究所理事長が、
科学技術・学術審議会の基本計画特別委員会で発言した。その後、現有スタッ
フの再教育、組織マネージメント、研究支援体制などについて多くの意見が出
された。本当に国立大学の事務職員は“不足”していて“使えない”のだろう
か。

 平成15年度の統計で見ると、国立大学の職員は5万5,493人、そこから技術系
や看護系などのスタッフを除く、事務職員は2万4,041人いる。対して教員は6
万882人。教員1人あたり0.394人の事務職員がいることになる。

 一方、理化学研究所の場合、定員の研究員が410人、任期付2,295人を加える
と2,705人、対して事務職員は定員269人に嘱託等を合わせて417人(10月1日現
在)。研究者一人あたりの事務職員は0.154人。

 約2倍以上、国立大学の方が充実していることになる。では、どうして国立
大学は事務職員が充実していないと感じるのか。

 関係者十数名からの取材によれば、2つの要因が考えられる。1つは、研究
科、学部、本部で事務職員の数が違うことだ。教員に近い立場になればなるほ
ど、職員数は減っていき、逆に本部には大勢の事務職員がいる。そのため、教
員から見ると事務職員の数は少なく感じる。

 もう一つは、事務職員がどこを向いて仕事をしているかということだ。この
3月末まで国立大学というのは国の機関だった。つまり、国の意向に沿って仕
事をすることが重要な命題であるといえよう。ある大学関係者は「大学には必
ず一人は文部省の通達をすべて記憶している人がいる」という。この様に、事
務職員は国を見ていたことになるが、教員側も事務系職員を一段下に見ていた
という。

 一方、理研の場合は研究センターなどの部局に事務職員が配置され、本部に
はそれほど多くの事務職員がいるわけではない。関係者によれば「理研は、以
前から法人だったから法人が強くなるためにはどうすればいいのかを考えて研
究者サービスを行ってきた」という。かといって一人ひとりがプロフェッショ
ナルスタッフかというと、そうでもないようだ。

 大学の競争力低下の原因はシステムそのものにあると言える。では、どうす
れば大学は強くなることができるのか。立命館大では、立命館大学法学部を卒
業して事務職員になった、まさにたたき上げの川本八郎氏が理事長になったこ
とで事務組織は活性化した。こうしたキャリアパスを示すことは大きな効果が
ある。研修などの充実、能力評価による年俸制の導入等の他、国立大学が法人
化した今、事務職員が向かなければならない方向、サービスの相手は教員や学
生、地域に変わっていることを認識することが大切だ。さらに研究者も、事務
職員だけでなく、様々なスタッフに対する意識を変えなくてはいけない。