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新首都圏ネットワーク


時事通信配信記事 2004年11月15日付

生き残り競争、舞台は中国に=大学「カラー」が成否のカギ


 【北京13日時事】北京や上海に既に事務所を持つ京都大や一橋大などに加
え、来年からは東京大や北海道大なども本格拠点を構えるなど、国立大法人化
を受けた大学の厳しい生き残り競争は、中国も大きな舞台となった。ただ、日
中の企業や政府も関与した「産学官連携」や優秀な中国人学生確保など、各大
学の狙いは似ている。一方、中国研究者らは日本より米国への関心が高い。各
大学とも中国でどこまで「カラー」を打ち出せるかが成否のカギを握る。

 小泉純一郎首相の靖国神社参拝などを受け、日中関係は「政冷経熱」(経済
は熱いが、政治は冷たい)と言われる。「ビジネス」や「経営」を前面に出す
一橋大の清水啓典副学長は日中関係の厳しさを挙げ、「人脈がないと動かない
中国では、モノが言いやすい大学の価値はより上がる」と話す。提携先の経済
団体・中国企業連合会が持つ「官」への人脈を駆使し、日本企業の要望を中国
政府の政策にも反映させたい意向だ。

 京大は昨年、上海・復旦大に事務所を開き、会員の日系企業に中国経済情報
を提供。さらに得意のIT(情報技術)などを生かし、理系の名門、清華大と
の提携を核とし、京都を中心としたIT企業群や自治体への支援も行う計画だ。
日系企業が中国に提携先を探す際、清華大と関係の深い企業や研究機関を紹介
することも可能になる。

 中国が1990年代以降に推進した「産学官連携」は、最近の急速な経済発
展を引っ張る原動力となった。京大の松重和美副学長は「日本にとってのモデ
ルは中国にあるはず。シリコンバレーよりも踏み込んだ産学官連携を目指す」
と話す。

 一方、東大にとっても、中国は全学的な初の世界進出になる。武内和彦国際
企画室長は「アジア戦略の第一歩が中国であり、産学官連携で収入を見込みた
い」と話す。「特定分野に特化するのではなく、総合大学として文理のバラン
スを取りたい」と新機軸も強調した。(了)