トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


第161回国会 文教科学委員会 第3号
平成十六年十一月二日(火曜日)
午前十時一分開会

○鈴木寛君(民主党・新緑風会)

 それで、時間がありませんので、次の質問に移りたいと思いますが、国立大
学法人化の問題です。

 これは、参議院の附帯決議を受けまして、先週、文部科学省から参議院に対
して報告がございました。正直申し上げまして、極めて不十分な御報告だとい
うことを申し上げざるを得ないと思います。

 それで、二点についてまとめてお伺いをいたしたいと思いますが、昨日、そ
して本日も、この国会内で国立大学の教員の方々がポスターセッションをやっ
ておられて、大学の現場が大変な財政的な危機にあるという惨状を訴えられて
いらっしゃいます。

 それぞれについて時間がありませんから御紹介申し上げませんが、附帯決議
では、国立大学の法人化と独法化は違うんだと。すなわち、独法化はスリム化
ということが目的に入っていましたが、国立大学法人はスリム化ということは
入っていません。いわゆる大学の自主的な経営というものを、自律性、自主性
を確保するためのガバナンスの変更だと。このためだけに国立大学をやるとい
うことで、当然予算もカットしないと。十分な予算、これから教育・文化立国
で、科学技術創造立国で極めて重要な拠点が大学であるということを我々ここ
で確認をしたはずであります。しかしながら、現場から聞こえてくる声はそれ
と違う声がある。これに対してきちっと報告で答えていただくべきだというふ
うに思います。

 それから二つ目。我々が懸念したことでありますが、大学のガバナンス、ア
ドミニストレーションの中核を担う人事の問題。

 我々が心配したことがやはり的中をしていると思わざるを得ない報告が現場
からいろいろ聞こえてきます。この件についてはこれからも、特に一年間終わっ
たところできちっと精査をするということを申し上げておきますが、一言だけ
申し上げますと、例えば四月一日に五百十四人、それからこの十月一日に三十
七人の国立大学法人の課長級以上の人事異動が事実上文部省の人事で行われて
いるんです。

 これは、大変に立ち上がりの極めて重要な時期に課長さんとか部長さんとか
事務局長さんとかが突然いなくなっちゃうわけですね。中には、中にはという
か、多くは非常に頼りにされていて、正に新しい大学を作るその中心的な役割
を担っている課長さんであり部長さんであり、そして例えば産学連携の話なん
かでも、企業に行って何度も何度も、その御本人は本当に努力をされて、企業
との関係も十分にできて信頼関係も出して、そしてこれから産学連携で頑張る
ぞと。それが突然一週間前になって、いや私このたび人事異動でいなくなるこ
とになりましたと。一緒にやっていた大学の教員もびっくり、それから産学連
携の相手先である企業もびっくりと。

 正に国立大学法人化の意味は何かというと、これは大臣も役所にいらっしゃっ
たからお分かりだと思いますが、役所の人事異動のルールはそうなんですね、
これは特別権力関係ですから。しかし、もう国立大学法人はそういう意味では
役所じゃないんです。正に地域の方、正に現場の教員、正に現場の学生、そし
て正にその連携先の企業あるいは団体、組織、そうした市民社会の一員として
より良い知の学府を作っていくと、こういうことでありますから、是非この点
は、この人事制度、予算制度、大いにまだまだ直す点があります。

 それから、法人化に伴って一番聞こえてくる声は、ペーパーワークが物すご
く多くなったということですよ。大学の教員には本来業務である研究と教育に
専念をさせてあげるというのがこの国立大学法人化の意味だったんですよ。そ
れに全く逆行している。これもさっきのアドミニストレーションスタッフの問
題とかかわります。アドミニストレーションスタッフが突然いなくなる、そん
な人にはペーパーワーク任せられません。しかし、この人がきちっとそうした
アドミニストレーションのペーパーワークを始めとするそういうふうな事務的
なマネジメント的な仕事を担えるということになれば、教員も専念できるとい
うふうな、いろんな課題に対して大いなる疑念ございますので、この国立大学
法人の問題、我々引き続き見ていきますが、国立大学法人について、予算、人
事、事務体制の問題について一言、更に改善の余地があると思いますが、お答
えをいただきたいと思います。

○大臣政務官(下村博文君) 私の方から予算についてお答えを申し上げたい
と思います。

 委員御指摘のように、国会の附帯決議がございまして、これに十分に留意し
て、平成十六年度の運営費交付金予算全体では実際のところ前年度、平成十五
年度と実質的に同程度の額を措置したところでございます。また、平成十七年
度以降についても、六年間の中期目標、中期計画期間を通じて着実な研究開発
が行われるように運営費交付金を措置することが必要であるというふうに文部
科学省においても考えておりまして、十七年度予算については、国立大学法人
全体として対前年度比二百五十億円増の一兆二千六百六十六億円の概算要求を
しているところでございます。

 ただ、御指摘のように、この国立大学の法人化に伴いまして、各大学の自主
性また自律性、これを尊重し、拡大し、その中で予算についての各大学の効率
化を図って、大学の活性化、更なる活性化、そして教育研究の高度化を図ると
いうことから御指摘があったのではないかというふうに思いますけれども、文
部科学省としては、今後とも総額の予算を増額をさせて、この運営費交付金な
ど必要なことについては更なる所要額の確保に努めてまいりたいと思います。

○政府参考人(玉井日出夫君) 国立大学法人の人事についてでございますが、
これはもう御案内のとおり、国立大学法人の職員の任命権は幹部職員も含めま
してすべて当大大学の学長にあるわけでございます。したがって、職員の人事
につきましては、任命権者である学長が各大学の人事戦略に基づいて適材適所
の観点から行うと、これが基本でございまして、文部科学省といたしましても、
国立大学法人からの人事交流について要請があった場合に、適材適所の観点か
ら各国立大学法人の意向を基本に必要な対応を図っていく、こういう姿勢で臨
んでいるわけでございまして、今年の四月の人事でございますけれども、これ
はまだ法人化前ではございましたけれども、やはり法人化になるということを
前提に各大学において法人化に伴う組織の見直し等も行われているわけでござ
いますので、したがって、法人化前ではございましたけれども、例年より早く
昨年の十月ごろからいろんな協議に着手をいたしました。

 また、今年の十月、既に今、国立大学法人とされているわけでございますが、
そのときに、適材適所の観点からの人事交流の必要性があった場合、そのとき
には、大学運営に支障が出ないように早めに協議を進めるということで基本的
には考えてまいりました。

 個々具体のいろんな御指摘あろうかと思いますけれども、私どもといたしま
しては、国立大学法人等の人事交流につきましては、これは各国立大学法人の
意向を基本として、時間的に余裕を持った上できちんとした協議を進めるよう、
そういうふうに努力をしてまいりたいと、かように考えております。

○政府参考人(石川明君) ただいま先生の方からペーパーワークが多くなっ
ているのではないかというお話ございました。

 国立大学の法人化に伴いまして、例えば労基法が適用になるなど労務関係で
新しい手続が必要になる、あるいは評価に関する事務が増える、こういったよ
うな面もございます。

 しかし、その一方で、国の財務会計制度や公務員制度の制約から外れるとい
うことに伴いまして事務負担が大幅に軽減されているというような側面もある
わけでございます。例えば、文部科学省への人事等の諸手続が廃止される、あ
るいは国の会計規程に基づく諸手続等の廃止、あるいはその関連する提出書類
の負担が大幅に減ると、こういった面もあります。そしてまた、大学によりま
しては、旅費業務を旅行代理店にアウトソーシングをするといったようなこと
を考え、また実施しているところもあるということでございます。

 文部科学省といたしましては、引き続き各大学等から教育研究等の実情等も
お伺いしながら、できるだけ各大学の事務負担が重くならないよう、これの軽
減に向けまして御相談、協議をしていきたいと思いますし、教員の方々が魅力
ある研究活動に思い切って取り組めるような、そういった体制の確立に向けて
努力をしてまいりたいと、このように考えております。