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『科学新聞』2004年10月22日付 都立大 21世紀COEの継続辞退 事業開始以来初めて 東京都立大学は13日、21世紀COEプログラムに採択された課題について、 来年度以降の継続は不可能と判断、文部科学省に伝えた。 石原都知事の構想にしたがって、都立大学は廃止、新たに首都大学東京が設 置されることが決まっているが、COE構成メンバー16人のうち、新大学への 移行手続きを済ませているのは2人のみ、事業継続が困難と判断した。渡部敏 明・拠点リーダーは同日の会見で、「新大学では、都立大学のような物的・人 的な基盤支援を含むサポートを受けることができない」ため、移行手続きをし なかったと説明した。同プログラムで採択された課題で継続断念を決めたのは 今回が初めて。 継続を断念した課題は同大社会科学研究科の「金融市場のミクロ構造と制度 設計」。15年度に採択され、5年計画の2年目にあたる今年度は7,180万円が交 付されている。渡部拠点リーダーは、これまでの成果の取りまとめ、大学院生 への手配、財務処理等を行った上で残った資金は返還するという。 21世紀COEプログラムの目的は、世界最高水準の研究教育拠点を形成し、 国際競争力のある個性輝く大学づくりを推進することで次世代の研究者を育成 することにある。一方、東京都の打ち出した新大学構想では、市民の教養を付 けることが大学の目的になっている。大学の目的や理念とCOEプログラムと の間に食い違いが生じてしまったことが、今回の大きな理由となっているとい う。中央教育審議会の大学分科会が今後の高等教育政策について多様性を強調 していることから、こうしたことは増える可能性が高い。 数年前、定年制度を理由に京都大学の伊藤嘉明・教授が、シンガポール国立 大学分子細胞生物学研究所(IMCB)に研究室ごと移籍した。例えば、今回 のようなことがあった場合、研究チームの理念を理解しバックアップする大学 に移籍することはできないのか。制度の見直しも必要だが、研究者一人ひとり の心の壁を取り去る努力も重要だろう。 |