トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


日経ネット関西版 2004年10月26日付

京大・神戸大、発明届け出数が急増──知財戦略、順調に始動


 文部科学省の知的財産本部がある近畿の国立4大学のうち、京都大学と神戸大
学で、発明の届け出件数が急増している。京大は4―9月で2003年度の1年分を上
回った。大阪大学と奈良先端科学技術大学院大学も今後、増加する見込み。特
許を活用する国立大の知的財産戦略が4月の法人化を機に順調に動き始めた。

 京大は4―9月に246件の発明の届け出があり、03年度の206件を上回った。法
人化前は年間数件だった学生の届け出も20件前後に増えた。学科別にみると工
学研究科からの届け出が最も多く、全体の約3分の1を占める。

 学内の発明評価委員会が届け出された発明を評価し、172件の特許出願を決め
た。特許出願件数も03年度の117件を上回った。松重和美副学長は「知財戦略が
順調に進み、数字に反映された」とみている。

 神大では4―9月に約50件の届け出があり、03年度の同期に比べて20件近く増
えた。4―9月の特許出願は25件程度だった。

 阪大と奈良先端大は4―9月に急増していないが、最近数年間は増加している。
阪大は法人化前の旧制度を利用しようと教官が3月に駆け込みで届け出たため、
03年度は538件に達した。04年度は300―350件と予想している。馬越佑吉副学長
は「03年度は超えないが、02年度の268件を上回るだろう」と話す。

 奈良先端大は発明を届け出る前の相談件数が03年度より急増した。産官学推
進室は「届け出前に実用化できるかなどを厳しく調査しているため届け出件数
は減ったが、年度後半は増えるだろう」と説明している。

 件数増加の背景には届け出が義務化された側面もあるが、教官の意識の変化
が大きい。法人化前は教官が発明を企業に譲り、企業が出願する場合も多かっ
たが、研究者が実用化・事業化を期待して届け出る例が増えたとみられる。特
許料収入を手厚くした影響もある。

 文部科学省の支援を受け、全国43の国公私立大学は03年度から知的財産本部
を設けた。同省は特に国立大には法人化を機に知的財産を経営資源として扱う
ように促しているが、4月以降の集計はまだない。