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新首都圏ネットワーク


『読売新聞』2004年10月23日付

32独立行政法人、全職員を非公務員化…有識者会議


 独立行政法人の組織形態見直しに関し、政府の「独立行政法人に関する有識
者会議」(座長・飯田亮セコム最高顧問)がまとめた「指摘事項」が22日、
明らかになった。

 対象とした32の独立行政法人について〈1〉全職員を原則、非公務員とす
る〈2〉類似業務の多い22法人を廃止あるいは統合して7法人とする――こ
とを求めている。

 総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会がこの見解をもとに11月に見
直し案をまとめ、政府の行政改革推進本部で年内に正式決定する方針だ。

 行政のスリム化を図るため、2001年の中央省庁再編に伴って導入された
独立行政法人は、3―5年ごとに業務の効率化などに関する中期計画を定めて
いる。有識者会議では、来年度末までに計画期間が終了する56法人のうち、
業務内容の重複などが多い32法人について、組織・業務を見直していた。

 独立行政法人では、「職務のために一定の公権力が必要だ」などの理由で、
職員を国家公務員扱いのままとするケースが残っている。指摘事項では、この
点について「法律的権限が与えられれば非公務員でも公権力の行使は可能で、
業務を非公務員が担う具体的な問題点を明確に説明できない場合は非公務員化
すべきだ」とし、職員の非公務員化を原則とするよう求めている。

 さらに、「研究機関・教育関係の法人は官民交流の促進の視点からも、非公
務員化を積極的に推進すべきだ」とした。

 今回の見直し対象となった32法人では、3法人がすでに非公務員に移行し
ているものの、29法人(職員数計約1万1000人、うち9法人は非公務員
化を表明)は公務員型で、これらの職員が非公務員化の対象となる。

 非公務員化すれば、業績に応じた給与体系やパートタイムなどの多様な雇用
形態が可能となる。給与や処遇には実績や成果が反映されるほか、スト権が与
えられ、民間企業と同等の労働条件となる。これらを通じ、柔軟な人材登用、
活発な民間企業との人事交流、成果主義の導入による効率的な運営などが期待
されている。ただ、非公務員化によって公務員の身分を失うことには、各法人
が反発する可能性もある。

 一方、法人の廃止・統合について、指摘事項は「各法人は予算額や人員規模
から見ても細分化し過ぎている。運営の効率化や研究成果を上げるため、類似
業務を行う法人は再編・統合すべきだ」とし、農業者大学校を廃止するととも
に、21法人を7法人に統合するよう求めた。

 このうち、さけ・ます資源管理センターと水産総合研究センターの統合と農
業者大学校の廃止は、農水省がすでに決定しているが、他の統合には、所管省
庁が「業務の違う組織が一緒だと意思決定が遅くなる」などと反発している。

 各省の天下り先が減ることにもつながるだけに、見直し案をまとめる総務省
との調整が難航する可能性もある。