新首都圏ネットワーク |
he-forum 各位 10/23/04 山形大学職員組合書記長 品川敦紀 皆様ご承知のように、東北大、北大他いくつかの大学で、今年度からの寒冷地手当の切り 下げ提案がなされ、就業規則の改定手続きすら進みつつあるようです。 この間のそうした経過を見て、そういった法人側(理事会側)の、非公務員型法人におけ る労働条件決定のメカニズムについての無理解ぶり、あるいは、意図的な無視ぶりに、た だただ、あきれるばかりです。 法律の門外漢が言うのも気後れしますが、何度も指摘いたしておりますように、就業規則 は、労働契約の一部をなしています。法人化後の雇用と被雇用の関係は、この労働契約す なわち、使用者が、賃金や手当をいつ、いくら払う、労働時間は何時間という約束で、そ の労働時間分の労働提供を労働者が約束することで、成立するものです。 国立大学法人における正規職員については、いまだ、雇用契約書が発行されていないとこ ろも多いと思いますが、雇用契約の期限を決めず、そういった就業規則に記載されている 事項を包含して、労働契約が結ばれたことになっています。 つまり、毎年10月30日に、扶養家族何人いれば、寒冷地手当として何万何千円支払い ます、という使用者の約束で労働契約がなされているわけですから、その約束を、契約の もう一方の当事者の同意を得ずして、勝手に使用者の都合のいいよう引き下げて書き換え るというようなことは、契約の誠実な履行を前提とした資本主義社会に置いてあり得ない 話です。 このことは、秋北バス事件、第四銀行事件において、最高裁判所が、「新たな就業規則の 作成又は変更によつて,既得の権利を奪い,労働者に不利益な労働条件を一方的に課する ことは,原則として,許されないと解すべきである。」と明確に、就業規則の一方的不利 益変更の無効を述べていることをみれば、明らかです。 最高裁判所は、そうした使用者による一方的不利益変更の原則無効を表明しつつ、その例 外として、高度の必要性を持った合理的な変更の場合に置いてだけ限定的に許される場合 があると、大曲事件判決において「当該規則条項が合理的なものであるとは,当該就業規 則の作成又は変更が,その必要性及び内容の両面からみて,それによつて労働者が被るこ とになる不利益の程度を考慮しても,なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を 是認できるだけの合理性を有するものであることをいうと解される。特に,賃金,退職金 など労働者にとつて重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成 又は変更については,当該条項が,そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを 許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において,その 効力を生ずるものというべきである。」と表明しています。 そして、その合理的変更の具体的判断基準として、第四銀行事件に置いて「右の合理性の 有無は,具体的には,就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度,使用者側の変 更の必要性の内容・程度,変更後の就業規則の内容自体の相当性,代償措置その他関連す る他の労働条件の改善状況,労働組合等との交渉の経緯,他の労働組合又は他の従業員の 対応,同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきであ る。」と表明しています。 こうしたことを踏まえれば、どこからどう見ても、今回のような寒冷地手当引き下げの提 案など出来ようはずがありません。血迷っているとしか言いようがありません。 加えて言えば、北大や東北大では、労働者に対して平気で嘘を付いて、就業規則の不利益 変更を認めさせようとしていることは許し難い行為です。すなわち、「寒冷地手当を出す 予算がない」(実際には、運営費交付金は減額されないので予算はあるはず。)とか、「 法律面から判断して問題ない」(数々の最高裁判例が、不利益変更を原則無効としている )などというのは、自らの無知をさらけだす言いぐさとしか言いようがありません。 もし、仮に、就業規則の一方的変更により、寒冷地手当の引き下げが強行された場合は、 全大教も指導力を発揮して、裁判闘争も辞さない構えで闘っていただきたいと思います。 これほど明確に勝てる裁判はないと思います。 この問題は、単なる寒冷地手当だけの問題ではなく、今後のあらゆる不利益変更を、人勧 準拠の名の下に強要されつつけるのか否かの大きな分岐点となる極めて重大な問題です。 各単組とも、安易な妥協をせず、かつ、諦めないで、組合としては、最後まで認めないと 言う態度を貫き通して欲しいと思います。もちろん、使用者との取引により、他の救済措 置や、代替措置を含めて合意することまで否定するものではありませんが。 いずれにせよ、組合が同意してしまっては、おしまいです。 |