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新首都圏ネットワーク


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Academia e-Network Letter No 198 (2004.10.21 Thu)
http://letter.ac-net.org/04/10/21-198.php

━┫AcNet Letter 198 目次┣━━━━━━━━━ 2004.10.21 ━━━━

【1】著作権法改正要望事項に対する意見募集 本日締切
http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2004/04100601.htm

【2】「著作権法改正要望のパブリックコメントを提出する」サイト
文化庁が実施中の著作権法改正に対する意見募集へ真の意味で「文
化の発展に寄与」する改正要望提出を呼びかける為のポータルサイ
http://publiccomment.seesaa.net/

 【2-1】パブリックコメント提出運動の目的 2004年10月17日
  http://publiccomment.seesaa.net/article/674779.html

 【2-2】「永遠-1日」がいい?──延長され続ける著作権 2004年10月08日
  http://publiccomment.seesaa.net/article/726438.html

  【2-2-1】「インターネット・アーカイブ」代表、
   ブルースター・ケイル氏(43)に聞く(下)2004.9
  「長すぎる著作権保護の被害者は、我々の子どもたちだ」
   http://www.asahi.com/tech/sj/kahle/03.html

  【2-2-2】山形浩生氏(評論家)「著作権の「危機」って何だ」
2003.6.21
http://be.asahi.com/20030621/W12/0023.html

【3】ブログ「壊れる前に...」 より転載
「著作権保護期間に関して意見書を書いた」
http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2004/10/post_21.html

━ AcNet Letter 198 【1】━━━━━━━━━━ 2004.10.21 ━━━━━━

著作権法改正案についてのパブリックコメント本日10/21中
http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2004/04100601.htm

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#(編註:今回の意見募集の対象となっている著作権法改正要望の
内容は多岐にわたるようだが、その中でも、文科省所管公益法人を
多数含む22の団体(*)が要望書を出している、著作権の保護期間を
「50年」から「70年」へ延長する、という要望(106)がそのまま実現
された場合の弊害は大きい。(これらの要望書の内容は同じなので
背景には「行政指導」があることも推測される。公益法人への「天
下り」がよく行われているので、公益法人の利害は所管省庁の利害
と一体であり、行政指導があっても当然のことかも知れない。)商
品価値が残る少数の著作物の利権を守るために、商品価値がなくなっ
た無数の作品もパブリックドメインに入る時期を20 年遅らせる、と
いうことは合理的とはいえない。ケイル氏【2-2-1】が云うように、
商品価値のあるものだけ著作権を残せば良いことであろう。あと1時
間ほどしか時間がないが、この問題についての専門家も多いはずの
大学界から、多くのパブリックコメントがあることが望まれる。
【2-2】に送付先や記入法がある。

(*) http://blog.drecom.jp/ecolin_profile/archive/244 より:
音楽出版社協会,全日本音楽著作家協会,全日本児童音楽協会,日本演
劇協会, 日本音楽作家団体協議会,日本音楽団体協議会,日本音楽著
作権協会,日本脚本家連盟,日本芸能実演家団体協議会・実演家著作
隣接権センター,日本現代音楽協会,日本作詩家協会,日本作編曲家協
会,日本作曲家協会,日本作曲家協議会,日本詩人連盟,日本商品化権
協会,日本童謡協会,日本俳優連合,日本美術家連盟,日本舞踊協会,
日本レコード協会 )

文科省所管公益法人リスト(文化部、文化財部、文化庁関係など)
http://www.mext.go.jp/b_menu/koueki/koueki.htm

━ AcNet Letter 198 【2】━━━━━━━━━━ 2004.10.21 ━━━━━━

「著作権法改正要望のパブリックコメントを提出する」サイト
文化庁が実施中の著作権法改正に対する意見募集へ真の意味で「文
化の発展に寄与」する改正要望提出を呼びかける為のポータルサイ
ト。
http://publiccomment.seesaa.net/
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【2-1】パブリックコメント提出運動の目的 2004年10月17日
http://publiccomment.seesaa.net/article/674779.html
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この運動について、「どんな行動を起こすのか」や「具体的に何
を要望するのか」のイメージが現段階では不明瞭であると言う難
点があります。しかし、これまでと同じように「ごく少数の、利
権拡大を目論む勢力による根回しだけで著作権の将来が決められ
るやり方を今後も維持するのが良いことだとは絶対に思わない」
と言う点に関しては、多くの方にご賛同いただける点ではないか
と確信しています。

また、今回の運動は必ずしも特定の要望を通す為のものではなく、
輸入権反対運動を通じて確実に向上したであろう「知的財産意識」
が本物であるかどうかの試金石であるパブリックコメントを通じ
て産業界、或いは文化庁に「今までと同じやり方は通じない」と
言うメッセージを送ることこそが重要であると考えています。そ
れに、輸入権反対運動を取ってもその反対理由は様々であり自由
貿易を推進する立場から反対する者在り、消費者利益の侵害を理
由に反対する者在り、CCCD回避の手段を封じられるから反対する
者在りノノと多種多様でした。筆者はまだ「逆輸入(還流)盤」の
みが対象だと思われていた頃からほとんど孤立無援に近い状態で
反対の声を挙げ「自由貿易推進」と「消費者利益侵害」を主張す
る普段は全く相容れない立場の勢力に狭まれ、相当に神経を磨り
減らす調整に当たったりしていました。そもそも、この悪法案を
ゴリ押しした文化庁なりレコード協会には「どうせ消費者団体ぐ
らいしか反対しないだろ」と言う非常に脳天気な読みが有ったよ
うで、5月20日のJ-WAVE「JAM THE WORLD」に出演した生野秀年・
RIAJ常務理事(当時、事務局長)が参院通過後に勃発した世論の
猛反対を「予想されておりませんでした」と述べたあたりは非常
に象徴的であると言えましょう。

そもそも、政府の知財推進計画と言うのは一方で「国民の知的財
産意識向上」を謳いながら実際には「国民の知的財産意識が低い
方が、波風立たずに実行しやすい」ものばかりだったりします。
要するに、推進計画の「知的財産意識向上」は正確な表現ではな
くその真意は「産業界の都合で政府が押し付ける知的財産政策に
従順な国民を養成する」ことにあるとしか思えません。岡本薫・
前著作権課長(現・文部科学省スポーツ青少年局企画体育課長)
がよく「一億総クリエイター・一億総ユーザー」と言う表現を用
い、先の衆議院文部科学委員会の附帯決議にもこの表現が盛り込
まれましたが、原初(2003 年7月8日公表)の知財推進計画と言う
のは到底「一億総クリエイター・一億総ユーザー」時代に即した
ものではなく、中世暗黒時代のような「ごく少数の富裕層が文化・
芸術を独占し、一般庶民はその所産を全く享受する機会が無いか
高いお金を払ってそれを有り難く拝ませてもらう」ようなイメー
ジに立脚した代物だけに、事務局の偏向的かつ不真面目な姿勢を
糾弾した中山先生のご尽力で(恐らく、フェアユース規定創設を
念頭に置いて)「権利者の利益と公共の利益とのバランスに留意
する」項目が追加されたぐらいではまだまだ「一億総クリエイ
ター・一億総ユーザー」時代に即した政策の実現にはほど遠いと
言わざるを得ません。何より、現在の政府による知財戦略はクリ
エイターと言うよりもレコード会社や出版社、ゲームメーカーと
言ったコンテンツ・プロバイダーの儲けばかりが重視されている
ことが否めず、より多くの優れた作品を生み出すために不可欠な
「作品に接する機会」の拡大には全く興味が無い、どころか有害
ですらあると認識されている節が見受けられます。もっとも、意
外に思われる方もいそうですがゴリゴリの権利強化を主張するば
かりであるコンテンツ・プロバイダー側に必ずしも明確なビジョ
ンが有る訳ではなく、むしろ国内外(音楽業界が輸入権をゴリ押
しする口実にしていたアジア市場も3年連続の縮小)で市場規模が
頭打ちになっている現実を直視せずに、音楽業界ならば「CCCDで
ナントカなるか」「輸入権でナントカなるか」と当座の1〜2年を
凌ぐ為だけの実に場当たり的な方策ばかりを採り続け、それが国
内市場の不興を買うと言う悪循環に陥っていると言う現実があり
ます。そして、音楽業界は輸入権反対運動に直面して初めて「自
分たちが世間から反感を抱かれている」ことに気付いたのではな
いかと思うのです。

結局のところ、そんな1〜2年を凌ぐためだけの場当たり的な発想
に任せて、公共事業のように予算を付ける必要が無いからと言っ
て安易にホイホイと権利が与えられ、結果的に市場から創意工夫
をこらす力を奪ってしまう負のスパイラルから彼等を救い出さな
ければ、世界に誇るべき日本の文化は間違い無く滅びるでしょう。
世界で最も多様な音楽に接することの出来る環境を護りたかった
からこそ、あれだけ多くのアーティストや音楽評論家が声を大に
して輸入権に反対したのです。誰しも好き好んでクリエイターと、
或いはコンテンツ・プロバイダーと敵対したいなどとは思いませ
ん。しかし、哀しいことに彼等の多くは何か悪い薬でも飲んで浮
かれ狂っているかのような「知財ブーム」に煽られてメ従順でない
モ著作物利用者を敵視しているのです。

意見を提出するにしても、理由は様々だと思います。むしろ、そ
れぞれに動機が有ることこそが自然だと思います(強いて「共通
課題」を掲げるとするならば「フェアユース概念の獲得」でしょ
うか)。

半月後の募集開始に向けてまだまだ課題は山積していますが、6月
3 日の悔しさをそのままで終わらせない為に、或いは現在の、そ
して将来のクリエイターを含む著作物利用者の為に、力を合わせ
て頑張りましょう。」

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【2-2】「永遠-1日」がいい?──延長され続ける著作権 2004年10月08日
http://publiccomment.seesaa.net/article/726438.html
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この項目に対する要望は大分類「5.保護期間」の細目(106)(107)で
す。

意見提出要項の詳細は著作権法改正要望事項に対する意見募集に
ついてを参照し、文中に必ず「(106)及び(107)について」の意見
であることを明記のうえ、著作権延長に反対する場合は「(106)に
反対」「(107)を支持する」旨を書いてください。また、ベルヌ条
約の義務を超える映画著作物の権利延長に対する少額課金制度
(日本版「エルドレッド法案」)に対する意見は「(108)について」
の意見と書いてください。

郵便:〒100-8959 文化庁長官官房著作権課 法規係 御中
FAX:(03)6734-3813
メール:ch-houki@bunka.go.jp

2003年、映画著作物(大部分のゲームソフトなども含む)の法人
著作権が20年延長されて「公表後(未公表の場合は作成の時点か
ら)70年」になりました。この時の著作権分科会報告では、著作
者の死後を起算点とする個人著作物が大半を占める文芸・美術・
音楽などに関しては延長に否定的な見解が示されていますが、
1998年にいわゆる「ミッキーマウス延命法」で「個人著作物は死
後70年・法人著作物は公表後95年」(「永遠-1日」とも表現され
る)と言う極めて長期間の著作権延長を実行したアメリカ政府や
ハリウッドを中心とした産業界からは、日本もこの基準に合わせ
て著作権を延長するように強く要望されているのです。

著作権に関する国際条約であるベルヌ条約では、第7条で条約加盟
国の著作物を最低限「個人著作物の場合は死後、映画著作物は公
表後50年間」保護することを求めています(一部例外アリ)。そ
れ以上の延長は、第6項により加盟国が任意で定めることが可能
(上限ナシ)ですが、これは条約上の義務ではありません。 原
点に立ち返って考えると、著作権を延長することに何かメリット
はあるのでしょうか?

権利者(個人よりも映画会社や業界団体であることが多い)側の
言い分は「より長期間、著作権を行使して利益を上げることが可
能になりその利益を新しい作品の提供に投資することが可能にな
る」と言うものでしょう。しかし、よく考えてみてください。今
から51〜70年前に公開されていた映画のうち、現在でも映画館で
見ることが可能な作品はほぼ0に近いはずです。DVDが市販されて
いる作品や、図書館やレンタルビデオ店に置いてある作品、テレ
ビで放送される作品ならもう少し確率は高くなるでしょうが、そ
れでも51〜70年前に公開されていた作品の「ほんの一部」でしか
ありません。著作権を一律に延長すると言うことは本来、著作権
が切れて自由に公開できるようになったはずの作品が、たまたま
同時期に公開されたごく少数の極めて長期にわたって商業的価値
を有する作品──ミッキーマウスに代表されるような──を「延
命」させるために日の目を見なくなってしまうことなのです。

この「ミッキーマウス延命法」は憲法違反であると言う訴訟がア
メリカで起こされました。NHKスペシャル「変革の世紀・第3集-知
は誰のものか?-」(2002年7月14日放送)でも取り上げられていた
ので、記憶されている方も多いはずです。結局、この訴訟は2003
年1月15日の連邦最高裁による合憲判決で原告側の敗訴が確定しま
したが、今なお世界レベルで様々な議論や提案が巻き起こってい
ます。

翻って、日本では「青空文庫」を始め著作権が消滅した作品をネッ
ト上で公開するプロジェクトも盛んですが、もし著作権が一律に
20〜70年(延長を要求する意見の多くはJASRACを中心に「+20年」
だが中には「+70年」、つまり「120年」と言う要求まで存在する)
もの長期にわたって延長されようものならこうした活動は全て、
その存在意義を否定されることを意味します。

それが著作権法第1条に謳われる「文化の発展に寄与」することな
のかどうか、真剣に考えるべきではないでしょうか。

参考‥

山形浩生『著作権の「危機」って何だ』(asahi.com「be」2003年6月21日付)
http://be.asahi.com/20030621/W12/0023.html

「長すぎる著作権保護の被害者は、我々の子どもたちだ」
(asahi.com・2004年9月24日付)
http://www.asahi.com/tech/sj/kahle/03.html


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【2-3-1】「インターネット・アーカイブ」代表、ブルースター・
ケイル氏(43)に聞く(下)「長すぎる著作権保護の被害者は、
我々の子どもたちだ」http://www.asahi.com/tech/sj/kahle/03.html
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「私がつきあうビジネス界の人たちは簡単明瞭だ。自分たちのコン
テンツから、より多くの収益を生み出したい。それだけだ。ならば
話は簡単。カネを生むコンテンツはきちんと保護しよう。カネを生
まないコンテンツは? 手放してパブリック・ドメインにすればい
いじゃないか。そうなれば、だれかがはそのコンテンツを有効に利
用する方法を考え出す。みんなにメリットがあるだろう」」

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【2-3-2】山形浩生氏(評論家)「著作権の「危機」って何だ」
2003.6.21
http://be.asahi.com/20030621/W12/0023.html
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「有事立法その他、きなくさい法案のほうに注目が集ま
る中で、改正著作権法があっさり国会で成立してしまっ
たことはほとんど話題にすらならなかった。」

「一つのポイントは、映画の著作権の保護期間が50年
から70年に延長されたことだ。」

「多くの映画や映像は商品価値がなく、死蔵されている。
でも、著作権が切れれば、それらを利用してほかの活動
ができる。公開されてこなかったものが、日の目を見る
チャンスも出てくる。それを一部の既得権益のためにつ
ぶすのは、本当にいいことなのか?」

「作品が持つ価値というのは、ダイナミックなものだ。
完成した「作品」を一方的にありがたく鑑賞するのが文
化じゃない。過去の遺産で新しいものを作り出すことが
文化の本質だ。そのためには、使える過去の遺産??スタ
ンフォード大学のレッシグ教授は、これを知的コモンズ
(共有物)と呼ぶ??を増やす必要がある。著作権「保護」
の強化は、その遺産を減らす動きになりかねない。」

「他にもへんな部分がある。自分の著作が、他人の著作
の複製翻案でないことを示す必要が出てきた。著作権侵
害の紛争では、これまでは、「侵害された」と訴える側
が、「あたしのこの作品が、こういう具合にパクられて
ます」と証明する必要があった。ところが今回の改正で
は、「ぼくの作品は、あなたの作品とは関係なく作られ
ました」と示す必要が出てきた。」

━ AcNet Letter 198【3】━━━━━━━ 2004.10.21 ━━━━━━

ブログ「壊れる前に...」 より転載

著作権保護期間に関して意見書を書いた
http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2004/10/post_21.html

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ぎりぎりになってしまいましたが、今日(木曜日)が締め切りの著
作権法改正要望事項に対する意見募集に対し、以下のメールを送付
しました。

To: ch-houki@bunka.go.jp
Subject: 著作権法改正要望事項について【5.関連】

氏名: ---
所属:---
住所:〒 ---
電話番号: ---
意見:(106)及び(107)について

著作権保護期間の延長に反対します。

楽曲演奏などが公開後の年数を計算根拠とするのに対し、個人の著
作物、つまり小説、エッセイなどに関しては、執筆や公開からの換
算ではなく、没年からの換算ですから、多くの場合、現状でも公開
後50年を越える保護が成立しています。早熟で長命な作家であれば、
作品の公開から100年間の保護も現状では可能となっています。

保護期間を一律に70年などに引き上げてしまえば、作家が晩年に著
した作品以外は、ほとんどが一世紀ちかくの年月を「保護」という
名のもとの「隠蔽」の身分におかれてしまいます。現代のように、
出版・絶版のサイクルが極度に短い社会においては、これは、ほと
んどの作品が忘れさられてしまうことを意味しています。

したがって、個人の文章などに関しては、現行の著作権保護期間で
十分に関係者の権益が保護されていると考えられ、作品を公正な利
用に処すためには、保護期間の延長はむしろ害をなすと思われます。

このような考えから、私は、意見書の(106)に反対し、(107)を支持
します。

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編集発行人連絡先: admin@letter.ac-net.org
趣旨:http://ac-net.org/letter/
ログ:http://ac-net.org/letter/log.php
#( )内は編集人コメント、「・・・・・」は編集時省略部分
登録:http://letter.ac-net.org/s.php
転送歓迎(転送時に:http://ac-net.org/letter 併記希望)