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新首都圏ネットワーク


『中日新聞』2004年10月19日付

検討会議、来月にも結論
県立3大学の“再編問題”


 県立大、県立芸大、県立看護大の県立の3大学が、独立行政法人化と統合の
波にさらされている。学識経験者らでつくる県の検討機関「県立の大学あり方
検討会議」で現在、是非が論議されており、11月にも結論が出される。県立
3大学の“再編問題”は、どう進むのだろうか。 (前田 智之)

 検討会議は昨年8月に大学関係者や経済人ら10人で発足。教育や研究のあ
り方、地域社会への貢献策などを話し合ってきたが、主なテーマは独立行政法
人化と統合。背景に激化する大学間競争、国立大の独立行政法人化、県の厳し
い財政状況が横たわる。

   ■     ■

 国立大に続き公立大も今年4月から法人化が選べるようになった。予算や人
事で大学の裁量が広がり、特色ある教育、研究ができるようになる効果が期待
されている。県立3大の場合、1法人−3大学、3法人−3大学、統合して1
法人−1大学などのケースが想定される。

 これまで法人化について委員からは「時代の流れ。大学と行政の職員の意識
改革が求められてくる」「メリットを生かすことができれば法人化した方がい
い」などの賛成意見に対し、「もう少し様子を見るべきだ」との慎重な声も上
がった。統合問題も効率化から賛成意見が出される一方、「各大学の性格が違
いすぎる」「大学運営は経費だけの問題ではない」と異議も唱えられた。

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 このほか各委員からは「経常費のうち人件費の割合が高すぎる」「他の大学
と同じようなことをやっていては県立大学を持つ意味がない」と辛口の意見も
ある。

 人件費問題について大学側は「物件費を削った結果、相対的に人件費の割合
が高くなった」と説明。また、県大は夜間教育に力を入れている▽芸大は東京
芸大と並ぶ総合芸大▽看護大は県民の健康維持に寄与している−などとアピー
ル。職員削減や学科再編に取り組んできた実績も強調してきた。

 全国では、複数の大学を持つ13自治体のうち5自治体が大学を統合する。
兵庫県は今年4月、商科、工業、看護の3大を統合させたが、法人化しなかっ
た。来春、首都大学東京を開学させる東京都は、法人化と統合を同時に進める。
2006年度までに名古屋市など12団体が法人化させる予定だ。

 座長を務める中京大大学院教授の奥野信宏氏は「県民自らの負担で大学を維
持する理由は何か、多数の大学が立地する愛知県で県立3大の存在意義はどこ
にあるのか。検討会議では根源的な問題から話し合ってきた。大学を取り巻く
環境が激変している中、競争力のある大学が求められている。これまでの議論
を踏まえ、よりよい姿を提示したい」と話している。