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新首都圏ネットワーク


高等教育フォーラムの皆様

 東北大学では、役員会より人事院勧告を準用した寒冷地手当削減・廃止
提案がなされました。現在、組合との交渉、過半数代表者との懇談が行わ
れています。東北大の過半数代表者は、事業場毎に選ばれ、全学労使懇
談会が役員、事業場長、過半数代表者の参加で開かれるという方式です。
 この改正での教職員への影響は以下の通りです。また、私は経済学研究
科事業場の過半数代表者として以下の意見書を提出したでご紹介します。
お読みになればわかりますが、ことは寒冷地手当にとどまらず、今後の賃金
決定システムの設計に影響するので、暖かい地方の方もご注意をお願いい
たします。

−−
仙台市の場合

<扶養家族ゼロの世帯主>
現行:49100円/年

2004年度:49100円
2005年度:49100円
2006年度:9100円
以後なし。

<扶養家族1-2名の世帯主>
現行:81500円/年

2004年度:81500円
2005年度:81500円
2006年度:41500円
2007年度:11500円
以後なし。

 川渡、浅虫の事業場は支給継続ですが、今年度から減額がはじまります。女川は
廃止です。

−−−<経済学研究科過半数代表者としての見解>
 今回、役員会からの提案はまだ届いていませんが、全学労使懇談会日程調
整打診の際にメール添付された資料から判断すると、人事院勧告と同様に、寒
冷地手当を削減・廃止するものだと思われます。以下、そのような前提でコメン
トします。(注:実際にそのような提案でした)

1.改正の理由を自主的な大学経営の見地から説明すること。
 国立大学は法人化され、教職員は国家公務員でなくなりました。もはや、人事院
勧告と給与法は適用されていません。給与法改正にしたがって、寒冷地手当の分
だけ運営費交付金が自動的に減らされるわけでもありません。法人化のメリットと
して宣伝されていたのは、法人毎に自主的な人事政策が可能になることでした。
 ですから、寒冷地手当を改正しようというならば、それが国立大学法人東北大学
の経営にとってなぜ必要なのか、自主的な見地から説明すべきです。とくにこの改
正は、教職員の財布を直撃するものであり、法人化準備と改革の激務に耐えてい
る教職員の志気にも重大な影響を与えかねません。総長または人事担当理事は、
改正提案について、わかりやすく、全教職員に届く形で、そして役所の借り物では
ない自分の言葉で説明を行うべきです。
 もし、それができないならば、性急な改正を行うべきではありません。もともと、

月に定めたばかりの就業規則を、1年たたないうちに改正するというのは、あまり
にも性急です。自らの人事制度が学内でどのような問題を引き起こしているかを、
一定期間観察して改正を考えるべきであり、国の様子をうかがって改正するという
姿勢は、法人経営者にふさわしくありません。

2.人勧に依存せずに、寒冷地手当の必要性を自ら検証すること
 寒冷地手当の必要性については、きちんと調査を行って検証する必要がありま
す。暖房費や家屋の耐寒設備費、交通の不便を補う費用を考えると、廃止するこ
とは納得がいきません。

3.削減・廃止した場合の人件費節約分の使いみちについても説明すること
 運営費交付金の人件費部分は、毎年効率化係数の分だけ減額されますが、給
与法が改正されても寒冷地手当の分だけ運営費交付金が減らされるというわけ
ではありません。ですから、寒冷地手当を削減した分だけ、法人に資金が確保さ
れます。その資金の使いみちが、寒冷地手当を教職員に支給するよりも有効だ
ということが示されなければ、納得がいきません。

4.今後も「人勧」準拠を続けるかどうか、説明すること。「人勧」準拠を続けれ
ば、
今後大幅なベースダウンの可能性があることについて、どう考えるのか説明する
こと
 役員会は、今後も「人勧準拠」を続けるつもりでしょうか。もしそうだとすると、

職員にとってたいへん厳しい結果を招きかねません。今年の人勧では、地域別
の官民較差の違いとりあげ、とくに北海道・東北地区において、公務員給与が民
間より4.77%高いことを問題にしています。そして、今後、基本給を引き下げ
(ベースダウン)、地域別の手当によって調整するという方針を出しています。もし
このとおりに国家公務員給与が改正されれば、北海道・東北地区の国家公務員
はたいへんな賃下げとなるでしょう。そういう「人勧」でも準拠するのでしょうか。

まり、東北大学の賃金を大幅に引き下げるべきだというのでしょうか。役員会には
説明する責任があります。
 また、現在準備中の公務員制度改革が実施されれば、国家公務員の人事制度
が大幅に変化します。そのときも「人勧」準拠で、法人化の時と同じような制度設
計作業をしなければならないのでしょうか。昨年度のような会議、超過勤務、書類
作成を繰り返すのでしょうか。労多くして実り少なし、としか思われません。

5.役員会は、まず人事政策の基本方針を発表すること。「人勧」は参考程度にと
どめること。寒冷地手当についても早急に決定を行わないこと。
 このように、今回、「人勧」に準拠して寒冷地手当を改正することは、1回切りに
とどまらない問題を引き起こします。
 まず、役員会が今後の人事政策の基本方針と、改訂の際の年次サイクルをき
ちんと提案すべきです。もちろん、給与表をすべて自前でつくることはたいへんな
作業ですから、「人勧」を参考にすることはありうるでしょう。しかし、それは自ら

方針なく「人勧」に準拠することとはまったく違います。
 自主的な経営政策なしに、寒冷地手当の削減・廃止を「人勧」のみを理由として
強行することには納得できないことを再度強調して、結びといたします。

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川端 望
郵便番号980-8576 仙台市青葉区川内27-1
東北大学大学院経済学研究科
Tel&Fax 022-217-6279
mailto:kawabata@econ.tohoku.ac.jp
http://www.econ.tohoku.ac.jp/~kawabata/index.htm
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