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新首都圏ネットワーク


『高知新聞』2004年10月15日付

女子大は共学化、短大廃止 県立大検討委が提言


 高知女子大と高知短大の将来像を検討していた県立大学改革検討委員会(委
員長=大崎仁・元文化庁長官)は14日、女子大を男女共学化し、新たに社会
科学系学部を設けて短大を廃止する再編案を盛り込んだ提言をまとめ、吉良史
子副知事に提出した。県は今後、提言の実現に向け、大学側とも協議し具体策
を練る。

 再編案は、女子大の現在の生活科学部、社会福祉学部、看護学部、文化学部
の4学部を、健康福祉学部、看護学部、文化学部(いずれも仮称)の3学部に
整理。社会科学系の学部を新設し、短大は廃止する。

 短大が担ってきた社会人教育などの役割は社会科学系学部が担い、昼夜開講
制や社会人入学制度の導入などで社会人のニーズに配慮するよう求めた。また、
進学機会を拡充するため「学生定員の増を検討する必要がある」とした。

 再編に当たっては、共学化と女子大存続を両論併記した2月の中間報告を見
直し、「共学化の方向が適当」と明記。社会科学系学部の新設も踏まえ、県立
大が「将来にわたって男性に門戸を閉ざし続けることは問題」とした。ただ
「高知女子大学の歴史と伝統を生かしつつ、女性の地位向上に資する特色ある
教育・研究を展開することが望ましい」と付記した。

 再編案の実現には狭く老朽化が目立つ永国寺キャンパスの施設整備が「不可
欠」と注文。法人化は必要性を指摘しつつ、先行の国立大学法人などの成果を
見定めて、適切な制度設計をするよう促した。

 この日、高知市本町5丁目の高知グリーン会館で開かれた同検討委の会合に
は、委員9人と特別委員の青山英康学長らが出席。大崎委員長から提言書を受
け取った吉良副知事は「設置者として具体的なプランを固め、県民にお示しし
たい。改革はようやくスタートラインに立った」と述べた。

 同検討委は県外の学識経験者や両大、県内の高校や産業界の代表計11人で
構成。15年1月から14回の論議を重ねてきた。

 早期実現を期待

 大崎仁委員長の話 女性だけの教育は今日まで大きな意義があったが、女性
の進学は男性に劣らない状況。女子大であり続けるなら、女性限定の意味を問
い直さなければならない。県立大は県民のためのサービスが基本。提言の早い
実現を期待する。

 予想された結論に反発 同窓会代表ら

 高知女子大の男女共学化と高知短大の廃止を柱にした県立大学改革検討委員
会の提言。予想された結論とはいえ、共学化に反対してきた同窓会代表は「女
性教育の拠点は残すべきだ」と異議を唱え、推進派は「県の発展につながる」
と期待。同短大OBは「まだ本県に短大は必要。受け入れ難い」と語気を強め
た。

 共学化に反対してきた同窓会「しらさぎ会」の松崎淳子会長は「頭で考えれ
ば共学の時代だろうが、女性の置かれた状況を社会で体感してきた卒業生から
すれば、(女性の教育や地位向上に取り組む)拠点は残すべきだ。『女子大』
は法人化後の個性にもつながる」。今後は県議会への働き掛けを強める構えだ。

 一方、「高知県立大学を作ろう会」の千葉悦子会長は「共学化は県の発展に
つながる」と喜ぶ。県内に男子が進学できる学部は2大学6学部。「それ以外
の勉強をしたい人は県外に出て行かなければいけなかった。経済的負担が大き
く、進学をあきらめる人もいた。若者の流出を防ぐことにもなる」と期待する。

 当事者である大学関係者の思いは複雑。青山英康学長は「設置者である知事
の指示に従う。その対応に英知を結集させることがわれわれの役割」とコメン
ト。ただ共学化については、「法人化も検討される中、女子大という武器を捨
て厳しい競争を戦うことに矛盾はないか。県がどこまで公立大としての責任を
取るかを明確にしてくれないと、共学問題に取り組めない」と話した。

 一方、高知短大には同日夜、OBや教員約10人が集まり、今後の対応など
を協議した。

 教員の中には「短大が持っていた機能を生かす仕組みをどうつくるかだ」と
の声もあるものの、「存続を求める会」の小松佐智男会長は「存続署名も2万
人余り集まっており、廃止は大いに疑問。4年制の普通の大学になってしまっ
ては、働きながら学びたい者に狭き門になりはしないか」と危ぐ。「本県の経
済情勢などからみても、まだまだ短大は必要」と訴え、こちらも県議会への要
請を検討している。