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新首都圏ネットワーク


『科学新聞』2004年9月24日付

「基礎的」から「目的志向型」へ大学の研究テーマ変化見せる


 大学における研究テーマが、学術研究の向上といった基礎的なものから、目
的志向型にシフトしてきている。文部科学省が行ったアンケート「我が国の研
究活動の実態に関する調査報告」で明らかになった。アンケート実施時期が今
年2〜3月の国立大学法人化を控えた時期であったことが、結果に大きな影響
を与えていると山田道夫・文部科学省調査調整課長は話す。

 研究テーマを設定するにあたって、経済・社会的ニーズを「把握している」
「比較的把握している」研究者は全体の86.2%、平成9年度調査と比べて、
4.2ポイント(以下P)増加した。しかし、こうした肯定的解答が多かったのは
民間企業で90.6%、大学等は81.3%にとどまった。また、こうした経済・社会
ニーズの把握方法については、仕事を通じて(75.9%)、学会・協会の学術動
向から(69.2%)、専門誌(紙)から(57.5%)というものが上位を占めてい
るが、経年変化を見ると、市場調査から(43.3%)が18.3P、インターネット
等から(33.9%)が14.5P、それぞれ増加している。

 それでは、どういったニーズを重視して研究テーマを設定しているのか。大
学等、公的機関等、民間では大きく異なる。全体的に大きいのは「環境・食料・
エネルギー問題等の地球・人類的課題解決」で、大学34.4%、公的機関22.8%、
民間21.0%、その他26.5%と、どの機関でも最も重視しているようだ。

 平成9年度調査と比べてみると、大学等では人類的課題解決(5.4P増)生活
者の利便性(4.4P増)、生活者の安全性(1.3P増)、健康維持・疾病治療
(1.7P増)といったことが重視されている一方、学術レベルの向上等をあげる
研究者は9.6%(13.9P減)と大幅に減っている。このとことから大学等の研究
が目的志向にシフトしていることがうかがえる。一方、公的機関等では、人類
的課題解決が13.8Pも減少し、そのかわり生活者の利便性・快適性が6.5P増加、
経済・産業発展が9.9増加と変化している。より実用的な研究にシフトしている
ようだ。

 こうした傾向が研究テーマ設定に現れ始めたことは、税収の減少に伴って、
政府全体の科学技術政策が、近年、経済政策の一環として位置づけられている
ことが大きく作用しているのではないかと思われる。