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新首都圏ネットワーク


『福島民報』論説 2004年9月29日付

福島大「学群・学類」が動きだす


 今年4月に国立大学法人となった福島大は1日付で「学部・学科」を再編し、
新しく「学群・学類」制度をスタートさせる。これまでは教育、行政社会、経
済の3学部だった。これを全面的に改編し、人文社会、理工の2学群とし、人
文社会学群には人間発達文化、行政政策、経済経営の3学類、理工学群には共
生システム理工学類を置く。実際に学生が入って来るのは来春4月だが、今回
の改編により、ようやく長年の懸案だった理工系の学部を「学群」の形で持つ
ことになる。

 最近は大学間の大競争の時代だそうだ。少子化による全入時代の到来や、志
望分野の多様化、就職率による格付けなど、これまでになく厳しい選別が行わ
れ始めている。再編を機に、福島大もこの競争の中で、他に負けない、しっか
りとした新たな道を歩んでほしいと思う。

 同大は2学部の時代が長く、行政社会が誕生して3学部となったあとも、大
学当局、県内経済界を中心に理工系の学部を求める活動が続いていた。しかし
国の予算の壁は厚く、最終的には既存の学部を筑波大方式に再編し、この中か
ら教官の定員や学生の募集定員をひねり出す苦肉の策で、約半世紀にわたる悲
願だった理工系の創設を実現した。

 共生システム理工学類は、さらに人間支援システム、産業システム工学、環
境システムマネジメントの3専攻に分かれる。今年度の大学案内のパンフによ
ると「人々が21世紀の新たな課題を解決し、安心して安全に生活するために
求められるこれまでの学問体系にない理学、工学、社会科学を融合した共生の
科学・技術を解き明かすために新しい視点で教育、研究を展開する」という。
文部科学省は来年度予算に実験棟建設費などを計上する方針だと伝えられてお
り、新体制に見合った施設、設備の整備も進む。

 新しい一歩を踏み出す1日、同大は学群長、学類長らへの辞令交付や看板の
掛け替えなどの事務的な手続き、作業に加え、県教委との「連携協力に関する
協定書」の締結式を行う。本県の教員養成はこれまで主に教育学部が担ってき
たが、再編で同学部が消滅しても、新設の理工学群では理系科目、人文社会学
群人間発達文化学類ではそれ以外の科目の教員の養成、資質向上のための研修
を従来通り行う。このため大学全体の知的財産を地域に還元することをうたっ
て、協定を結ぶものだ。

 また10月14日には再編後、初の産学連携フォーラムが郡山市のホテルハ
マツで開かれる。郡山地域テクノポリス推進機構主催で、共生システム理工、
経済経営の両学類長が研究テーマや地域貢献の体制について説明し、出席の経
済人の理解を求めることになっている。

 これまでの3学部体制の中で地域活動が不足だったというのでは決してない。
県内の他の大学に勝るとも劣らない多彩な活動を行い、成果を挙げてきた。む
しろ理工学群の誕生を機に、これまでの地元産業界との交流で手が及ばなかっ
た技術的な部門や、環境問題、IT関連など最近注目を集める分野でも、もっ
と幅広く交流することが可能になるかもしれないし、多くの県民も、そうなる
ことを、きっと期待しているのではなかろうか。(渡辺 智衛)