トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


『しんぶん赤旗』2004年9月27日付

国立大学法人化の実態を追う(下)

蔓延するサービス残業

 「月百九十時間の残業に対し、手当は二十四時間分しか払われていない」。
広島大学教職員組合が七月十三日、労働基準監督署に告発しました。同教職組
によると、「法人移行にともなって多くの部局が連日、深夜の残業になった。
学長がトップダウンで決めた事業は四カ月間に休暇は三日だけ」。その実態に
取材の記者らからも驚きの声があがりました。

過労から病欠者も

 山形大学職員組合が行ったアンケートでも、「毎日深夜まで勤務があり、休
日労働も加わり過労から病欠者もでている」との回答がよせられています。と
ころが、全残業時間分の手当が払われていると回答したのは、2・4%に過ぎ
ません。いま、各地の労基署が、国立大学の調査に入っています。

 国立大学の教育、研究、医療をささえる大事な業務で、勤務時間の管理もさ
れず、サービス残業がまん延しています。こんな状況で、文部科学省がいうよ
うな「世界最高水準の大学を育成する」ことができるでしょうか。

 そもそも、国が措置してきた超過勤務手当は、これまでも事務職員一人当た
り月十二時間分、看護師で二十六時間分です。文科省は、これをはるかに上回
る超過勤務の実態を知りながら、法人化後もこれと同額しか措置していません。
「法人化したら大学側が払う義務をおう」(国立大学法人支援課)とのべるな
ど、自らの責任を棚に上げる姿勢です。

教員リストラの危険

 大学教員の間で不安が募っているのは、法人化によって任期制の導入が推進
されることです。任期制とは、三〜五年の任期がきたら失職する雇用形態です。
北見工業大学では四月から全教員の半数近い七十名余に任期制を導入。九州大
学では法人化に先立って工学、農学、医学の各研究院で全教員に任期制を導入
しました。

 九大では、「任期がきても再任されるから心配ない」と説明し、教員から同
意をとりつけました。しかし、任期制は教員の雇用を不安定にし、教育研究に
短期の業績を求めるなどの弊害をもちます。中期計画が終了する五年後、文科
大臣が大学・学部の改廃を図る場合に、教員リストラの手段になる危険は否め
ません。九大教職組は、法人化後に改めて任期制の廃止を要求しています。

 法人化した国立大学では、大学自治の枠組みをひろげる上でも、教職員の雇
用・労働条件を守る上でも、組合の役割が従来以上に大きくなりました。それ
だけに、教職員からの期待はかつてなく高まっています。この一年余に全国で
二千六百人以上(全大教集計)の組合員が増えています。(おわり)