トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


『しんぶん赤旗』2004年9月24日付

国立大学法人化の実態を追う(中)


役員会の密室化に批判

 国立大学法人では、学長と理事の数人からなる役員会が大学運営の決定機関
になります。どの大学でも月一、二回程度は開かれていますが、「役員会の姿
が見えない」、「財政などの情報が公開されない」との声が教職員からあがっ
ています。関西地方のある大学では、役員会が何を議論し、どう決めたのかが
教授会に報告されなくなりました。「重要事項を審議する」(学校教育法)役
割をもつ教授会の審議が制限され、いわば役員会の下請けになる事態です。こ
うした役員会の密室運営や教授会の形がい化への批判が、全国でひろがってい
ます。

大学憲章を力に

 昨年来、大学運営の理念をうたった大学憲章が、いくつかの大学で制定され
ました。

 中部地方のある大学では、学内構成員の総意を集めて大学憲章を制定、「す
べての構成員が、それぞれの立場において、本学の目標を達成するため、大学
の諸活動へ参画することを保障」するとしました。法人化後もこれにのっとっ
て、教員、職員、学生が一堂に会して教育研究の充実のために協議する機関を
設置。この機関で学生が要求した通学バスの増発などに、大学側がバス会社と
交渉して一定の改善が図られ、学生から「自治の枠組みを広げるきっかけになっ
た」と歓迎されています。

 東北地方のある大学でも、全構成員の過半数の賛同署名により大学憲章を制
定、「私たちはそれぞれの立場から、大学運営に発言し参加する権利を有しま
す」と宣言しました。これが役員会への圧力にもなり、「大学自治への侵害を
排除し、大学全体の合意で運営していく強固な礎になった」といいます。

学長選挙の重視

 また、学長の権限が強くなることに対して、学長選考を民主的な方法で行う
ことが多くの大学で重視されています。学長選考権は、学外委員と学内委員の
同数で構成する学長選考会議がもちます。この選考にあたって実施される教員
の意向投票を、職員にも広げる大学が増えています。法人化にともない職員の
役割が増大した反映とみられます。

 逆に、一部の大学では意向投票を形がい化させる動きもあります。東北地方
のある大学では、学長選考会議の学外委員から「学長選挙など古い慣習にとら
われすぎ」と指摘され、意向投票制度は残したものの、その最高位でなく三位
までから選考するしくみに変えてしまいました。

 法人制度のもとでも大学自治の枠組みを広げていくのか、あるいは大学自治
の到達を後退させるのか、全国の国立大学が揺れ動いています。

 (つづく)