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新首都圏ネットワーク


asahi.com 2004年9月21日付

減った研究費、経費削減でやりくり 廃止予定の都立大


 東京都が進める大学改革で廃止されることになった都立大学が、研究費のや
りくりに四苦八苦している。来春開校予定の新大学「首都大学東京」に就任予
定の教授らには厚めに配分されたが、就任を承諾しなかった教授らは少なめだっ
た。授業で配る資料のコピーは年間1人1000枚まで、購読できる新聞は1
紙だけ、といった経費節減を申し合わせた例もある。予算は都が一括管理して
いる。「大学の自治はどこへ行った」と嘆きの声も出ている。

 「1000枚で使用中止です」

 経済学部の教員が使うコピー機の前には、そんな注意書きが張り出された。
緊縮予算の中で研究費や教育費を節約するため、教員らが「授業用のコピーは
とりあえず年間1人1000枚まで」と申し合わせた。

 前期、300人近い学生が集まる講義を担当したある教授の場合、これまで
3回資料を配り、すでに計941枚。「このままでは後期の授業ができない」。
16日の教授会でそんな声が出た。首都大就任予定の教員に支給された「傾斜
的配分研究費」を拠出してまなかうことを検討することになった。

 都大学管理本部は今年度、廃止が決まった都立4大学の研究費を一括して管
理している。同本部によると、約10億円の研究費の約半分は年度初めに一律
に配ったが、残りのうち約3億5000万円は「都市に関する研究」など、首
都大学の「理念」に沿う研究を公募し、都が審査して認められた研究に対し、
「傾斜的に」支給した。

 首都大の教員就任を拒んだ教員には公募資格はなかった。関係者によると、
経済学部は就任しない教員が多いとされ、認められなかった申請もあり、研究
費の合計は前年度より24%減った。同じく多数の拒否者がいるとされる人文
学部では、教員らが話し合って共同で研究費を申請。前年度比10%減にとど
めた。

 それでも「どれだけ配分されるか分からなかった」ので、新聞や雑誌などを
削減してしのいだ。仏文学専攻でも購読するフランス語の新聞は「フィガロ」
をやめ、「ルモンド」1紙だけにした。

 別の専攻では、今年度の研究費は前年度より約120万円少ない約560万
円。コピー機のリース代や新聞、雑誌の購読料、書籍代で使い切ったという。

 都立大の幹部教授の一人は「首都大と都立大は本来関係ないのに、研究内容
まで審査するのはやりすぎだ」と批判する。

 都大学管理本部は「首都大の発足準備は今年度から行っている。研究費の配
分もその一つだ」と話す。在校生が残る都立4大学は、首都大とともに一つの
法人になって2010年度まで存続する。来年度以降の研究費をどのように配
分するかについては「これから検討する」としている。