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新首都圏ネットワーク


『科学新聞』2004年9月3日付

競争的資金 大幅増へ

科研費相当の1800億上乗せ
文科省が概算要求

 文部科学省は17年度概算要求を明らかにした。一般会計は8,053億8,200万円
増の6兆8,653億700万円、電源開発促進特別会計は63億 2,100万円増の1,599億
8,500万円。国立大学法人の運営費交付金は250億4,300万円増の1兆2666億
1300万円となった。17年度概算要求の特徴は、科研費全額に相当する約1800億
円増加した競争的資金と科学技術関係人材養成のための総合プランを策定した
ことだ。また、国立大学等施設緊急整備5カ年計画の最終年度にあたるため、
対16年度比約4.3倍となる2,268億3,300万円が施設整備予算として盛り込まれた。
分野別予算の概説は次週に掲載する。(他省の概算要求は次号)

21世紀COE 競争的資金に取り組み

 1803億9300万円の増要求。競争的資金の倍増を目指して文部科学省が行った
概算要求は対16年度比1.6倍にものぼるものになった。7月23日の総合科学技術
会議で「競争的研究資金の倍増を早期に達成するため、17年度予算案時点で12
年度予算の1.5倍を目指す」ことを決めた。これを受けての概算要求となったた
め、対12年度比1.9倍強となる合計4628億4200万円を要求、これまで競争的資金
として位置づけられていなかったものも競争的資金に位置づけ直して倍増に近
づける。

 科学研究費補助金、戦略的創造研究推進事業、科学技術振興調整費の三大競
争的資金は、17年度概算要求の20%要望枠を目一杯使って、それぞれ2196 億円、
555億9500万円、463億2000万円を要求。先端計測分析技術・機器開発66億円、
大学発ベンチャー創出推進のための事業43億7400万円、独創的革新技術開発提
案公募制度/革新技術開発研究事業33億1100万円と着実に伸ばしている。

 また、競争的研究資金に新たに位置づけられたものが21世紀COE等だ。単
なる予算の衣替えではないのかといった批判もあるが、文科省は「科学技術基
本計画では『競争的な研究開発環境の形成に貢献する競争的資金』と位置づけ
られており、その考え方に立ち戻った」という。つまり、広く公募を行ってお
り、ピアレビューによって選定・評価するものを競争的資金と考える。さらに
総合科学技術会議が示している、間接経費の導入、PD・POの設置なども盛
り込むことで予算の位置づけを変える。

 21世紀COEの場合は、367億円の事業費に間接経費30%を導入した476億
5700万円を要求。ただし17年度新規拠点は選ばない。また、革新的原子力シス
テム技術開発委託費(157億2300万円)、知的クラスターなどの地域科学技術振
興事業費補助金(175億500万円)にも、間接経費やPD・POを設置する。今
後、予算編成過程の中で制度設計の変更を進めていく。

 さらに、従来施策を構築し直して新規施策にしたものもある。社会のニーズ
を踏まえたライフサイエンス分野の研究開発(97億3000万円)、次世代IT基
盤構築のための研究開発(42億円)、地球環境研究開発プログラム(10億2000
万円)、ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発(62億
円)。リーディングプロジェクト等で行っていたものの一部を廃止し、新たに
競争的資金に組み換えた。

 さらに新規として、SPring-8や大型NMRなどの最先端大型研究施設
等の利用料などを補助する先端研究施設・設備等活用推進プロジェクト(42億
円)、地球観測サミットを受けて行う地球観測システム構築の推進(17億200万
円)、科学技術振興機構の委託開発の一部をより競争的に行う委託開発事業
(競争的資金型)50億5400万円などがある。

 競争的資金の定義とは何なのか。今回の概算要求で文科省が投げかけた提案
の意義は大きい。米国では、非軍事政府研究開発投資の三分の一が競争的資金
だと言われているが、その区分けを見ると非常に幅が広い。例えば、NIHが
競争的資金として大学にセンターを作る予算を配分したり、NSFが教育コー
スのための資金を配分したりしている。河村文科相も7月の総合科学技術会議
でも「競争的資金のあり方自体を考えなければならない」と話している。今後、
予算の査定が進められていくが、同時に競争的資金の定義について検討しなけ
ればならないだろう。