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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Academia e-Network Letter No 157 (2004.08.08 Sun) http://letter.ac-net.org/04/08/08-157.php ━┫AcNet Letter 157 目次┣━━━━━━━━━ 2004.08.08 ━━━━ 【1】イラクから帰国された5人をサポートする会 世話人会見解 2004.8.8 『週刊新潮』(8月12・19日号)記事「未だに『飛行機代』 を払わない『イラク人質3人組』」 について http://ac-net.org/honor/doc/04808-shinchou.php 【2】イラクから帰国された5人をサポートする会・世話人会見解 2004.7.29 「朝生」番組製作者との懇談と日下氏所感について http://ac-net.org/honor/doc/047-on-kusakamemo.php 【2-1】「朝まで生テレビ!」プロデューサー日下雄一氏所感 http://ac-net.org/honor/doc/047-kusaka-memo.php 【3】高山氏より:新刊紹介のお便り 城 繁幸 (Kobunsha Paperbacks) 2004年7月30日発売 「内側からみた富士通 "成果主義"の崩壊」 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334933394/ ━ AcNet Letter 157 【1】━━━━━━━━━━ 2004.08.08 ━━━━━━ イラクから帰国された5人をサポートする会 世話人会見解 『週刊新潮』記事「未だに『飛行機代』を払わない『イラク 人質3人組』」について 2004.8.8 http://ac-net.org/honor/doc/04808-shinchou.php ────────────────────────────── 現在発売中の『週刊新潮』(8月12・19日号)に掲載された標記記 事(以下、「新潮記事」と略す)は、私たち「イラクから帰国さ れた5人をサポートする会」のこれまでの取り組みにも関係します が、記事の内容は事実経過を著しく歪めたものであり、高遠さん、 郡山さん、今井さんの名誉と人格を中傷したものといえます。そ こで、私たちが把握している事実経過とそれに基づく世話人会の 見解を公表することにしました。 航空運賃支払いの事実経過 新潮記事は、「人質事件の際に使われた飛行機代の支払いがまだ すんでいない」、「わずかな飛行機代も払わず、外国に出てしま う神経は信じがたいというしかない」、「飛行機代払うのも『自 己責任』の一部だぞ」などと記し、この問題で3 人に重大な落ち 度があるかのような表現をしています。 しかし、事実経過をいえば、3人はドバイ−羽田間の片道航空運賃 を、また3人のご家族は羽田−ドバイ間の往復航空運賃をすでに支 払い済みであり、社団法人国際交流サービス協会から、5月14日付 けで領収書が発行されています。ちなみに、この時の支払い総額、 1,980,570円は、私達「サポートする会」が呼びかけた募金の一部 から充てられたものです。 今回の新潮記事が問題にしているのは、それとは別のバグダッド −ドバイ間の片道航空運賃(1人当たり41,472円)ですが、これ について新潮記事は、外務省邦人保護課の「1人当たり約4万円 を請求していますが、実はまだどなたからも頂いていないのです。 支払期限は10月頃になっているので、まだ時間はあるのですが」 という談を掲載しています。 しかし、事実はどうかといえば、3人の救出・帰国に関わる会計を 担当された「今井・高遠・郡山さんを支える会」が公表した収支 計算報告では、「3人のバグダッド−ドバイ間の旅費124,416円 (@41,472×3人)については、その支出の規程等の確認を外務省 に求めているところであり、確認ができた上での支払いとなるた め、現在の支出には含まれておりません」と記されています。 つまり、今回のように、先例が乏しい費用負担の請求を受けた側 として、請求の根拠を確かめるのは当然のことであり、明確な根 拠が確認できれば支払いに応じる意思を明らかにしているわけで す。こうした経過を外務省が『週刊新潮』の取材に対して説明し たのかどうか、説明をしたにもかかわらず、その部分を『週刊新 潮』側が故意に捨象したのかどうかはわかりません。いずれにし ても、新潮記事がこうした事実経過を踏まえず、また、高遠さん 側にも取材をした体裁を整えているとはいえ、その真意を大きく 歪め、あたかも3人が理由も無く支払いを渋っているかのような印 象を意図的にふりまく内容になっています。 まだ懲りていないのはどちらか そもそも、新潮記事に引用された外務省の上記の説明によれば、 問題の航空運賃の支払期限は10月頃です。とすれば、期限の約2ヶ 月前の段階で「未だに払っていない」などと大仰に書きたてる 『週刊新潮』はどのような見識の持ち主なのでしょうか? 「未だに」という言葉は支払期限が過ぎてなお未払いの場合に使 う用語であることは世間の常識です。今回の記事はそうした常識 さえ、思い浮かばないほど『週刊新潮』の見識が偏向しているこ とをはしなくも証明したものといえます。 なお、新潮記事は、3人が「激しいバッシングを受けたのは記憶に 新しいが、この人たち、まだまだ懲りていない」と記しています。 しかし、以上の説明からすれば、3 人とそのご家族の「経歴」な るものを書きたて、いわれのないバッシングの材料をふりまいて、 内外から厳しい批判を受けた経験に「まだ懲りていない」のは 『週刊新潮』自身であるというのが正解です。 以 上 ━ AcNet Letter 157 【2】━━━━━━━━━━ 2004.08.08 ━━━━━━ イラクから帰国された5人をサポートする会・世話人会見解 2004.7.29 「朝生」番組製作者との懇談と日下氏所感について http://ac-net.org/honor/doc/047-on-kusakamemo.php ─────────────────────────────── 「朝生」番組製作者との懇談と日下氏所感についての世話人会見解 「朝まで生テレビ!」プロデューサー日下雄一氏の「『イラクから 帰国された5人をサポートする会』(代表世話人:醍醐聰)との 懇談を終えて」について 2004年7月29日 イラクから帰国された5人をサポートする会・世話人会 テレビ朝日「朝まで生テレビ!」番組プロデューサーの日下雄一 氏より、6 月17日の懇談の際のお約束のとおり、所感を記した文 書が示されました(添付)。内容的には、わたしたちの公開書簡(5 月31日付「イラク人質事件に関する貴局のご回答に関する私達の 見解」)の第1項(「人質とその家族に対するバッシングをどう思い ますか」という設問自体の問題性について)に対する見解のみに限 定されていますが、このようにして、わたしたちとの間に応答関 係を保っていただいた点に、まず謝意を表します。 この第1項については、6月17日の懇談においても、また、それ以 前のわたしたちの質問状や公開書簡においても、さんざん説明し てきたのですが、今回の日下氏の文書でも、「人質とその家族に 対するバッシングをどう思いますか」という設問の問題性につい ては「根本的認識の違い」あるいは「理解の差」として、わたし たちの指摘を退けているのは、たいへん残念なことです。 日下氏が主張したいのは、要するに、「“バッシング”が既に大 きな社会問題となっていた」から、その是非をめぐる意見分布を 量って、討論番組に反映させたのであって、番組制作者としてバッ シングに加担したり、それを助長したりする意図はまったくなかっ たということです。もし、そうした意図に基づいて番組が制作さ れていたのなら、それはまた別に問題とすべきことでしょうが、 ここでわたしたちが問題にしてきたのは、「バッシングが既にな されていたからその是非を広く視聴者に問うた」ことの影響力や 効果なのです。 そうした問いを投げ掛けることは、犯罪被害者とその家族に対し て誹謗中傷や嫌がらせが現になされていたのでそれが当然か否か を質問するのと同じことであると、6月17日の懇談においてわたし たちは主張したのですが、日下氏は3時間近くにおよぶ議論にも関 わらず一貫して、そのことを認めようとしませんでした。 現になされているのだから、それが何であれ、その是非を尋ねる のは、多数の国民に問いかけるテレビメディアの役割からして妥 当であるとの見解なのですが、そうだとすると、殺人が現に横行 しているなら「殺人は是か非か」という問いもテレビは発するこ とができるということになるでしょう。そこには「現状」へ擦り 寄る姿勢はあっても、譲ってはならない規範や倫理への配慮はあ りません。テレビメディアが、いかなる規範や倫理からも中立・ 自由に、何でも広く問い掛けることができるのだとしたら、それ は恐ろしいことです。メディアの不偏不党原則とは、そういうこ とではないはずです。なぜ恐ろしいかといえば、是非を問うとい うことは、是という答えもありうることを問う側が予定している がゆえに、問われた側やその問いに接した者に、「バッシングは [あるいは殺人は、公約無視は、公金横領は]ありなんだ」と思 わせる効果をもつからです。テレビ局が規範や倫理への配慮を欠 くことによって、規範や倫理はすり減らされていくのです。 現にあるのだから、それについてどんな問いでも投げ掛けて議論 するというのは、個人の資格においてはありうることかもしれま せん。問いに接した者は、その問い方から問う者を評価・判断で きるし、問い方の問題性を直ちに投げ返すことができるからです。 しかし、テレビがそれをしたなら、あまりにも最低限の資質を欠 き、無責任なふるまいといわなければならないでしょう。たとえ 討論を呼び起こすためであっても、「非難は当然である」という 選択肢を設けて、「人質とその家族に対するバッシングをどう思 いますか」と尋ねることは、妥当性を欠くといわざるをえません。 こうした問いに接して誰もが「バッシングは当然だ」と考えるわ けではないでしょうが、「やはりバッシングは当然だったのだ」 と思う人を確実に発生させることによって、バッシングを助長す ることになるからです。「朝生」の制作者は、自分たちの意図は 語るが、その社会的責任や影響力を語ろうとしません。また彼ら は、問うことの意味について実に素朴な考えしかもっていません。 問いによって相手をさまざまな方向に誘導してしまうがゆえに、 視聴者に広く問い掛けるテレビメディアは特に問い方に配慮しな ければならないということを理解していません。 自己の影響力を把握できず、譲ってはならない規範も考慮しない で、大きな危険を犯す恐れのある巨大な力を持ったテレビメデイ アが正常な機能を発揮できるように軌道修正させてゆくのは、私 たち視聴者の役割ですが、他方で、その無責任性を突かれて公権 力が報道を統制しこれに介入してもよいのだという論調を防止す るのも、私たちの役割だと認識しています。両面の、決して軽く はない役割を確認できたことが、今回の一連のやりとりの成果で す。 日下氏の文書にある「今回の経験を奇貨とし、今後も多様な問題 を取り上げ、率直な論争の場を作ることに邁進したい」との見解 を多とし、その実施を大いに期待したいと思います。 ────────────────────────────── 【2-1】「朝まで生テレビ!」プロデューサー日下雄一氏所感 http://ac-net.org/honor/doc/047-kusaka-memo.php ────────────────────────────── 「イラクから帰国された5人をサポ−トする会」 (代表世話人:醍醐聰氏)との懇談を終えて テレビ朝日報道局「朝まで生テレビ!」 プロデュ−サ−日下雄一 テレビ朝日が企画、放送した(4・30)番組「朝まで生テレ ビ!」(副題:憎悪と虐殺!イラクの未来)について、貴団体世 話人醍醐氏より、抗議・質問状が寄せられたことを受けて、6月 17日番組プロデュ−サ−(日下雄一)とディレクタ−(山口栄一) 2名と団体の3 名で懇談を行いました。 (テレビ朝日としての回答は既に渡されており、懇談は「朝まで 生テレビ!」番組独自の対応であり、非公開を前提としたもので した) 抗議・質問の主旨は、番組討論の参考として視聴者の意見を求め る中で、インタ−ネット上に設問されたうちのひとつ「人質とそ の家族に対するバッシングをどう思いますか?」に対し、設問そ のものが人権侵害であるとの指摘でした。 懇談は番組の企画意図、上記の質問を設定した理由等について3時 間近く行われました。 醍醐氏と団体の抗議の主旨は、「バッシングへの問い」は、賛否 を問う以前の人権侵害の問題であり、設問の回答選択肢の一つで ある「非難されて当然だ」について、設問そのものが、人権侵害 の機会を提供するあるまじき行為であるとの点でした。 番組では、“バッシング”が既に大きな社会問題となっており (問題とされている中身の是非は別として)、社会問題を取り上 げ、その是非、本質を問うことは、むしろメディア、とりわけ多 数の国民に問い掛けるテレビメディアの役割であるとの認識を説 明し、当設問を含めた論点・問題点は本討論(約3時間)に反映 させ、この社会現象の背景と理由、分析、賛否、解決策などにつ いて参考にしたいとの番組意図を説明しました。 議論は番組の意図、視聴者への影響、テレビメディアとしての責 任と編集権等多岐にわたり、時に激しい議論が行われました。と りわけ、企画意図と影響の大きさ、人権侵害について多くの時間 が費やされ、率直な論戦が交わされました。 この問題についてのテレビメディアの立場からの認識と団体の理 解との間には、相当のギャップがあると感じざるを得ませんでし た。とりわけ設問自体が、人権侵害であるとの抗議については、 根本的認識の違いがあると思わざるを得ず、容易に違いの大きさ は解決できないとの実感が残りました。 設問が適切だったのか、他に良い質問はなかったのかについても 論議しましたが、番組としては検討した結果、上記の設問をした のであり、ほかの案もあり得たことは認めつつも、放送の時点で は妥当な問いであったと考えています。朝まで生テレビ!」は、 3時間の議論の中身が番組の本意であり、全体をみて番組の主旨、 意図を理解していただきたいというのが、制作側の考えであり、 これについては番組のスタート以来一貫しております。 3時間近くに及ぶ論議の結果、認識、理解の差は、残念ながらこの 懇談で埋められたとはいえませんが、多くの多様な意見、考えが あり、また、それを認めたうえで、率直に語り合いたいとの番組 の姿勢については、今後も変えるつもりはありません。 尚、醍醐氏と団体からの抗議については、考え方の違いはありな がらも、制作側にとり参考とすべき、又、耳を傾けるべきご指摘 も少なからずあったことは、今後番組を作る上で、有意義であっ たと理解しているところです。 「朝まで生テレビ」は、今回の経験を奇貨とし今後とも多様な問 題を取り上げ、率直な論争の場を作ることに邁進したいと思いま す。 テレビメディアとしての責任を自覚しつつも、そうすることが、 又、テレビ制作者の負うべき役割であり、開かれた民主主義と言 論の自由へ寄与することになると考えるからです。 尚、当番組放送後、拘束された5人の方への批判については、 「やりすぎ」を含め、「5人の行動を評価する」「悪いのは5人で はない」など、「自己責任論」へ疑問を呈する意見が多くなって いるとの感触を持っている(会社に寄せられた意見、独自の番組 モニタ−、マスコミ関係者との情報交換などから)ことを付言致 します。 テレビ朝日報道局 「朝まで生テレビ!」 プロデュ−サ− 日下雄一 ━ AcNet Letter 157 【3】━━━━━━━━━━ 2004.08.08 ━━━━━━ 高山氏より:新刊紹介のお便り 城 繁幸 (Kobunsha Paperbacks) 2004年7月30日発売 「内側からみた富士通 "成果主義"の崩壊」 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334933394/ ────────────────────────────── To: admin@letter.ac-net.org Subject: ある本の紹介 From: Nobuki Takayama Date: Sat, 07 Aug 2004 17:31:02 +0900 (JST) こんにちは。 ac-net 愛読しております高山です。 内側からみた富士通 "成果主義"の崩壊 城 繁幸 (Kobunsha Paperbacks) 2004年7月30日発売 を読んでみました。この本は、納得する部分、批判したい部分な どいろいろまじってます。 が、 新 "成果主義" がとりいれられ つつある大学関係者は一読するとおもしろいと思います。 一部の学部や大学ではじまっている年俸制、任期制、目標評価制 度、 などは茶番であり, 大学が伝統的にもっていた本来のよき" 評価と人事のシステム" を破壊してしまうのではないか? と、 この本を読んでると大変に心配になりますね。 ────────────────────────────── #(編集人註: amazon.co.jp のページより: 目次 Introduction はじめに Chapter 1 急降下した業績 Chapter 2 社員はこうして「やる気」を失った Chapter 3 社内総無責任体制 Chapter 4 「成果主義」と企業文化 Chapter 5 人事部の暗部 Chapter 6 日本型成果主義の確立へ Afterthoughts おわりに 「成果主義幻想」を捨てるとき Appendix 1(付録1)日本企業と成果主義 Appendix 2(付録2)最近の富士通グループの主なリストラ ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集発行人連絡先: admin@letter.ac-net.org 趣旨:http://ac-net.org/letter/ ログ:http://ac-net.org/letter/log.php #( )内は編集人註 登録・解除・アドレス変更:http://letter.ac-net.org/s.html 転送・転載時はサイト(http://ac-net.org/letter)を併記下さい。 |