トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


『中国新聞』社説 2004年8月8日付

広島県立3大学統合 地域貢献を重視せよ


 広島の三つの県立大学が再編統合され、来春、新しい「県立広島大学」が開
学する。先月末、文部科学省が設置を認可した。少子化で大学進学者が頭打ち
となり、志願者全員が入学可能となる「全入時代」は目前だ。「県立」の特色
を生かした、より魅力ある大学づくりが求められている。

 広島県がつくった「新県立大学基本構想」によると、広島女子大(広島市南
区)、県立大(庄原市)、保健福祉大(三原市)を、それぞれ現在地にキャン
パスを残したまま一大学に統合。庄原の経営学部を広島に移すなどして現在の
五学部十三学科を四学部十一学科に再編する。本部は広島に置く。

 新大学は「地域に根ざした、県民から信頼される大学」を目標に、(1)実践力
のある人材の養成A地域に根ざした高度な研究(2)大学資源の地域への提供を基
本理念に掲げている。徹底した語学教育と多様な資格を取得できる実践的な教
育▽地域政策研究を通して自治体などと大学との連携を強化▽地域貢献を推進
するセンター機能の整備などがそれぞれの主な内容である。

 県立大学の統合は、二つの事情を背景に推進された。一つは、県の厳しい財
政事情のもとで三大学を統合してスリム化を図り、運営費などを縮減すること
である。もう一つは、数年後に到来する大学全入時代に生き残るため、志願者
から「選ばれる大学」をつくりだすことだった。

 三大学の現在の学生定員は合わせて二千四百二十六人だが、新大学は百二十
六人減の二千三百人となる。二百九十人いる教員は、四年後には二百五十人程
度に絞る見込みで、事務職員も当然、削減の対象になる。こうして年間約四十
億円程度支出している県費を一割程度圧縮したい考えだ。

 そのうえで、どんな内容の大学をつくるのか。基本構想の三つの理念に共通
するのは、現実にマッチした教育と研究の実践である。地域課題としっかり向
き合い、政策提言などを通して自治体とも連携し、地域づくりに貢献する。県
民の税金で運営する大学の果たすべき役割ともいえるだろう。

 新大学は、キャンパスが三つに分かれ、従来からの活動拠点を維持している。
庄原の生物環境学部には、これまで県北をベースに積み上げた産学官連携の実
績がある。都市部での地域貢献にも参考になるはずだ。三原の保健福祉学部が
蓄積してきたノウハウは、高齢化が進む中山間地の医療福祉を充実させるうえ
でも大いに役立つに違いない。人口が集中する広島キャンパスでは、社会人を
対象にした昼夜開講などにしっかりと知恵を絞りたい。

 三つの県立大学が、県西部と東部、北部にキャンパスを持ち、県庁所在地と
工業都市、中山間地での実績を挙げてきた。そんな三キャンパスの利点を県全
域に広げる大学になってほしい。