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独立法人化の国立大・病院に大手銀行が売り込み攻勢


読売新聞ニュース速報

 国立大学や国立病院が4月から独立行政法人に移行したことなどに伴い、銀行
 が、これらの大学や病院と取引拡大を目指す動きが加速してきた。

 国立大学などの資金管理や決済業務は、これまで日本銀行が取り扱ってきたが、
 法人化後は大学なども、民間企業と同様に取引金融機関を決め、資金管理する
 必要に迫られているためだ。民間病院などとも取引強化を図る大手行もある。
 いずれも、銀行にとっては「新たな市場の出現」(大手行)だけに、大手金融
 グループ間などでの争奪戦は激しさを増している。

 ◆担当倍増◆
 全国89の国立大のうち、最も多い34大学との取引を獲得したのは、三井住
 友銀行だ。1月から本部の大学担当行員を6人に倍増させ、東大や京大の主力
 取引銀行の座も獲得した。授業料納入などの資金決済や、民間同様の経営感覚
 が求められるようになった大学側に、コスト削減の手法などもアドバイスする。

 また、東大が所有する知的財産権などを活用して事業を起こすベンチャー企業
 向けの投資ファンド(基金)にも5億円を出資し、将来有望な大学発のベンチ
 ャー企業を早期に発掘し、収益拡大につなげる。

 UFJ銀行も、「顧客層拡大のチャンス」(幹部)だとして営業を強化、大阪
 大などとの取引を獲得した。みずほ銀行も、授業料などの出入金を管理する国
 立大用のシステムを独自に開発、4大学に納品した。

 ◆資金窓口◆
 国立病院では、東京三菱銀行が「グループの総合力」(公共法人部)を売り込
 み、全国約150病院の資金調達の窓口となる国立病院機構との主力取引銀行
 となった。現在は送金などの決済取引にとどまっているが、来年度以降は施設
 建て替えなどの設備投資も予想され、「融資や債券発行など資金調達に関する
 取引も増える」(同)と期待する。

 新生銀行も、24時間利用できる現金自動預け払い機(ATM)を全国6か所
 の国立病院に設置することを決めた。

 診療報酬の引き下げなどに直面している民間病院への取引強化を図るのは、み
 ずほ銀だ。経営コンサルティングや情報技術(IT)関連、病院食などに関す
 る計約150社と契約し、「病院経営の様々な課題を支援できる」(ビジネス
 ソリューション部)とアピールする。将来的には、「今後5年間で約2兆円の
 建て替え需要がある」(大手行)とされる資金調達で、融資拡大を狙う。

 三井住友銀も、無担保で最大5000万円まで融資する制度を設けたほか、病
 院経営に関するコンサルタントの資格を持つ行員の増員を急いでいる。

 ◆課題◆
 ただ、国立大学や国立病院などに対する銀行の取引先拡大の動きは現時点では、
 資金決済などを中心とした取引にとどまっている。

 今後は、銀行が国立大学などと関係を一層深めることが課題となるのは必至で、
 大手行の担当者は「民間企業の経営感覚が伝わるよう、様々なアドバイスをす
 ることが大事だ」と指摘する。アドバイスにより、補助金などに頼らない資金
 調達や返済計画などが策定できれば、経営の自由度が広がり、設備投資の増加
 にもつながるという訳だ。

 収益源のさらなる多角化が求められている銀行にとって、この分野を新たな収
 益の柱に成長させることが出来るかが、今後の課題の一つとなりそうだ。

 ◆独立行政法人=政府の仕事から実施部門を分離し、独立した法人格を持たせ
 る制度。民間の経営手法を取り入れ、効率的な運営を図るのが目的で、200
 1年4月から始まった。独立性を高めるために人事権を持つが、実際には所管
 官庁OBの天下りが目立つと指摘されている。

[2004-07-25-01:57]