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新首都圏ネットワーク


『読売新聞』2004年7月24日付

「博士を採用して」政府、余剰博士の就職活動を後押し


 博士号を取得しても定職に就けない「余剰博士」が増え続けている問題で、
政府の総合科学技術会議(議長・小泉首相)は、産業界や報道機関などに対し、
博士を積極的に採用するよう呼び掛けていく方針を決めた。

 しかし産業界側は、業績立て直しのためリストラを断行してきただけに、国
が博士を大量生産しておいて、その後始末を民間に任せる手法には反発の声が
上がりそうだ。

 同会議は、「博士が多様な領域で採用され、能力にふさわしい処遇を受ける
ようになれば、我が国の科学技術や社会、雇用などの状況は大きく変化する」
と判断。政府として、博士の就職活動を後押しすることにした。

 主な就職先としては▽大学や公的機関以外の研究者▽民間企業で経営にも参
画する技術者▽高校や中学の教員▽ベンチャー企業の経営者▽弁理士など知的
財産の専門家▽科学ジャーナリストや科学博物館の説明員▽科学技術政策に関
する調査や評価担当者――などをあげている。

 博士号取得者は、1990年代から始まった文部科学省の大学院重点化政策
により、10年前に比べて倍増。2003年3月の博士課程修了者は約1万4
500人いるが、博士が就職を希望する大学教員や公的機関の研究者の採用枠
は、ほとんど増えていない。このため、就職率も54・4%と10年間で10
ポイント低下し、慢性的な博士余り状態が続いている。