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全国で賃金不払い時間外労働の実態を明らかにし、 文部科学省に予算措置を要求する大運動を 広島大学の教職員組合が、賃金不払い時間労働に関して、広島大学を労働基準監督署に告発しました。法人化されてもう4か月がたとうとしており、賃金不払い時間外労働という違法な状態をこれ以上放置できないというこの取り組みは、重要な意味を持っています。しかし、賃金不払い時間外労働に対して、個々の大学の取り組みだけでは、不払い労働の責任を個々の大学に押しつけ、文部科学省の責任をあいまいにしてしまうおそれがあります。もちろん個々の大学職員組合の取り組みは重要ですが、全国の国立大学職員組合のナショナルセンターである全大教がこの運動を全国に広げ、法人化前からすでにあった、賃金不払い時間外労働の根本的解決を文部科学省に要求する運動を、特別の体制をとって取り組むよう呼び掛けます。 名大職組では昨日の中央執行委員会でこの問題を検討しました。この検討に対し私は以下の提案を行いました。執行委員会では運動の方向性については賛同を得られましたが、具体的な取り組みや文章の内容について十分な検討を行う時間がなく、さらに検討を深めることになりました。しかし、問題の重要性、緊急性、そして24、5日に全大教の大会が開かれることを考慮し、またこの課題を名大職組としても全国の組合員とともに検討するために、私の名前でこの高等教育フォーラムに投稿することにしました。全国の皆さんの検討をお願いします。 賃金不払い時間外労働の実態を明らかにし、 文部科学省に予算措置を要求しよう 広島大学教職員組合が、労働基準監督署に対し、時間外労働の賃金不払いを告発しました。全国の国立大学法人の職場も大なり小なり同じような情況にあると思われます。そのため、以下の観点から、全国の国立大学で、賃金不払い時間外労働の実態を調査し、各大学の労働組合が、大学当局と共同して文科省に予算措置を要求する取り組みを行うとともに、全大教として文部科学省に対し、不払い時間外労働賃金の支払いが、各国立大学で可能になるような予算措置を行うことを求めて申し入れを行い、その措置が行われないならば、全国でその実態を明らかにし、労働基準監督署に告発を行う運動を呼びかけます。 私たちの労働はサービスではない 時間外手当が支払われない時間外労働のことを、一般に「サービス残業」と言ったりしています。この言葉には、やらなくてもよいのに、または指示や命令もないのに、自主的に行っている時間外労働といった意味が含まれているような印象を受けます。そのために、手当が支払われなくてもやむを得ないという気分を生み出してはいないでしょうか。 賃金不払い時間外労働と呼ぼう しかし私たちは、時間内を含めて、いちいち指示を受けて仕事を行っているわけではありません。そういう場合もありますが、たいていは職務として決められて(命令されて)いる仕事とその範囲、分量を、期限や配分を考えながら遂行しています。その仕事は、本来時間内に終えることのできる分量でなくてはならないはずです。時間内に終わらない仕事を命令されているわけですから、時間外に行った仕事は、時間外労働として手当が支払われて当然なのです。時間外労働に対して割増賃金が支払われなければ、「サービス残業」ではなく、「賃金不払い時間外労働」と呼ぶべきでしょう。 違法を見逃すわけにはいかない 時間外労働に対して賃金が支払われなければ、明らかな違法行為であり、刑事罰の対象になります。労働基準監督署に告発し、実態が明らかになれば、大学当局は支払わざるを得ません。この違法行為の告発に組合が取り組めなければ、組合員の生活と権利を守る組合としての存在価値がなくなり、社会正義にも反することになります。 Aさんの時間外労働は、今年の4月から6月まで3か月で204時間ありました。それに対して支払われたのは、62時間でした。この差の142時間分の賃金を計算すると、449,998円でした。1年たてば自家用車が変えるほどの金額になります。それだけ私たちの「労働の価値」が奪われているのです。いわば窃盗行為ではあり、犯罪行為といっても過言ではありません。 心豊かな生活のために早く帰ろう この不払い賃金を支払わせることも重要ですが、それよりも、時間外労働をなくすこと、少なくすることが必要です。そのためには、まず、早く帰ると「ヒマだね」などと言われない雰囲気をつくることが大切です。それには私たち自身が早く帰る理由を持たなければなりません。家族と過ごす時間、趣味に、習い事に、教養に、文化に、私たちは時間が必要なのです。 無駄をなくし、権限を職員に 次には、仕事の見直しを行い、無駄な、不必要な仕事はないか、なくすことができる仕事はないか、考えましょう。権限が無いためにいちいち上司に伺いを立て、説明し、そのための資料を作成すると言った業務もなくすことが可能です。思い切って処理できる権限を可能な限り職員に与えれば、職員のやりがいにもつながるし、業務も効率的に処理できます。 労働の実態を記録しよう 大学当局、文部科学省に要求するには、まず私たちの労働の実態を記録することから始めましょう。法人化後、名大では超過勤務命令簿が変わり、書類上は命令がなくても実際行った時間外労働については超過勤務として扱うようになりました。しかし、多くの部局では、予算の範囲内で作成するよう説明がされ、その結果、実際の時間外労働の実態が公的な書類としては残らなくなってしまいました。事実と違う書類の作成をさせられて、これで賃金不払い時間外労働がなかったことにされてはたまったものではありません。 仕事を終える時に、卓上カレンダーの日付にその時間をメモしましょう。手帳でもかまいません。または、パソコンの電源を切る前に、自分宛にメールを送るのです。そして「帰宅時間」フォルダーをつくっておき、送られてきたメールを翌日の朝にそこに保存しておくと、そのフォルダーの一覧が帰宅時間一欄として見ることができますので、1か月に1回ハードコピーをとればよいのです。そのデータを集め、職員の労働の実態と支払われた時間外手当の比較表を作成し、当局に突きつけるのです。 個々の大学内の問題に矮小化されないように 実態が明らかになれば、大学当局は、それに応じて手当を支払わざるを得ないでしょう。その結果について考慮しておく必要があります。元々予算がないわけですから、運営費交付金の中から支払うことになります。予算を担当する事務職員にとって、時間外手当の予算を捻出する必要に迫られ、圧迫された予算の中で、いっそうの経費節減を強いられます。あるいは、契約・パート職員の削減という方向に進むかもしれません。大学当局は、時間外労働の実態を調査するでしょうが、むしろ時間外労働をやめさせたり、あるいはやめたことにするため、あの手この手を使ってくることが考えられます。個々の大学だけでの告発は、かえって大学内に問題を矮小化し、文科省の責任を不問にしてしまうおそれがあります。 不払いの責任は政府に 文科省は、「国立大学法人が賃金不払いで告発される例は聞いたことがない」などとコメントしています。文科省が賃金不払いの実態を知らなかったというのでしょうか。少なくとも、大学では時間外労働をいくら行っても、予算の範囲内でしか超勤手当が支払われてこなかったことは、当局も知っていたはずです。それが、法人化の時点で労基法が適用され、賃金不払い労働という違法行為が発生することは明らかでした。大学当局がそのための予算を文科省に要求してこなかったのか、文科省が知っていて知らんぷりを決め込んでいるのかのいずれかです。 賃金不払い時間外労働については、定員削減の中で、時間外労働が増えているにもかかわらず、労働基準法の適用外であることをいいことに、予算を増やす努力を怠り、不払いを続けてきた大学当局に責任があります。しかし、そもそもは文部科学省、財務省、つまり政府の責任です。法人化後ではますます大学当局の責任ははっきりしますが、運営費交付金を増やさない限り自分の首を絞めるようなものです。ですから、目を文部科学省、財務省に向け、全国的な規模で、世論にも訴えながら運動を起こす必要があります。 各大学で取り組みつつ、全国の運動へ 賃金不払い時間外労働の実態をもとに、まず各大学で学長交渉を行い、当局に時間外労働の実態を調査させ、実際行った時間外労働の手当の支払いを要求するとともに、時間外労働をなくすための業務改善を求めましょう。そして大学としても文科省に対し、予算措置を要求するよう、職場から、部局から声を出していきましょう。 そして、全国に運動を広げ、全大教として、全国の実態を集め、この実態を世論にも訴えて、社会問題にしていきながら、文部科学省と財務省に改善を求める大運動を起こそうではありませんか。 ********************************************** 戸 田 貞 一 Toda Teiichi 名古屋大学職員組合中央執行委員 名古屋大学医学部附属病院医療経営管理部情報管理室 情報システム管理チーム 医学部管理課専門職員 TEL.052-744-2861 FAX.052-744-2881 e-mail:t5313050@post.jimu.nagoya-u.ac.jp ********************************************** |