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難しい立場の研究者 株保有公開など指針に


共同通信ニュース速報

 大学の研究成果を土台にしたベンチャーの製薬会社「アンジェス
MG」(大阪府豊中市)が開発した遺伝子治療薬の臨床試験を担当
した大阪大教授らが、同社の未公開株を取得していた問題は、研究
の産学連携が奨励される一方、公正さを保つ対策が遅れ、研究者が
難しい立場に置かれる現状を浮き彫りにした。
 特に患者の人命にかかわる臨床試験で、製薬会社に都合のいい結
論を出すのではという疑念を持たれないよう、大阪大は担当する研
究者の株保有状況を公開するなどの指針作りを始めた。
 文部科学省によると、企業と研究者の関係に関する指針を、これ
までに国立大学法人20校が作った。こうした取り組みは、産学連
携を進める上でも重要性を増すことになりそうだ。
 日本はベンチャー育成が遅れ、大学には産業振興への貢献が求め
られる中、同社は森下竜一大阪大教授らが1999年に設立した。
2002年に大学発ベンチャーとして初めて東証マザーズに上場し、
注目された。
 ことし6月に、未公開株問題が表面化したが、同社は大学や国の
審査に加え、民間非営利団体(NPO)「日本臨床研究支援ユニッ
ト」(理事長・大橋靖雄東京大教授)の外部監査を導入。「今後の
見本になるようやってきた」(森下教授)と、公正さを強調する。
 このNPOは、所属する医師など専門家が02年6月から、臨床
試験の手順や症例などを検証。研究者の株保有状況も把握した。そ
の結果「臨床試験は公正だった」と評価した。
 大橋教授は「最先端研究で、開発側と臨床試験をする人が重なる
のはやむを得ない。また株保有による研究者の支援がなければ、ベ
ンチャーは成立しない」と認める。同社は学生らも株を持つ形でス
タート、株を保有していた研究者の1人は「アンジェスに支援を頼
まれて購入した」と話す。
 一方、大橋教授は「研究者は自分の研究に思い入れがあるため、
この治療以外に方法がない、と患者を誘導する危険性がある」とし
て、患者選定とインフォームドコンセント(十分な説明と同意)は、
第三者が行う必要があると指摘する。
 すでに指針を作った大学のうち、名古屋大は6月に、外部の専門
家も参加し企業との関係を協議する委員会を設置。(1)役職員が
企業と兼業、共同研究を実施する場合(2)企業から金銭や株式な
どの利益を得たり、物品を購入したりした場合−などは、研究者に
自己申告させて、問題があると判断した場合は勧告する。
 岩手大も、指針や委員会を整備したほか、企業と利害関係を持つ
場合に注意すべき点など、具体例を盛り込んだハンドブックを監査
法人と共同で作成した。
                           (了)
[2004-07-17-16:45]