トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


『科学新聞』2004年7月9日付

科研費応募資格を拡大
非常勤教員、名誉教授も可能に


 科学研究費補助金が変わる。応募資格を拡大し、非常勤の教員や名誉教授で
も応募できるようにする。また、17年度から4年間かけて、萌芽研究、若手研
究、特別研究員奨励費、学術創成研究費を文部科学省から日本学術振興会に移
管していく。残りの研究種目についても移管し、学振をNSFのようなリサー
チ・カウンシルに育成する。応募資格の拡大はこの秋の公募から適用される。

 科学技術・学術審議会の研究費部会(部会長=池端雪補・東京外国語大学長)
は科学研究費のあり方について(中間まとめ)をまとめた。競争的研究資金は
平成12年度から16年度までの4年間に約22%増えている。中でも科研費は約19
%増えており、政府の一般歳出が約1%削減され、競争的研究資金以外の科学
技術関係経費が約9%の伸びにとどまっていることを考えれば非常に重要だと
位置づけられている。

 そこで同部会は、応募資格の見直し、独立した配分機関体制の構築、研究種
目の構成(特に重複応募制限の見直し)、不正な行為の防止について、これま
での議論をまとめた。

 応募資格は、従来の機関指定は維持しつつ、4つの要件を明示した。指定さ
れた研究機関に、当該研究機関の研究活動を行うことを職務に含む者として、
所属する者であること(有給・無給、常勤・非常勤、フルタイム・パートタイ
ムの別を問わない。また、研究活動以外の者を主たる職務とする者も含む)。
当該研究機関の研究活動に実際に従事していること(研究の補助は除く)。科
研費が交付された場合に、その研究活動を当該研究機関の活動として行わせる
こと。科研費が交付された場合に、機関として補助金の管理を行うこと。

 これらの要件をすべて満たせば、科研費に応募できる。どの職員をこれらの
要件を満たす者として位置づけるかは各研究機関に任せられることになるため、
実際に研究をしている名誉教授や技術職員なども応募できるようになる。

 科研費の配分・審査事務の約半分は、日本学術振興会で行われている。報告
書では、学振を日本版リサーチ・カウンシルに育成するため、残り9つの研究
種目についても移管するよう求めている。まず、すでに学振で審査等の事務を
行っている、萌芽研究、若手研究、特別研究員奨励費、学術創成研究費は17年
度からおおむねね4年間で、順次学振へ移管を進めていく。特別推進研究、特
定領域研究、研究成果公開促進費、特定奨励費、特別研究促進費については、
4年計画終了までに移管計画を策定して移管していく。

 基盤研究Sと若手研究Aは同時に応募できない。毎年、科研費の重複応募制
限に抵触して200件ほどが審査される前にはじかれてしまう。研究種目が多く、
重複応募制限ルールが複雑だという意見もあるが、今回の報告書ではルールの
改正は行わないで、問い合わせ窓口の設置で対応することになった。

 不正行為の防止については、基本的には研究者自身のモラルや自覚を促した
いという記述にとどまった。これは、今年度から研究機関管理が徹底され、各
機関が10%を無作為抽出で内部監査する(科研費ハンドブック研究機関用)こ
とになっているなどの改革が進められており、逆にあまりにも硬直化したルー
ルやペナルティを課し過ぎると研究自体のアクティビティが低下する恐れがあ
るためだ。