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新首都圏ネットワーク

《7月12日 千葉大学全学討論集会の案内》

千葉大学崩壊の危機:どう立ち向かい、打開の道を踏み出すか

2004年7月5日 独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/9154/

千葉大学は今未曾有の危機にある。一つは財政危機。学科や専攻における通常の教育
研究活動を維持するための予算措置がなされず、当初から赤字で出発せざるを得ない
事態が続出することは必至である。だがより深刻なことは、危機に対峙し、事態を打
開する態勢が構築されていないことである。まず第1に、私達は情報を共有し、危機
を直視しつつ、危機の本質を分析しなければならない。第2に、危機打開への行動と
協力態勢を急速に強めなければならない。今、受動的姿勢に終始するならば、千葉大
学崩壊は現実のものとなろう。そこで、本センターは標記の全学討論集会への参加を
よびかける。同集会では併せて、すべての基礎となる情報公開・共有の方法、本セン
ターの今後についても検討する。

7月12日(月) 午後6時〜 法経学部2階第1会議室(文学部棟玄関横から案内
標識あり)

【財政危機:大学財政は崩壊寸前】

部局長連絡会議において平成16年度予算の部局等(以下「部局」)への配分が提示さ
れた。今年度の配分額は、教育研究評議会資料(以下「評議会資料」)の合計欄を見
ると一見昨年度より多いように見えるが、それは昨年度までは各部局に配分されてい
なかった「超過勤務手当」、「非常勤講師手当」等が含まれているためである。今年
度の予算事項は、昨年度までとかなり異なっているため、昨年度との正確な比較は難
しいが、いくつかの部局の試算結果を聞くと、おおよそ15%〜50%減のようである。
文部科学省は、「平成16年度は、基本的に平成15年度と同額を配分する」と述べてき
たにも拘わらず、学科配分が大幅に減ったのは何故か、ここでその構図を検討し、予
算配分に関する問題点と今後の検討課題等について考える。以下、各部局への配分が
減った理由を、「文部科学省から各大学への配分」と、「学内における各部局への配
分」に分けて分析する。

1.文部科学省から各大学への配分
(1) 教育研究基盤校費の学生数相当分および教員数相当分が、各大学への配分時に5
%強減額された。
これは、文科省が各大学への配分額の内の一定割合を留保し、公募方式による「特別
教育研究経費」の財源に充てたためと考えられる(6/11科学新聞,6/29共同通信配信
記事参照)。
(2) 「法定福利費」,「借入金償還額」,「非常勤講師経費」が運営費交付金として
全額措置されていないため、各大学への配分が実質減となった可能性がある。
評議会資料によれば、これらの合計額は43.3億円となっている。もしこれが全額措置
されているとすれば、「人件費」,「物件費」,「病院分」等に対する運営費交付金
の合計額は、182.1億円−43.3億円=138.8億円となり、少なすぎる(4/23「財務勉強
会」資料参照)。したがってこれらの経費は満額措置されているとは考え難い。

2.学内における各部局への配分
(1) 予算配分対象の「校費相当分」が、平成14,15年度と比較して15%強減額になっ
ていると考えられる。
部局長連絡会での説明によれば、「教育研究基盤校費」が1.87億円(「校費相当分」
の5.47%)減額された。これを基に今年度の「校費相当分」を算出すると(単位億
円)、
(従来の校費相当分41.5)−(減額分1.9)−(学長裁量経費4.4)−(重点経費1.5)≒34
(億円)
平成16年度の「校費相当分」を34億円とすれば、平成14,15年度に対する割合は約83
%となる。
(2) 各部局から拠出する「本部等経費」が、昨年度比約1.5倍となっている。
 教育研究評議会での説明によれば、これは調整費1.5億円を本部に留保するためで
あるが、昨年度の「本部等経費」との差から算出すると、昨年度より3.5億円程度の
増となっており、調整費以外にも“法人化に伴う恒常的経費”などが含まれている可
能性もある。これ以外の本部等経費の「校費相当分」に占める割合はほぼ昨年並みで
あるが、今年度の「事務局等経費」9.5億円は、「校費相当分」34億円の27.9%とな
る。
(3) 「学部長裁量経費」が新設され、「学科配分」が減額になっている。
 評議会資料によれば、「教育研究基盤校費相当分」+「教官研究旅費相当分」の5
%がこれに充てられている。これは各部局に配分される額の中から拠出することと
なっており、この意味で部局の中央経費と考えられ、その分、学科に配分できる額が
少なくなっている。

3.ある部局における学科配分の例 --- 平成15年度との比較
以上の結果、各部局における学科配分が減額となったが、ここである部局における学
科配分が、平成15年度(H15)と平成16年度でどのように変化するかの試算例をあげ
る。
H16物件費/H15物件費=96.1%  ;  H16本部等振替経費/H15本部等振替経費=
146.9%
(H16物件費−学部長裁量経費)/H15物件費=92.7%
(H16物件費−学部長裁量経費−本部等振替経費)/(H15物件費−本部等振替経費)
=86.8%
H16部局中央費/H15部局中央費=109.8% [建物改修費6.4%,施設等維持費3.9%増
を含む]
⇒ H16学科配分額/H15学科配分額 ≒ 60%
上の計算過程は、部局への配分額は昨年度に比べて僅かしか減っていない(3.9%)
ように見えるが、本部等への振替額が大幅に増加し、部局長裁量経費を部局中央に留
保し、建物・施設等の最低限の改修・更新を部局予算から捻出しなければならないた
めに、学科への配分額が大幅に減少する仕組を示している。ここでさらに具体的に、
いくつかの学科の予算がどのようになると予想されるかについての試算例をあげる。
A学科の例 : 配分額=743万円 ; 電子ジャーナル(J)負担金=1125万円,パート
費用=260万円
     ⇒ 743−(1125+260)=−642万円 i.e. 当初から642万円の赤字
B学科の例 : 配分額=572万円 ; 電子J・冊子体負担金=697万円,パート費用=
110万円
     ⇒ 572−(697+110)=−235万円  i.e. 当初から235万円の赤字
これらの例から分かるように、この部局では電子ジャーナル負担金やパート費用など
の必須の経費も支払うことができない(学部長裁量経費の全額をこれに充てても)。
学部教育のために必要な紙代・印刷代等が措置されない事態は、異常と言わざるをえ
ない。

4.私達は何をなすべきか
上で見たように、教育研究評議会で提示された予算案では、最低限の教育・研究さえ
行えない。他大学においても、学科配分予算が昨年度の6割,5割以下である例が相当
数あると聞く。もはや大学崩壊直前と言っても過言ではない。
(i)国立大学法人法成立時の附帯決議、並びに文科相国会答弁に基づけば、最低限、
平成15年度並の予算配分が各大学になされなければならない。大学崩壊が各地で起こ
ろうとしている現在、全国的運動の展開が緊急に求められている。具体的には、
・「共済組合負担金」,「借入金償還額」,「非常勤講師手当」等が全額措置されて
いない場合は、国立大学が連携して、文部科学省に要求する必要がある。また“法人
化に伴う経費”についても同様である。
・本年度の補正予算編成要求を行うことも必要である。
(ii)来年度概算要求2%シーリングを受け入れることは、大学崩壊を自ら選択するよ
うなものである。運営費交付金の裁量的経費扱を撤回させる運動を直ちに起こさねば
ならない。
(iii) 昨年末には辞令返上を決意した全国の学長諸氏に対して、大学存亡の危機が目
前に迫っている今こそ新国大協の力を総結集して、上記(i)(ii)の運動を展開するよ
う強く要請する必要がある。
(iv)部局内においても、部局間においても、“貧すれば鈍する”という状況になって
はならない。今こそ学内外の協力関係を強化し、情報を共有し、そして英知を結集し
て、互助の精神で事態に立ち向かうことが大切である。大学崩壊の危機にある現在、
「学長裁量経費」、「部局長裁量経費」は、現場の破綻を防止する緊急経費として透
明性の高い方法で効果的に活用されるべきであろう。

【組織運営の深刻な危機】

1.役員会
運営の中心と言われていた役員会の活動状況が系統的には公開されておらず、大学運
営方針の具体化がどのように進められているのか、不明である。役員会は少なくと
も、月1回は定例で、また別に月1回は打ち合わせ会が行われているようである。し
かしその開催も、議事の記録も公開されておらず、わずかに教育研究評議会での審議
にかかわる報告の中で、開催されたことが判明するだけである。しかも、事務局長で
もあった佐藤理事が7月1日をもって退任された。つい4ヶ月ほど前には、「学長・
理事が7月いっぱいで交代する事態では法人化後の体制整備が困難になる」として、
脱法的な学長の任期延長を決定したのに、これはどういうことなのであろうか。役員
会が十分に機能しているのか、疑問を感じざるを得ない。

2.教育研究評議会
月1回定例で開催され、予算配分や概算要求に関わっても報告が行われ、質疑討論も
行われていて、その審議に諮られる事項については、法人化以前と大きな相違は見ら
れない。ただ議題は「審議事項」と「報告事項」になっており、教育研究評議会の同
意を得なければならない事項はなにか、同意が得られない場合はどのように処置する
のか、依然として定かでない。

3.全学委員会
「法人化以前の委員会を整理し、簡素化を図る」ということで、全学委員会の全てが
停止(廃止?)されたままである。新たな委員会体制は法人化後既に3ヵ月を経過す
るのに提示されていない。“待ったなし”の業務である入試準備については「入試委
員長連絡会」が、教務については「教務委員長連絡会」が、さすがに開かれたが、こ
れらは暫定的な委員会であるといわれている。普遍教育についても今後作られる学部
教育委員会の下で議論されるという方向性が出されているに過ぎない。環境ISOに関
する委員会がもたれるなどしているものの、委員会の全体的配置がどのようになるの
かは依然として不明であり、大学業務が全学で支えられる体制になっていない。

4.全学を覆う“指示待ち”の受動的姿勢
日常業務は、各部局が旧来の延長で処理しているが、今後対処せざるを得ないと予想
される問題については、何の方針も提起されていないのが現実である。表面的には、
法人化以前とあまり変わらない大学運営と業務が進行しているように見えるが、今後
に発生すると予想される事態への対応がなされていない、方針も示されていない、と
いう点では、むしろ深刻な危機にあると思われる。