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放漫経営の財団、学会側は資金管理チェックせず 読売新聞ニュース速報 学会からの約16億円の「預かり金」を流用していた文部科学省所管の財団法 人「日本学会事務センター」(東京・本駒込)。教育や研究の傍ら学会活動に も力を注ぐ大学教授らから事務を請け負い、30年以上にわたり学術界を支え てきた。“老舗”の財団は、なぜ「最悪の財務状態」に落ち込んだのか――。 その背景には、公益法人の信用に寄りかかり合理化を怠った経営陣と、資金管 理に無頓着な学術界とのなれ合いが指摘されている。 ■信用■ 東大の学界人脈の後ろ盾で1971年に発足した同財団には、日本の主流学会 の多くが名を連ねる。 財団はここ数年、世界中の研究者が集まる国際会議の開催も、年10回以上請 け負ってきた。一流ホテルの国際会議場を手配したり、イベント業者に企画を 発注したり……。「教授らの信用を得て、多額の資金を動かしてきたが、それ も公益法人の顔でできたこと」と財団関係者は語る。 「経営難」が初めて学会側に伝えられたのは、先月25日。東京大学に関連す る「学士会分館」(文京区)に財団理事と有力教授らで作る評議員会のメンバ ーが集合。「預かり金」を管理費などに流用し、すでに現金などが枯渇してい る状況などが報告された。 「そんなにひどかったのか」。席上、評議員からは驚きの声が相次いだ。 ■解任騒動■ 財団には理事15人がいるが、常勤は2人。他は名前だけの大学教授や名誉教 授などだ。 昨年6月、長年にわたって経営の中心的存在だった常務理事が「暴行事件を起 こした」として解任された。財団によると、事件は、酒に酔って関連業者と口 論、殴り倒したというものだが、経営面でも様々な問題が持ち上がっていた。 財団は90年、学会から業務として請け負う機関誌の発行事業に絡み、機関誌 をこん包して発送する子会社を設立したが、同社でも、財団から出向していた 幹部の「着服」が昨年3月、発覚。幹部は5700万円を使い込んで解職され、 財団は文科省から「監督不足」と注意を受けた。その会社自体にも運転資金と して数億円を貸し付けたが、大半が焦げついた。 特定の業者と20年以上、随意契約を結び続けるなど、「公益法人としては望 ましくない契約状況」(財団幹部)もあった。経営の悪化や不況にもかかわら ず、人件費は上がり続けており、こうした放漫経営が、学会からの「預かり金」 を取り崩す背景になっている。 ■評判■ 「もうけ第一の民間より、公益法人のほうが安心」。美術史学会の事務局担当 者は、財団への委託理由をそう語った。学会は研究者の集まりだけに、事務作 業にはなかなか手が回らない。アルバイトを雇う余裕のない小さな学会ほど、 財団は「必要な組織」となる。 一方で、学会側は財団経営に目を配ることは皆無だった。理事に名を連ねる東 大教授は、「運営は事務局に任せきりで、年に数回の理事会に出る程度だった。 先日の会で財務の悪化を初めて知った」と驚きを隠さない。生物系学会の名誉 教授は、「学者にとって、会計は苦手な分野。会費がどうなっているのか、機 関誌の印刷代が高いか安いか、関心を払う人はいなかった」と話している。 ◆綱紀緩み野放図に…2理事と一問一答◆ 財団の寺尾繁美専務理事、山口哲男常務理事との一問一答は次の通り。 ――学会の理解は得られるか 学会全部が一度に預かり金を保全しようと動けば、財団は破たんすることにな る。しかし、財団事務が滞れば、学会活動にも支障が出る。引き続き運営する ことが、学会の信頼にこたえることにもなると、十分説明したい。 ――再建策は? 職員の給与を大幅にカットし、家賃支出を抑えるため、借りていた東京・本郷 の事務所も閉じた。印刷会社など業者の選定は入札にしてコストを抑える。 ――なぜ、このような事態になったのか 30年の長い歴史の中で綱紀が緩み、人事も膠着(こうちゃく)して経営が野 放図になってしまった。預かり金は、プールされた会費を漫然と取り崩してき たもので、発足当初からの経理に問題があった。うみを出しきり、今後は立て 直しに努力したい。 [2004-07-03-03:11] |