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文科省所管の財団、学会の預かり金16億円流用


読売新聞ニュース速報

 様々な分野にわたる国内の300近い学会の会費管理などを行っている文部科
 学省所管の財団法人「日本学会事務センター」(東京都文京区、理事長・光岡
 知足東大名誉教授)が、各学会からの計約16億円に上る「預かり金」を事実
 上、無断流用していたことが2日、わかった。

 自社ビル建設に伴う借入金返済のため資金繰りが悪化したためで、今年3月期
 決算で6億円余りの債務超過に陥っていた。財団は2日、「経営破たんの恐れ
 が出てきた」と文科省に報告。破たんすれば学会活動に大きな支障が出るため、
 同省は経営陣に対し再建計画の履行を言い渡した。

 同財団には、日本国際政治学会、日本小児外科学会、日本ウイルス学会、日本
 心理臨床学会など約270学会(学会員計約38万人)が事務を委託。会費徴
 収、名簿管理のほか、機関誌の編集や送付、学術集会の開催も請け負っている。

 文科省に提出した事業報告書によると、ここ数年、事業収支の赤字が続き、今
 年3月期決算で初めて債務超過に。超過額は約6億1500万円に上る。

 財団は1992年、金融機関から10億円の融資を受けて、文京区本駒込に用
 地を購入、4階建てビルを建設した。この返済金だけで毎年4000万円に上
 るほか、関連会社に貸し付けた数億円が焦げ付き、資金繰りを悪化させたとい
 う。

 財団理事らは6月末、大学教授らが名を連ねる財団評議員との会合で「財務は
 最悪の状況」と報告した。

 一方、財団は毎年、学会から計約30億円を集金。同一口座にプールして、事
 務手数料や機関誌発行などの経費にあてていたほか、余剰金が出ると財団で預
 かる仕組みをつくっていた。

 この「預かり金」について、学会側では「現金のまま口座管理されている」と
 認識していたが、財団は、学会の承諾を得ないまま、本来、事業収益でまかな
 わなければならない管理費などに充当し、学会側には毎年、名目上の「残高」
 を報告していた。流用した額は今年3月期決算までに約16億4000万円に
 上った。
 財団幹部らは2日、文科省を訪れ、人件費の3割カットを柱とする再建計画書
 を提出した。流用問題についても、「同一口座で事業資金と混在して管理して
 いたため、漫然と使ってしまった」と報告。その「預かり金」も底をつき、金
 融機関に新規融資を依頼している現状を打ち明けた。こうした経営状況は、現
 在でも各学会には周知されていない。財団は近日中に説明会を開き、学会側に
 謝罪するとともに、「当面の業務には影響がない」として契約の続行を呼びか
 ける。

 ◆日本学会事務センター=学術書出版で知られる財団法人「東京大学出版会」
 から分かれ、1971年に設立された公益法人。大学紛争のあおりで、東大研
 究室などにあった多くの学会事務局が閉め出され、当時の学会重鎮らの後押し
 で誕生した。東京と大阪に事務所があり、理事15人、職員94人。有力教授
 ら35人で作る評議員会を設け、事業への助言を行う。河合隼雄・文化庁長官
 も、日本心理臨床学会を代表して評議員に加わっている。

[2004-07-03-03:07]