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新首都圏ネットワーク


『科学新聞』2004年6月11日付

特別教育研究研究費 算定方式明らかに

 国立大学法人や大学共同利用機関法人が運営費交付金を増額していくための
ルール「特別教育研究経費」の算定方式が明らかになった。運営費交付金算定
ルールの大枠は今年2月に決まったものの、各大学が特色あるプロジェクトを
進めたり、国際共同研究を行うなど、通常の運営費交付金では賄いきれない予
算をカバーするのが特別教育研究経費で、その詳細は明らかになっていなかっ
た。文部科学省は今月中に有識者で構成する委員会を立ち上げ、そこで各大学・
大学共同利用機関法人の計画を審査する。また研究関連については、科学技術・
学術審議会の学術分科会に設置する委員会が担当することになる。これによっ
て各大学もようやく本格的な大学経営ができるようになる。

運営費交付金をカバー
各大学概算要求へ本腰

 運営費交付金は、学部教育等標準運営費交付金、特定運営費交付金、附属病
院運営費交付金の3種類から成る。大学設置基準までの教育研究経費は最低限
確保した上で、毎年1%の効率化係数がかかるというのが、基本的な算定方式
だ。つまり、国としての最低基準は満たすが、それ以上のことは経営の効率化
で対処しなさいというのが基本的な姿勢だが、それだけでは各大学が独自色を
出すためのインセンティブが与えられない。そこで考えられたのが、特別教育
研究経費。

 しかし、この経費、2月時点では各大学はどういった計画をどうやって作り、
どこで審査するのかといったことが決まっていなかった。今回、17年度予算概
算要求を控え、ようやくその枠組みが決まった。

●4つの経費区分

 本紙の入手した資料によれば、教育改革、研究推進、拠点形成、連携融合事
業、特別支援事業の4つの経費区分があり、特別支援事業以外については複数
年度計画も認められる(6面に一覧表)。

 研究関係ではまず研究推進経費がある。大型基礎研究の推進や新たな研究分
野・領域への挑戦など、各国立大学法人における学術研究の推進を支援する。

 例えば、Bファクトリーやすばる望遠鏡など、大型基礎研究プロジェクトに
ついて支援する。毎年度、各研究プロジェクト毎に、進捗状況を学術分科会に
報告。なお必要な施設・設備の整備ついては施設整備費補助金で措置。

 また、新たな研究分野・領域への挑戦や幅広い分野の萌芽的研究を加速する
ための戦略的研究推進や大学間連携などについては、研究テーマの終了までに
必要な年限を認め、法人内での経費投入だけでは対応しきれない分について必
要な経費を支援する。戦略的研究推進では、例えば、A大学B研究センターが
新たな研究領域に挑戦するための運営費(人件費含む)や設備費(研究課題数
に応じた経費など)、C大学D研究所の萌芽的研究の新たな展開を図るための
運営費や設備費が措置される。

●センター新設も

 大学間連携では、例えば、E大学共同利用機関法人において、機構化の特徴
を生かした新たな取り組み(大学共同利用機関間の融合・連携による新研究領
域の創出など)、F大学共同利用機関とG大学H研究所あるいはI大学J研究
所とK大学L研究所が連携して行う研究プロジェクト、複数大学による地震噴
火予知計画事業の推進などを支援する。

 中期計画期間中に時限付きの研究センターを新設するための経費も措置する。
例えば、M大学に時限3年の○○工学研究センターを新設する場合、教員5人
の人件費を含む研究活動費総額5千万円(17年度1千万円、18・19年度は2千
万円ずつ)が17年度要求で認められれば、翌年度以降は経費の査定のみで交付
金が措置される。

 拠点形成経費は、特定の法人が他の法人や国外の研究者等に対して、教育研
究環境を開放して行う大学全体の教育研究水準の向上に向けた事業(共同利用・
共同研究)を支援する。例えば、中期計画期間を超える研究期間7年、研究費
総額10億円の事業の場合、17年度に認められれば21年度までは経費査定のみだ
が、次の中期計画期間のはじまりである22年度以降については、21年度に評価
を行い、その結果を反映させるという。

●不足経費を負担

 連携融合事業経費は、国際機関を含む公共的団体と連携してコストシェアの
考え方に基づいて一定期間行なわれる教育研究事業などを支援する。

 例えば、米国N大学O研究センターと日本のP大学Q研究所の連携による○
○○解明プロジェクト(研究期間3年間、研究費総額3億円、経費負担は各大
学1億5千万円ずつ)の場合、大学法人が1億円拠出し不足分5千万円をこの
経費で負担する。また、R県○○環境保全対策事業にS大学T研究センターが
主体的に参画し社会的課題の解決に取り組む場合(研究期間5年間、研究費総
額1億5千万円、R県1億円、S大学5千万円)、大学法人として3千万円拠
出、不足分の2千万円を経費負担。

 今回、特別教育研究経費の内容が明らかになったことで、ようやく各大学も
来年度概算要求ができるようになった。今後、委員会が設置され、審査が行わ
れるわけだが、各大学がどれだけ独自色を出せるのかが大きなポイントとなる
だろう。