トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク



大学政策の抜本的な転換を強く求める
―国立大学法人の発足にあたって―

 この4月、国立大学は、教職員を非公務員とする国立大学法人とされて再出
発した。政府による運営費交付金の削減や中期計画・目標の数値化の押付けな
どに早くも現れているように、国立大学法人は基本的な教育研究を行なう財政
基盤を絶たれた上で、国策による統制下で「競争」を強いられることとなった。

 1998年の大学審議会答申に始まり、国立研究機関等の独立行政法人化、調査
検討会議への国大協の参加、財政誘導の「遠山プラン」、教特法に基づく大学
自治の法的保障を奪う「最終報告」、2003年7月の強行採決による国立大学法
人法の成立の経緯を見ると、財界の意向に沿った二つの流れ、即ち、公教育や
基礎研究への国家支出の削減という「行革」と、大学の教育・研究への国家的
管理・動員をはかろうとする「大学の構造改革」とが中心軸として貫かれてい
る。学問・研究の自由を保障する大学の自治への介入と権限剥奪、「評価」と
称しての介入・管理・財政制御等、様々な仕掛けが、国立大学法人法には導入
されているのである。

 こうした大学の変質は、国立大学にとどまらず、既に公立・私立大学に及び、
競争原理とトップダウンの運営に拍車がかけられる状況が現実のものとなって
いる。特に東京都立の4大学、横浜市立大学をはじめとする公立大学では、国
立大学法人化の過程と比較しても、常軌を逸していると言わざるを得ない程に
露骨で破壊的な行政の介入が行なわれている。

 本来、「知の世紀」といわれる21世紀においては、大学の創造的改革によっ
て、人類の普遍的価値である「学問の自由」と「教育への権利」の確立が求め
られているのである。それを通じて真理を探究し、知を継承・発展させて、人
類的課題の解決に寄与し、人類の利益や福祉に奉仕しようとすることは、大学
固有の社会的責任である。

 日本科学者会議は、この原点に立って、人々の期待に応え、科学に携わる者
の果たすべき役割を自覚し、真の大学の発展をめざしてこれまでに数多くの見
解を発表し、提言を行なってきた。

 「学問研究の自由を保障する大学自治の拡充」、「教育・研究環境の整備」、
「基礎研究の重視」や「調和のとれた多様性のある学問・研究の発展」のため
の大学改革こそがわが国に必要である。しかし、国立大学の法人化はこれに完
全に逆行する歴史的愚挙であり、国民の期待や国際的潮流に反するものである
事は既に明らかである。こうした法人化の道は早晩破綻を免れないものである。

 私たちは、大学政策の抜本的な転換を強く求め、各大学で、教育研究と大学
自治、教職員・学生の権利と地位を守り抜くよう全力を挙げることをここに表
明する。

2004年5月30日

日本科学者会議