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新首都圏ネットワーク


『読売新聞』宮城版 2004年6月8日付

私的な海外渡航の承認制度  東北大あわてて廃止

法人化で非公務員  労基法抵触の恐れ

 東北大が、労働基準法に抵触する可能性が大きいとして、教職員が私的に海
外へ渡航する場合でも事前に部局長の承認を必要としていた「私事渡航承認制
度」を二日付で廃止したことが七日、わかった。四月の法人化に伴って教職員
は非公務員となっており、その時点で廃止は可能だったが、教職員から指摘を
受けるまで継続していた。同大国際交流課では「危機管理の一環として、テロ
や重症急性呼吸器症候群(SARS)のような不測の事態が起きた場合に教職
員がどこにいるか把握しておきたかった」と説明している。

 文部科学省人事課によると、四月一日に独立法人化する以前には、同大は文
部科学省内の一機関で教職員は国家公務員だったため、一九九一年十二月の文
部事務次官(現、文部科学事務次官)通知に基づき、私的な海外渡航でも事前
承認が必要だった。しかし、大学の独立法人化に伴って教職員は非公務員となっ
ており、通知の対象から外れていた。

 東北大などによると、同大は四月一日付で各学部の事務長あてに、教職員は
私的な渡航であっても、各部局長の承認が必要との通知を流した。ところが、
通知後、教職員から「法人化により非公務員になったため、私事渡航承認制度
は労働基準法に抵触する恐れがある」との指摘が数件、大学側に寄せられ、大
学側が弁護士と相談。弁護士も「労働基準法に抵触する可能性が大きい」と回
答したため、承認制度を廃止することになった。

 同大では今月二日、国際交流課長名の文書で、各学部の事務長あてに承認制
度の廃止を通知。文書には「当方の調査不足で多大なご迷惑をおかけしたこと
を深くおわび申し上げます」と謝罪の言葉も添えられたという。