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新首都圏ネットワーク


『朝日新聞』岩手版 2004年4月17日付

[チェンジ――岩手大法人化]

(3)評価

 3月8日、岩手大は、東北にも拠点を持つ電子部品メーカーのアルプス電気
(片岡政隆社長)と、包括的な研究連携の協定を結んだ。同社とはこれまで、
工学部の森邦夫学部長が、プラスチックと金属を結びつける技術など、個別の
研究で協力していたが、今後は学内の技術全体が、提携対象になる。斎藤徳美
副学長は「旧帝大以外の地方国立大が、企業と包括提携を結ぶのは珍しい」と、
胸を張る。

 「技術が地域に使われ、大学の評価が高まる。経営面でも外部資金が入り、
需要ができ、研究面でもプラスになる」。平山健一学長は提携の意義を、そう
説明する。

 同大の、地域企業や行政、民間団体との連携ぶりには定評があった。

 83年〜01年の集計だと、企業との提携数は、地方の国立大の中では、山
口大に次ぐ593件にのぼった。

 環境問題や産業活性化について、自治体と共同研究をするため、岩手大は盛
岡市など県内7市と、相互友好協力を結んでいる。03年には、金型技術研究
センターの北上サテライト施設を、北上市が1億4千万円負担して同大に寄付。
同大は、その見返りに北上の企業に技術指導をしている。

 優れた地域への貢献をしている大学が対象になる、文科省の知的財産本部整
備事業の対象にも、同大は選ばれた。東北地方で選ばれたのは、あとは東北大
だけだ。

 法人化で、地域との連携の成否は、教員の評価にも、より直結するようになっ
た。

 ただ、今のところ岩手大の取り組みは、企業との共同研究など、主に工、農
学部の貢献が目立ち、外部資金獲得への期待も、もっぱらこの2学部にかかっ
ている形だ。

 こんな現状に、文系学部の教授の一人は「市民運動の先頭に立つのも、十分
社会貢献だ。企業などとの公的な仕事だけを、評価対象にしないでほしい」と、
不満顔だ。

 「外部資金の調達に直接結びつかない、教職員の仕事や活動が切り捨てられ
ることはないのか」と、危ぶむ教授もいる。

 評価を担当している斎藤副学長は、こうした懸念に「講演でも、審議会の委
員でもいい。文系(学部)でも、いくらでも評価の対象になる貢献分野はある」
という。

 だが、評価のあり方自体を危ぶむ声もある。別の教授は「評価制度の透明性
や客観性。評価に対する反論権の担保も必要だ」と指摘する。

 これまでもっぱら、論文や学会での業績などで評価されて来た大学の教職員
が、大学法人化で、それ以外の要素での評価を、迫られ始めた。だが、その評
価の基準は定まっていない。暗中模索は、続く。

外部資金

 岩手大の04年度予算120億9千万円のうち、72億円は国からの運営費
交付金。ほかは授業料と外部資金。交付金は毎年1%ずつ減らされるので、外
部資金の調達をどう拡大するかが、今後の大学運営の鍵になる。