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大学の新設―ウソを見破るには


朝日新聞ニュース速報

 でたらめな申請で開設認可を受けた東北文化学園大学(仙台市)が、存続でき
 るかどうかの瀬戸際にある。

 経営する学校法人が約200億円の負債を抱えていることがわかった。文部科
 学省は私学補助金5億7000万円の返還を命じ、仙台市も補助金9億円の返
 還を求めることを決めた。学校法人の資金繰りはさらに厳しくなるだろう。5
 月分の教職員給与は遅配になった。学生が前納した9月までの授業料も借金の
 返済に回された可能性がある。

 他の学校法人に経営譲渡されれば存続も可能だが、引き受け手を見つけるのは
 容易ではあるまい。私立大学協会などの関係団体は廃校などの事態も視野に入
 れた善後策を考えておくべきだ。その際は、2300人の学生が勉強を続けら
 れることを優先してもらいたい。

 それにしても、多額の借金を抱えていた学校法人の大学設置申請が、なぜやす
 やすと認可されたのか。

 文科省の調査によると、借金を隠したウソの書類をつくっていたうえ、63億
 円余の寄付のうち、じつに54億円が借入金やリースの物品などを寄付に見せ
 かけたものだった。架空と見られる寄付は60件を超える。教育の場をつくる
 スタートがウソで塗り固められていたというのでは、話にもならない。

 文科省は宮城県警に告発する方針というが、同省自身の責任も免れまい。こう
 した事件を二度と起こさないような仕組みをつくる必要もある。

 これまでの審査は「善意」を前提にしてきた。しかしこれからは、不正な申請
 もありうるという立場で臨まなければならない。架空の財産かどうか見破るに
 は、設立認可後もしばらくは財産の移動を見守る必要があろう。信用調査機関
 に学校法人を調べさせるのも一法だ。

 若者の流出に悩む地方の自治体は大学への助成に積極的だ。東北文化学園大学
 は、仙台市のほかに、来春に薬学部を開設する予定の福島県郡山市からも14
 億円の補助金とキャンパス用地の無償貸与を受けることになっていた。

 こうした補助金や助成を目当てに「大学ビジネス」をもくろむ動きは今後も続
 きそうだ。文科省や自治体は脇を固めておいたほうがいい。

 今回の虚偽申請は、この春になってようやく明るみに出たが、それまで6年間
 も闇に埋もれていた。大学の財務データが公開されていなかったことが、発覚
 を遅らせたと言える。

 今国会で成立した私立学校法改正によって、学生ら利害関係者が申請すれば、
 収支計算書や貸借対照表などを閲覧できるようになった。だが、これでは閲覧
 できる人が限られる。

 どこの大学もホームページを持っている。補助金を受けている大学には、財務
 データをホームページで公開するよう義務づけてはどうか。納税者も利害関係
 者だからだ。多くの目に触れれば、不正の「抑止力」にもなるだろう。
[2004-06-01-00:15]