トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


『毎日新聞』山梨版 2004年5月29日付

山梨大、長野県岡谷市と連携 工業、保健、医療、教育の分野で協力 /山梨


 ◇半導体製造装置メーカー・東京エレクトロンとも

 山梨大学(甲府市武田4、吉田洋二学長)は28日、最高意思決定機関の
「教育研究評議会」を開き、長野県岡谷市(林新一郎市長)との連携案を承認
した。同大によると、国立大学法人が官学連携を行うのは全国初。また、半導
体製造装置メーカー大手の東京エレクトロン(東京都港区、佐藤潔社長)との
連携も決めた。同大は同市、同社と6月にもそれぞれ連携の協定を結ぶ予定。

 岡谷市は精密機械工業で知られる工業都市。最近は同市内に工場を持つ企業
が生産拠点を中国などに新たに設ける例が相次ぎ、下請けの中小企業を中心に
新技術を確立し、生き残りを図る動きが出ていた。

 市内の中小企業の活性化を目指す同市は02年11月、同大の研究内容を公
開するコーナーを市内に設置、同大と連携する動きを進めていた。同市は、同
大と企業との橋渡し役を務める。

 同大はこれまでの研究の蓄積を生かし、加工組立工業の分野で市内の中小企
業に具体的なノウハウを提供するほか、精密機械からソフトウエアやバイオ産
業など、別分野への転換についても具体的なアドバイスを行う。

 また、同大は市内の中小企業がどのような技術やノウハウを求めているかを
把握し、見付けるための研究につなげていく。連携範囲は工業にとどまらず、
保健や医療、教育の分野でも協力する。

 一方、東京エレクトロンは韮崎市に工場を持っていることなどから、同大と
の連携への動きが本格化。今後、学生のインターンシップ(職業体験)や、社
員の大学での再教育、教授陣の工場の視察などを行う。これまでは、企業と大
学の研究者同士が個人的に連携を深めていたが、組織レベルで提携すれば、同
大と同社とも幅広い視野に立って研究の流れをつかみ、研究の方向性や戦略を
決めることができる。

 伊藤洋・同大副学長は「国立大学の法人化も行われ、大学間の競争も激化し
ている。今回の産官学連携で、足元を固め、山梨大の存在意義を高めていきた
い」と話した。【宇都宮裕一】