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新首都圏ネットワーク


『河北新報』社説 2004年5月23日付

国立大中期目標/競い合って質の向上を


 4月に法人化された国立大89校の「中期目標・中期計画」がまとまった。
本年度から2009年度までの、各大学の運営や教育、研究に関する基本方針
で、国民に対するいわば公約。私立大や、今後法人化が予定されている公立大
を含めて、大学同士が競い合い、質の向上につながることを期待したい。

 国立大法人化は、大学の自主性を拡大し、個性豊かで魅力ある大学づくりを
進めるのが狙い。大学の裁量権が増す一方、財政基盤の強化や社会貢献などに
向けて、大学自身の改革や努力も一層求められることになる。

 法人化に伴う義務付けは、教育、研究の向上や業務運営の改善などの中期目
標と、目標達成のための具体策を示す中期計画の策定。目標達成度や研究業績
の評価は、第三者機関の「国立大学法人評価委員会」などが行い、国からの運
営交付金の配分に反映させる仕組みだ。

 大学の使命は教育、研究に加えて、地域社会との連携や社会貢献にもある。
法人化で大学は、より社会に開かれた存在であることが求められ、市民も、大
学の持つ知的財産をもっと活用できるよう期待されている。

 実際に、大学がどのような目標を掲げ、具体的計画を立てているのかは、大
学関係者や学生だけでなく、一般市民にも深いかかわりがあると言える。

 文部科学省のホームページには、国立大の中期目標・中期計画の内容が大学
ごとに掲載されている。

 それを見ると、大学の伝統や理念の上に立った、さまざまな取り組みの姿勢
がうかがえる。

 東北大は、開放講座やインターネット教育の推進、学術情報のデータベース
化、テクニカルサポートセンター(仮称)の設立などをはじめ、非常に広範囲
な取り組みを盛り込んでいる。

 宮教大は、東北地区唯一の単科教育大としての責任を掲げ、教育課程の見直
しなどを示す。

 地域的課題に取り組む例も多い。岩手大は環境問題に関して、岩手・青森両
県にまたがる廃棄物不法投棄サイトの環境修復・再生事業の研究を挙げる。

 全体的には総花、抽象的な記述が目立ち、多様で特色のある大学づくりはま
だ先だ。秋田大や山形大など、数値目標や達成年度をかなり盛り込んだ大学も
あるが、全体では数値を示した計画は一部にとどまる。

 計画策定の時間的余裕がなかったことや、教育や研究が数値目標になじみに
くいこともある。しかし、目標・計画は、国に対してだけでなく、広く市民に
開示するものだ。

 大学は、市民も評価、判断できるような、具体的な内容を示していく努力を
もっとすべきだろう。そのためにはホームページなどで、市民に分かりやすい
形で知らせる工夫がほしい。