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新首都圏ネットワーク


『朝日新聞』2004年5月21日付

「知的財産のプロ」養成本腰 専門大学院、相次ぎ設立


 知的財産のプロを養成する大学院の設立が相次いでいる。東京工業大、京都
大、金沢工業大が設けたほか、来春の開設に向けて東京理科大、大阪工業大が
6月にも文部科学省に申請する。企業が知財戦略を強化するなか、専門知識を
備えた人材を求めるニーズが高まっている。各大学は昨年3月から設置可能に
なった専門職大学院で社会人を取り込もうとしており、法科大学院に並ぶ大学
の目玉にしたい考えだ。

 大学院に知財コースを置く各大学は、企業の知財部やベンチャー、大学の技
術移転機関(TLO)への人材輩出を目指す。知財関連の法律のほか、特許出
願や紛争処理の実務、経営学、ナノテクやバイオなど最先端技術について学ぶ。
教官には企業や特許庁からの実務経験者、弁理士を多くそろえ、修了者には修
士号を与える。

 元NEC知的財産部長で東工大エンジニアリング知的財産講座の京本直樹教
授は「特許出願に必要な法律知識だけでは足りなくなってきた。経営や最新の
技術についても幅広く学ぶ必要がある」と知財大学院の必要性を強調する。

 主に社会人の受講を期待しており、東工大はJR田町駅に近い田町キャンパ
ス(東京都港区)で週2回、午後からの集中講義をしている。金沢工大も虎ノ
門キャンパス(同)での夜間コースが中心で、今年4月に入学した45人のほ
とんどが企業に勤めているという。

 京大は、バイオ技術に特化しているのが特徴。医学研究科の中に置き、今春
に4人が入学した。製薬会社やバイオベンチャーを担う人材育成を目指すとい
う。

 国内で知財にかかわる人たちは、企業の知財担当者、弁理士など約5万人と
されるが、弁理士の数だけみても米国の3分の1しかいない。知財をめぐる企
業間の紛争は激化する傾向にあり、最近も特許侵害で富士通がサムスン電子の
子会社を、リコーが台湾企業をそれぞれ訴えた。他国の制度にも精通した人材
の育成が急務とされる。

 産業界でつくる日本知的財産協会の宗定勇専務理事は「知財の活用方法をグ
ローバルに考えられる人材が足りない。理論的、体系的に学ぶ必要があり、企
業内のOJT(実地訓練)では限界がある」と、専門大学院での教育に期待し
ている。