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読売新聞ニュース速報

 [国立大学]「中期目標・計画の修正も必要だ」


 スタートで早くも、差がついたようである。

 四月から法人化した全国の国立大学八十九校の中期目標・計画案が国立大学法
 人評価委員会で了承された。

 昨秋、各大学が提出した素案は「具体性に欠ける」と評価委員会の批判を受け
 た。了承された計画案は、新たに三十七大学が数値目標、三十二大学が達成期
 限を明示している。

 学生に求める学力水準の設定、地域に密着した教育プログラムの創設、科学研
 究費や特許の申請、出願目標数の明示など、内容は多岐にわたる。

 教育、研究面の目標を達成するため、全教員の個人評価、学長裁量による教員
 配置、有力研究者の特別処遇などを打ち出した大学もある。

 目指す大学像と、そこに至る道筋がかなり明確に示された。

 中期目標・計画は、各大学が今後六年間に実行する改革の青写真であると同時
 に、社会に対する公約でもある。目標、計画の達成に全力をあげてほしい。

 問題は、数値目標、達成時期を明示できなかった大学だ。そうした大学は計画
 の内容自体も総花的、抽象的で、改革の方向性を煮詰めていないことが多い。

 具体的な目標、計画を掲げると、到達できなかった時に、マイナスの業績評価
 を受ける。それを恐れたためと見られるケースも少なくない。

 目標、計画をあいまいに、あるいは低く設定したから評価が有利になる、とは
 限らない。評価システムの検討はこれからだが、世界的な基準に基づく到達度
 評価、各大学を比較する相対評価の要素が入ることも考えられる。

 大学の運営面の評価は毎年、実施される。各大学への毎年の運営費交付金も、
 来年度以降、先端的な教育、研究計画を重視することが、文部科学省、財務省
 の間で合意されている。

 「業績評価は六年後」と、のんびり構えている暇はない。明確なゴールを設定
 しないままでは、結局、自分で自分の首を絞めることになる。

 国立大学は確実に変わりつつあるが、前例踏襲の思考を抜け切っていない。

 各大学の役員報酬案について、評価委員会では、「外国人の大学経営のプロを
 スカウトするといった発想に欠ける」と厳しい批判があった。

 あいまいな青写真しか描けなかった大学は、発想の根本に「守り」の姿勢がな
 かったかどうかを見直し、計画の修正案提出も視野に入れるべきである。そう
 でないとスタート時についた大学間の差は、ますます広がっていく。

[2004-05-13-01:56]