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新首都圏ネットワーク


asahi.com 2004年5月11日付

国立大の中期目標・中期計画固まる、数値目標など追加も


 法人化した89の国立大学(二つの短大を含む)がこの先6年間の運営指針
とする中期目標・中期計画が固まり、11日、文部科学省から公表された。各
校の大学づくりの「マニフェスト」ともいえるもので、業績を評価する基準に
もなる。昨年10月に公表された素案には具体的な目標が少なかったが、各校
の修正の結果、何らかの「数値目標」を44校が、「達成時期」を43校が盛
り込んだ。

 「95%以上を目指す」。滋賀医科大は医師国家試験の合格率の数値目標を
示した。横浜国立大は法科大学院の学生の司法試験合格率の目標を70%程度
にすえた。具体的な数値は、各校の意気込みや覚悟の指標となる。

 ほとんどの大学は学生教育の充実を掲げた。評価の基準や方法をはっきりさ
せて成績管理を厳しくする大学が目立つ。筑波大の「筑波スタンダード」など、
複数の大学が学生に求める学力の水準を設定する。

 研究面では、重点テーマを掲げて大学全体での取り組みを目指す傾向が強い。
琉球大の「トロピカルバイオサイエンス」研究は、地域性を重視した特色づく
りの一つだ。石川県や金沢市と協力して「日本文化体験型」の教育プログラム
を実施する金沢大など、「地域との連携」を多くの大学が打ち出した。

 一橋大は「有力研究者の特別処遇制度の導入」を挙げた。山口大は特定の教
員を「研究特任教員」「研究主体教員」に選んで優遇する。半面、両者には
「高い水準での厳密な評価を行い、結果を公開することを義務づける」という。

 法人化に伴い、学長の権限を強めたトップダウン型への態勢見直しも目白押
しだ。東京大は、資金の配分や教員200人分の配置を学長の裁量で出来るよ
うにする。北海道大の「役員補佐制度」のように、学長や理事を支える組織を
つくる大学もある。

 法人の運営は、文科相が中期目標を策定し、中期計画を認可する仕組み。実
際には素案を各校が作り、国の国立大学法人評価委員会(野依良治委員長)が
求めた修正を各校が反映させたものが成案となる。評価委員会は、素案段階で
多くの大学が「教育や研究になじまない」と明示を避けた数値目標や達成時期
を、できるだけ盛り込むよう求めていた。

 11日に開かれた評価委員会で全校分が了承されて一連の手続きが終了、文
科相が近く策定・認可する。全校分が文科省のホームページに掲載される。

■具体的な目標の例

〈数値目標〉

・教育系卒業生の教員就職率を2009年度までに60%に(東京学芸大)

・全授業の2分の1以上を公開授業として地域住民に提供(高岡短大)

・特許取得を04年度は25件、6年間のうちに倍増(静岡大)

・地域との多様な連携を6年間に60件以上実施(東京農工大)

〈達成時期〉

・04年度から卒業生の大学に対する評価や卒業生に対する社会の評価を継続的に実施(秋田大)

・05年度までに全教員の個人評価を試行し、06年度から実施(名古屋工業大)

・大学院で05年度から学生の表彰制度を導入(北見工業大)