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『朝日新聞』2004年4月30日付 都の新大学 仏から「ノン」 知識人ら署名 外国文学専攻"廃止" 「異文化の軽視」 【パリ=沢村亙】 東京都が計画する首都大学東京で、廃止が予定されている現都立大学の仏文 学など外国文学の専攻課程の存続を求める署名を、フランスやベルギーの知識 人が始めた。著名な思想家や作家、元閣僚が署名に名を連ね、「多国の文化軽 視は批判的精神の衰退につながる」などと「人文軽視」に警鐘を鳴らしている。 署名を呼びかけたのは、作家・美術評論家で80年代に在日フランス大使館に 勤務したアラン・ジュフロア氏。フランスの代表的思想家の一人ジュリア・ク リステバ氏、同国の元国民教育相ジャック・ラング氏、ベルギーの新進作家ア メリー・ノートン氏らまず17人の署名を近く石原都知事に郵送する。 ジュフロア氏は、日本人留学生から廃止計画を聞いて「外国語や外国文化の 教育を制限する試みには、どの国でも、いかなる理由であっても反対の声を上 げねば」と思ったという。 評論家ルノー・エゴ氏は署名用紙に「日本は自らを開き、外海を愛すること で、島国にありがちな自閉への誘惑から逃れてきたはず」、父親が元外交官で 日本生まれのアメリー・ノートン氏は「外国に対する好奇心という美しい日本 の伝統を守り続けて」と書き添えた。日本は欧米文化を取り入れつつ、伝統と 融合させて文化を形成してきたとの見方が定着していただけに、一つの大学で の「廃止」計画とはいえ、驚きと戸惑いが入り交じったコメントが寄せられて いる。 都立大には英仏独中と国文学の文学・語学5専攻が設置されているが、新大学 では個別の専攻は置かず、都市教養学部の国際文化コースに統合。教員や学生 数の大幅な削減が計画されている。 |