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非常勤講師―こんな処遇ではいけない


朝日新聞ニュース速報

 大学ではいま、新入生が教養科目や基礎科目を受講し始めたところだ。学生た
 ちの目には、どの科目の先生も同じように見えるかもしれない。

 しかし、大学の先生は二つに分かれ、待遇に大きな格差がある。専任教員は月
 給が支払われ、個別の研究室と研究費が与えられる。一方で、非常勤の教員は
 講義に応じて賃金が支払われるだけで、研究室も研究費もない。

 非常勤の教員には、ほかの大学の教員や企業人など、別に仕事を持っている人
 もいる。しかし、ほかに仕事を持たず、大学で教えることを専業にしている非
 常勤講師の場合は深刻だ。

 彼らも研究者であり、業績の審査を受けて教壇に立つ。専任教員と同じように
 学生に教え、試験をして採点する。

 首都圏や関西の非常勤講師組合の調査によると、1コマ、90分の講義を受け
 持って、平均賃金は年30回で計約30万円。年齢は平均で42歳だ。講義の
 準備や試験の採点にかかる時間を考えれば、学生の家庭教師並みの時給である。

 専任教員並みに5コマの講義を担当しても、年収は150万円ほどにしかなら
 ない。講義のための本代や学会に出席する費用は自己負担だ。契約は1年ごと
 で、専任教員になれる保証もない。

 文部科学省の調査によると、専業の非常勤講師は全国で延べ約6万7000人
 にのぼる。いくつかの大学を掛け持ちしている人が多いので実数は2万数千人
 と見られるが、こうしたパートタイム教員が科目の3〜4割を担当しているの
 が日本の大学の現実である。

 非常勤講師がこんなに増えたのは、大学が人件費を抑えようとしたからだ。学
 生が増え、大学で教える科目が多くなったにもかかわらず、専任教員をそれほ
 ど増やさなかった。

 大学院を修了した人たちが増え、教員予備軍があふれていることにあぐらをか
 いてきたともいえる。

 文科省もさすがに放っておけなくなったのだろう。私立大学への助成で、非常
 勤講師の賃金の補助単価を今年度から5割引き上げた。この際、私立大学は補
 助金に自主財源をもっと上乗せして、待遇を改善すべきだ。

 文科省は国立大学に対しても「4月の法人化後、非常勤講師はパートタイム労
 働法の適用を受けることになる」と通知した。法人化で教職員は公務員でなく
 なり、一般の労働法の適用を受ける。国立大学も専任教員の待遇とのバランス
 を考えなければならないというわけだ。各大学はこの通知を重んじてほしい。

 いまや多彩なカリキュラムを組むには非常勤講師は欠かせない存在となってい
 る。だからこそ、研究と教育への意欲を持てるように処遇することが、学生た
 ちのためにも必要である。

 大学が自らこの問題に取り組まなければ、大学の自治や学問の自由の理念が泣
 くだろう。非常勤講師の問題をいつまでも大学の恥部にしていてはいけない。
[2004-04-28-00:15]