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新首都圏ネットワーク


『毎日新聞』栃木版 2004年4月28日付

[新教育の森]宇都宮大、今年度から国立大学法人へ 社会に窓、広く開放

 ◇魅力や個性アピール――来月から連続で記念事業

 宇都宮大学(田原博人学長)は、今年度から「社会に開かれた大学」への取
り組みを強化する。今月1日から国立大学法人へ移行したことに伴う魅力ある
大学づくりの第一弾だ。今後、教職員や学生が一体となり「知的文化の拠点」
としての役割を果たすと同時に、社会貢献の活動も積極的に展開していくとい
う。地域社会や国際社会に窓を広く開放する目的で、5月から連続で記念事業
を実施し、大学の魅力や個性をアピールする。【熊谷洋】

 記念事業は主に、同大峰キャンパスで多くの芸術作品を野外展示する「アー
ト・プロムナード・イン・宇都宮大学」▽ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌
俊さんの講演会とパネルディスカッション▽世界遺産と国際学術交流がテーマ
のシンポジウム――の3本立て。趣向の異なる催しが7月まで毎月開かれる。

 この事業へ取り組む発端は、4月1日からの国立大学法人への移行だ。全国
89の国立大学はこれまで文部科学省の管轄下で、安定した教育環境が提供さ
れてきた一方、人事や予算、組織などで柔軟性に欠けるとの指摘もあった。国
立大学法人化で、大学独自の権限と責任に基づく運営が可能になった。

 「アメ」もあれば「ムチ」もある。国立大学法人は、学外者が参画する役員
会や経営協議会が義務付けられるのに加え、文科省が設置する国立大学法人評
価委員会の業績評価が、国の運営費交付金に反映される。もしも予算が削られ
ると、運営に支障を来すおそれがあり、教育や研究にも影響が出かねない。こ
のため、各大学は新たな「魅力づくり」に迫られている。

 宇都宮大はどうなのか。田原学長は「知の創造や伝承の場として、大学の役
割が変わるわけではない」と前置きした上で、「社会から強い支持が得られる
大学を目指したい。そのためには、社会貢献にさらに力を入れなければならな
い」と強調する。

 同大学はこれまでも公開講座や体験教室など、大学開放に向けた取り組みを
してきたが「もともと関心の高い人に(参加が)絞られる傾向があった」(同
大)。記念事業は、これまで参加していなかった地域の住民や学生にも気軽に
足を向けてもらおうという試みだ。身近な存在として実感してもらうとともに、
意見や感想などを受けて社会貢献の可能性を広げていくのが狙いだが、大学の
「魅力」にどうつなげていくか、注目される。

 《メモ》
 問い合わせは宇都宮大学総務課電話028・649・8649。

 (1)アート・プロムナード・イン・宇都宮大学 5月1〜9日の午前9時
半〜午後6時、同大峰キャンパス。彫刻家や造形作家の作品41点を野外に展
示してアートスペースを創出。町立粟野中、町立西方中、町立益子中、宇都宮
市の同大付属中の生徒らの作品も展示。

 (2)ギャラリートーク 5月2日午後1時〜同4時、同大峰キャンパス。
作家が、来訪者の質問に直接答える。大学生らが、中学生や高校生に芸術作品
の鑑賞を手ほどきするコーナーもある。

 (3)ワークショップ 5月5日の午前、午後の2回、同大教育学部彫刻教
室。焼き物彫刻「テラコッタ」の体験。県内の中学や高校の美術教師が指導。
小学生から参加可。

 (4)小柴昌俊さん講演会 6月21日午後2時〜同4時10分、県総合文
化センター。演題は「科学する楽しさ――ノーベル賞への軌跡」。パネルディ
スカッションには宇都宮高、宇都宮女子高、同大付属中の生徒も参加。申し込
みは往復はがきに氏名、住所、電話番号、職業を記入し〒321―8505 
宇都宮市峰町350 宇都宮大学総務課情報・企画広報係。締め切りは6月4
日(当日消印有効)。定員300人(応募多数の場合は抽選)。

(5)国際シンポジウム〜世界遺産と国際学術交流〜 7月9日(時間未定)、
同大学会館多目的ホール。国際交流協定締結校のハバナ大学(キューバ)、パ
ラツキー大学(チェコ)の教授らが来訪するほか、日光ユネスコ協会の幹部も
参加し、各地にある世界遺産の意義や課題、地域社会との関係を考える。世界
遺産のパネル展示も。