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新首都圏ネットワーク

秋田大学の裁量労働制について(3)

 いまだにすったもんだしています。組合ニュースの内容です。

裁量労働制に関する4/14人事課通知について
 4/14付けで、以下のような「本学教員に対する時間外労働について(通知)」が人事課
長から全教員に対して出されました。
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 このことについて、本学における時間外労働に係る取扱いは下記のとおりですのでお知
らせいたします。

1.大学教員について専門業務型裁量労働制を適用することとした場合には、所定時間と
 いう枠組みがなくなり、教授研究の業務全体について労使協定で定められた時間労働し
 たものとみなされるため、通常の所定時間外に会議を含む教授研究の業務に従事したと
 しても、その時間について逐一手当を支払うことはしない。
2.専門業務型裁量労働制が適用されない場合であっても、大学教員が大学に対して負う
 義務としての教授研究の業務は本来的に不定量的な性格を有し、しかもそのような義務
 と自発的な研究活動の区別が困難であること、教授研究業務の性格からして、労働時間
 の特定やその管理・把握も困難であること、労働時間管理の前提となる指揮監督関係も
 また不明確であることなど、厳格な労働時間管理とは相容れない要素が多々存在すると
 思料される。
  よって、従来、時間外労働手当の対象となっていた学位論文審査業務、入試業務等は
 別として、明白な時間外労働の命令がなされた場合を除き、割増賃金発生の対象とは成
 り得ない。
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みなさん、以上の文章をご覧になって、どのように感じたでしょうか。文章表現も随分
と居丈高で、命令口調であることに驚かれるでしょう。これは、法人化の姿を率直に表現
していると言えなくもありません。大学教員は、雇われ人であり、労務管理される対象だ
ということです。こちらからいろいろと議論をして、いいものを作っていこうという、対
等平等な立場ではなく、人事課によって管理され、命令され、通知される存在だというこ
とでしょう。
きわめて誤りの多い文書ではありますが、当然のことを書いている部分もあります。た
だ、正しいことであっても、それが、役員会名ではなく、人事課から通知されるというこ
と、解釈の仕方について議論が行われた様子もなく、通知が出されるところに、問題を感
じざるを得ません。多分に、過半数代表者・代議員の側との協定の場や、過半数代表者・
代議員の対案配布に対して、過敏に反応されているようにも思われます。
以下に、内容上の問題を挙げます。
1)1については、おおよそその通りです。代表者側からも、裁量労働制を取った場合に、
 時間外手当を支払えと要求したことはありません。ただ、みなし8時間なのですから、
 できるだけ、会議や授業など、拘束性の高い部分で8時間を超えることがないよう、部
 局長などを含め、努力する必要がある、ということは主張しています。
2)1について、誤っている点は、裁量労働制であっても、休日労働と、深夜労働に対して
 は時間外手当を支払わなければ労働基準法違反だということです。この部分は、教員の
 裁量とか自由といった問題ではありません。午後10時から翌朝5時までと、休日に働 
いた場合には、その分の賃金と割増分を支払わなくてはなりません。ただし、休日(週 
1日)については、事前に振り替えをして、他の日を休むことにすれば、みなし8時間 
の中に入りますので、その分の賃金と割増を払う必要はありません。
  国家公務員時代には、明確な残業命令がなければ、時間外手当が発生しませんでした
 が、法人化後は、明示の命令がなくても、黙認していればそれで足りるということです。
3)1について、確かに、始業時刻、終業時刻が教員の裁量に委ねられるわけですが、使用
 者側は、その時刻を把握することが、厚生労働省によって求められています。裁量労働
 制が長時間労働、過労死の温床になっていることへの批判に対応したものです。タイム
 カードの導入の是非が問題になっている大学もあります。タイムカードの導入などは、
 不適当だと考えますが、裁量労働になったから、使用者側に責任がなくなるわけではあ
 りません。長時間労働が蔓延しているようであれば、みなし時間を見直したり、増員す
 るなどの措置が必要なのです。
4)2について、大学教員の教授研究の業務は不定量的な性格だと決めつけていますが、少
 なくとも、授業、会議時間は拘束性が高く、定量的であり、自発的な研究活動との区別
 は当然容易です。今は、この定量的な部分がきわめて大きくなっていることを、ほとん
 どの教員は感じているでしょう。また、授業準備、論文指導、学生指導、研究の部分は
 確かに、不定量的な部分があるでしょうが、不定量であることと、8時間労働とは別に
 考えるべきです。不定量であっても、8時間に収まれば何も問題はないのですから。
5)2について、授業や会議時間等を除けば、厳格な労働時間管理が困難であることは確か
 でしょう。ただ、「明白な時間外労働の命令がなされた場合を除き、割増賃金発生の対
 象とは成り得ない。」と言い切ることができるのかどうか。これまで、大学教員は、労
 働時間管理を厳格にしない代わりに、時間外手当を請求しないという、紳士協定でやっ
 てきたのですから、この紳士協定を維持することを確認すべきであって、頭ごなしに
「成 り得ない」とすることは望ましくないと考えます。
6)1・2について、いずれも大学教員をすべて同じものとみなしている点で、疑問が残り
 ます。代表者・代議員側は、多くの教員にとって裁量労働制が適していることを認めて
 います。問題にしているのは、適しない教員がいるのではないか、特に医学部テクニカ
 ルセンターの助手には、適用すべきではないし、時間外労働があれば支払うべきだと主
 張しているのです。
7)1・2について、裁量労働制は必ず適用しなければならないものではありませんし、必
 ず大学教員全体に適用しなければならないものでもありません。新聞報道では、茨城大
 学も福島大学も当面導入しないようです。労働基準法の規定では、必要があれば、必要
 な部分に対して導入できるということですし、それは労使の対等な交渉によって協定が
 結ばれたときに可能なのです。人事課の通知などを見ていると、使用者側から一方的に
 押しつけようとしている印象がぬぐえません。
8)学位論文審査業務、入試業務等は、休日など、時間外に行われていたのであれば、時間
 外労働の割増賃金が支払われるということでしょうが、例えば、センター入試が土日に
 行われる場合、事前に休日を振り替えしまえば休日労働は発生しなくなります。このこ
 とを考えれば、入試業務等は、時間外手当よりもは、特別手当として支払うのが適当だ
 と考えます。


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佐藤修司(Shuji SATO)
秋田大学教育文化学部
010-8502
秋田市手形学園町1-1
ssato@ipc.akita-u.ac.jp
TEL/FAX 018-889-2541
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