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新首都圏ネットワーク


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Academia e-Network Letter No 99 (2004.04.21 Wed)
http://letter.ac-net.org/04/04/21-99.php
ログ http://letter.ac-net.org/log.php

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◆◆ 98号で紹介した署名の〆切は本日(4月21日)です。◆◆
 http://www.jca.apc.org/wsf_support/ngo_statement.html

━┫AcNet Letter 99 目次┣━━━━━━━━━ 2004.04.21 ━━━━

【1】都立大人文学部教授会から都大学管理本部長への公開書簡
http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/jinbun041904.html

【2】都立大の危機--- やさしいFAQ より

P-15 2004年4月14日に都立大総長と山口大学管理本部
長の会談が行われたそうですが,どんな話し合いだった
のですか? 最近の動向がよくわからなくって。

【3】『東京新聞』2004年4月20日付
特報 カリキュラム変更で競争力強化? 波紋広がる横浜市立大

【4】豊島耕一氏のコメント:「公選法」違反問題と憲法98条

【5】お便り紹介 Date: Tue, 20 Apr 2004 19:49:48 +0900
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読者の方からのお便り【5】の中で「なぜイラク人質問題が大
学問題と関係あると考えるのか」をもっと詳しく説明すべきで
はないか、という意見がありましたので、少し説明をしておき
ます。

大学教員は、大学に通う多くの若者の知識形成だけでなく精神
形成に、プラスの影響もマイナスも影響も与えると思いますが、
影響を与えないでいることはできません。もしも大学教員がマ
スメディアの意見を鵜呑みにして学生との雑談のときにでも言
及することが普通であれば、大学もまた、一部のマスメディア
と同様に、世論操作機構の一部として機能していることになり
ます。

旧国立大学関係者は、独立行政法人化への過程で、マスメディ
アが事実に反する報道したり(*)、重要なことを記事にしなかっ
たり、種々の方法で情報操作をすることを実体験しました。真
実を知ろうとする精神的習慣を学生に伝えることも使命として
いるわたしたちは、マスメディアの情報に距離を置いて接する
ことを種々の機会に伝えるべきであリ、それには、マスメディ
アが伝えないことを知る機会が少しでも増えることが必要では
ないか、という思いが、AcNet Letter発行をしている理由の一
つです。ついでながら、マスメディアの情報を眉唾で聞くこと
を習慣とする「メディアリテラシー」は、大学での教養教育の
必修科目とすべきようにも思います。マスメディアが情報操作
をした過去の例を取り上げることで、方法的懐疑の習慣を学生
が学ぶ良い機会ともなり、専門教育にも効果があるように思い
ます。(*) http://ac-net.org/dgh/99c13-yomiuri.html

この文脈で、今回のような、一部のマスメディアの目に余る暴
走を大学界が看過することは、教育の現場にマイナスの影響を
次第に与えることが懸念されますし、また、今回の問題は、日
本社会における言論の自由が劇的に劣化するクリティカルな様
相もありますので、取りあげています。

しかし、もう一つ、別の文脈もあります。高遠さん達が展開し
てきた活動は、創造性と普遍性に満ち満ちたものです。それに
対し政府や一部のメディアが展開しているネガティブキャンペー
ンは、創造性への鈍感さを端的に示すものであり、大学におけ
る研究・教育の諸活動を支えている創造性を劣化させつつある
最近の「大学改革」を推進している諸勢力の精神構造の特性と
深いつながりがあると思います。

また、教育の現場では、生徒や学生が自分自身で考え判断する
ように、と種々の工夫をするわけですが、こういったことを、
つまり自分自身で考え判断し行動することができる人たちを挙
国一致して圧迫するようなことが放置されるとすれば、今後、
教育ができるのだろうか、という懸念です。

以上が、高遠さんたちを圧迫する世論を煽動している政府高官
や一部のメディアについての意見を、AcNet Letter で取り上
げている主な理由です。(編集人)

━ AcNet Letter 99 【1】━━━━━━━━━━ 2004.04.21 ━━

都立大人文学部教授会から都大学管理本部長への公開書簡
http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/jinbun041904.html
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4月8日付大学管理本部長文書に関する見解

東京都大学管理本部長
山口一久殿

  2004年4月15日 東京都立大学人文学部教授会

大学管理本部長名による4月8日付文書が多くの重大な問題点を含
むことは、都立大学総長による9日付学内向け緊急通知でその概略
が示されたとおりである。しかし、上記本部長文書は、ようやく緒
に着いた協議の過程を著しく歪曲して伝え、3月23日の理事長予
定者も交えた4大学学長・総長会談から3月29日の第7回教学準
備委員会に至る大学側の努力を無に帰せしめるものと評さざるを得
ない。しかも、4月2日に総長名で送られた管理本部長宛意見書に
対して何の回答もないままに、逆に教職員に対しこのような文書を
一方的に送りつけるやり方は、大学との協議を拒否し続けてきたこ
れまでの姿勢と実質的に何ら変わるところがなく、到底受け入れら
れるものではない。それどころか、うわべで協議の形を装いながら、
結果においては巧妙に大学の意見を排除する点においてさらに悪質
であり、総長の呼びかけを受け現計画への疑念や異論にもかかわら
ず前向きの検討を行うことに同意した教職員に対する重大な信義違
反と言うべきである。総長をはじめ都立大学委員は、些少なりとも
大学問題に識見を有する者として、新大学を真に大学の名に値する
ものとするために意見を申し述べているのであり、たとえ管理本部
案を批判することがあったとしても、虚心に耳を傾け改善を図るこ
とこそ設置者に望まれる態度であろう。

以下、やや詳細にわたり疑義および反論を申し述べる。

1.4大学学長・総長懇談会(2004年3月23日)の内容について

まず第一に、都立大学総長の呼びかけで開催された4大学学長・総
長懇談会には、高橋理事長予定者も出席し都と大学の十分な協議が
必要である旨の発言を積極的に行ったと伝えられるにもかかわらず、
管理本部長のまとめにはこのことがまったく触れられていない点を
指摘すべきである。3月30日の総長メモにあるように、この懇談
会の主眼は、「2005年4月、新大学を開設すべく、大学の代表
たる総長・学長、大学管理本部長、学長予定者、理事長予定者によ
る十分な協議を行いつつ準備を進めること」の確認であった。本部
長による概要は、当日の発言のうち都合のよい部分を列挙したに過
ぎず、席上総長から出されたと伝えられる反論は故意に無視しなが
ら、ありもしない「意見の一致」を捏造するに等しい。とりわけ、
(3)の第3項に、「新大学への参加意思を示した人たちは、新大学
の基本的な枠組みを了解したうえで建設的に新大学の実現に取り組
むことを表明したのであり、文部科学省への申請段階で反対運動を
展開するということは許されない」とあるのは、意思確認書の許す
べからざる趣旨逸脱にほかならない。協議体制の設置に向け「重要
な前進があった」旨の総長の呼びかけに答え、最終的に意思確認書
を提出した教員は、認可申請そのものを故意に妨害する意思のない
ことを示したに過ぎず、新大学計画をよりよいものにするために必
要な批判を行う権利を放棄したわけではないことは、ぜひ強調して
おく必要があろう。

2.第7回教学準備委員会(2004年3月29日)関係事項

第7回委員会の議事及びその後の経過については、すでに4月2日
付都立大学総長意見書においても疑義が呈されているが、全体とし
て改めて指摘すべきは、相も変わらぬ恣意的な議事運営法である。
大学を代表する形で総長も参加して行われる「協議」なるものが、
このような形式だけの見せ掛けであり、実質を欠く空虚なものにと
どまるのならば、人文学部としてこれ以上いっさいの協力は差し控
えるべきと判断せざるを得ない。東京都は、これにより設置認可審
査上いかなる障害や混乱が生じようとも、その責任はひとえに自ら
の不法な準備体制にあることを知るべきである。

(1)の単位バンクに関しては、総長以下出席した委員の報告による
限り、部会長報告に対し異論が続出し、設置申請に向けて大幅な手
直しの必要なこと、拙速な導入を避け慎重に継続審議とすべきこと
などが合意されたのみであり、単位バンク推進のための「学長直轄
の独立組織」などという組織案を委員会として了承するどころか、
その審議さえ行われなかったとされる。それにもかかわらず、あた
かも合意を見たかのような記述を行うことは、およそ協議というも
ののあり方を無視した非民主的手続きであり、直ちに撤回を求める
ものである。なお、本部長文書には触れられていないが、単位バン
ク検討部会報告の問題点を指摘するなら、単位バンクなる制度自体、
その概念からして大学としての責任ある教育体制と矛盾し、現行案
のような形で導入を急げば無用の混乱を招くことは必至であろう。
とりわけ、審査のうえ全科目を例外なく単位バンクへの登録科目と
し、審査に通らない科目は開講を許可しないとされる点は、学問の
自由と大学の自治の根幹を揺るがす大きな問題を含んでいると判断
せざるを得ない。改めてこの新奇な制度の再考を強く求める所以で
ある。

(3)の学部等名称は、都市教養学部について強い異論が出され、む
しろ代案として選択肢に含まれていた総合教養学部を推す声が多かっ
たにもかかわらず、座長一任の結果、当初案通り都市教養学部に決
定とされたことが伝えられている(4月2日付総長意見書)。当日
議論に参加した総長は、これに強い違和感を覚える旨表明し、この
ような決定に至った合理的理由の説明を行うよう求めているが、こ
の要求はあまりに当然と言うべきである。すでに繰り返し指摘され
て来たように、新大学が「大都市における人間社会の理想像の追求」
を使命とするとしても、普遍性・基礎性を旨とすべき「教養」の概
念に安易に「都市」を冠することはあまりに偏頗な特殊性の接合で
あり、理念的整合性に基づくべき学部の名称としてはいかにも異様
なものであろう。

(5)の経済学コースの取り扱いに関しては、何よりもまず、定数問
題の未解決を原因とする調整の不調を以って直ちに経済学コースの
非設置を決定するごとき審議過程に深い疑念を呈さざるを得ない。
このようなこじれは、もっぱら昨年8月1日以降の東京都の上意下
達の強引さに由来するものであり、東京都は、予め現大学と公に十
分な協議を行い各構成員の納得を得ることなく設置準備を進めよう
とした点を深刻に反省すべである。無理な日程と頑なな強硬姿勢の
せいで十分な教員の同意を取りつけることが危ぶまれるや、就任承
諾書以前に法的根拠のない意思確認書を強要し、配置先、雇用・勤
務条件等不透明な状況のなかで不可能ともいえる決断を迫り、当然
の権利として保留を貫く者を切り捨てるというのは、まことにもっ
て横暴としか表現しようがない。

(6)の今後の進め方に関連し、現大学の構成員の意見をまったく聴
取することもなく学部長等予定者が一方的に指名され、これらの予
定者を柱として今後の検討体制を敷く旨が通告されたが、このよう
な進め方には大学設置準備手続きとして著しい瑕疵があると言わな
ければならない。2003年10月7日付都立大学総長声明、20
04年1月27日付の同評議会見解などに示されているとおり、都
立新大学の設置はいわゆる改組転換の方式に準ずると解すべきであ
るところから、関連諸法規などにより、現大学との十分な協議を要
請するものであることは言を待たない。したがって、今後は、現大
学の部局を代表する者の意見が今まで以上に尊重されることが肝要
であるとともに、新大学の学部長等予定者も現大学構成員の意見を
聴いたうえで初めて決定されるべきである。新公立大学法人の定款
がどのようなものになるにせよ、新大学においても大学の自治は絶
対に譲れない根幹の要件だからである。


3.法人化及び人事制度に関する事項

この項目は、経営準備室運営会議においてもまだ未検討の事項であ
り、これがどのような位置づけのもとに4月8日付本部長文書に掲
載されたかを改めて問いただす必要があろう。こうした重要な論点
について、あたかも既定事項であるかのように通達を行うことは、
明らかに現大学との協議をないがしろにするものである。また、そ
こで提示されている考え方には多くの錯誤や無理解があり、それが
実現すれば新大学の正常な発展が阻害されることも疑いを入れない。
いずれにせよ、上意下達の命令系統、教育研究等に関わる一方的業
績評価、採用・昇進等人事管理体制の類を見ない強化、大学を発展
させるべき本来の経営的視点とはまったく異質の、後ろ向きの予算
配分・人件費運用(任期制・年俸制等)など、このまま大学の自治
を圧し殺す制度的基盤が整えられるならば、新大学にいかなる未来
もないことはいくら強調してもし過ぎるということはない。大学管
理本部は、行政組織や営利企業とは根本的に異なる大学の特質に特
段の配慮を払い、経営準備室運営会議において、真摯に大学の意見
に耳を傾けつつ至急これらの問題を具体的に議論すべきである。


4.教学に関して質問の多かった事項

前項同様、この項目も、質問の主体が誰なのか、示された回答は誰
の責任において行われているのか、これはそもそも単なる叩き台な
のか、あるいはどこかでオーソライズされた既定方針なのか等、き
わめて曖昧であり、本来であればまともに議論の俎上に上せるには
及ばないとさえ判断される。しかしながら、本部長文書に取り上げ
られている以上これらは拘束力を持つ可能性があり、ここでは、う
ち一点につき疑念を述べる。

第1点の「オープンユニバーシティ等センター教員」に関し、「所
属の別により大学院における研究指導等を区別するものではない」
との方針は評価できるが、大学院担当のために「新たに定数を設け
ることは考えていない」とあるのは、現計画における学部・センター
の定数配置を固定するものであり、研究重視の大学院構想とはまっ
たく相容れない。とりわけ、現人文学部のように、大幅な定数減に
より高度な基礎研究の拠点として機能して来た実績の保持が危うく
なっている部局の場合、大学院の構想において相応の定数上の配慮
が払われなければ、研究・教育に壊滅的打撃を蒙る恐れが大きいこ
とは強調されるべきであろう。第7回教学準備委員会において学術
研究の重視が承認されたと伝えられているが、基礎研究に十分な資
源を配分することなくして研究重視の大学ができる道理はない。2
003年度大学評価・学位授与機構による評価を見ても分かるとお
り、人文学部大学院におけるこれまでの研究・教育の成果は、他の
有力大学に比して勝りこそすれ決して劣るものではないとすれば、
この文化的蓄積をあたら散逸せしめるのは、およそ首都東京の名を
汚す恥ずべき行いと断ずるほかはない。

以上

━ AcNet Letter 99 【2】━━━━━━━━━━ 2004.04.21 ━━

都立大の危機--- やさしいFAQ

P-15 2004年4月14日に都立大総長と山口大学管理本部 長の会談が
行われたそうですが,どんな話し合いだったのですか? 最近の動
向がよくわからなくって。
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ポーカス博士

都立大学・短期大学教職員組合からこの間の経過と、組合の見解
(4/19)(*1)に話し合いの様子がまとめられているが,最近さまざま
な文書が管理本部と大学の間を行き来していてよく分からない状態
だ。キャンパスでは新入生を迎えて一見平穏に見えるが,「首大構
想」は,目下時間が切迫して緊急事態になっている。まず3月から4
月にかけての動きを整理しよう。
(*1)http://www5.ocn.ne.jp/~union-mu/0419.pdf

2004年3月9日
(1)管理本部からの「恫喝書」が届く(別称「3・9恫喝書」)
http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/yamaguchi-nishizawa030904.html

2004年3月9日
(2)(1)に対しての評議会見解(3/9)
http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/hyougikai030904.html

2004年3月23日
(3)総長の呼びかけで、総長・学長、大学管理本部長、理事長予定者の懇談会開催

2004年3月29日
(4)第2回経営準備室運営会議開催(午前中)

2004年3月29日
(5)第7回教学準備委員会開催(午後)

2004年3月30日
(6)3/29総長声明<#3-29socho>(別称「3・30総長メモ」)配布

2004年4月2日
(7)「総長の意見と要望」公表:
http://www5.ocn.ne.jp/~union-mu/0406.pdf
(教学準備委員会座長 西澤潤一氏と大学管理本部長 山口一久氏に宛)

2004年4月6日
(8)管理本部,経済学COEグループを「首大」に設置することを断念すると発表。
(4/9読売,共同通信,日本経済)

2004年4月9日
(9)「各大学教職員の皆様へ」
第1ページ http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/yk-page1.html
第2〜5ページ http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/yk-page2-5.html
新学部長などの表:http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kubi-bucho.html
「新大学」の学部等の名称:
http://www.daigaku.metro.tokyo.jp/gakubumeishou.pdf
(大学管理本部長からの文書)(別称「4・9山口文書」)

2004年4月9日
(10)「全学教員のみなさんへ」
(緊急総長文書)http://www.shutoken-net.jp/web040409_3toritsudai.pdf
(別称「4・9総長緊急お知らせ」)

2004年4月12日
(11)「3・9恫喝書」,「4・9山口文書」に対する
都立大学・短期大学組合のコメント発表
http://www5.ocn.ne.jp/~union-mu/0412.pdf

2004年4月13日
(12)「3・9恫喝書」,「4・9山口文書」に対する4大学教員声明
呼びかけ人会声明発表
http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/yondaigaku041304.html

2004年4月14日
(13)「4・14総長・本部長会談」

2004年4月19日
(14)東京都立大学人文学部教授会「4月8日付大学管理本部長文書に
関する見解」(4/15)発表
http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok//jinbun041904.html

2004年4月19日
(15) 東京都立大学・短期大学による見解発表
http://www5.ocn.ne.jp/~union-mu/0419.pdf

これでわかるように,今回公表された「4・14総長・本部長会談」
は,「3・9 恫喝書」,「4・9山口文書」に関わる疑念を都立大総
長が直接,管理本部長に確かめるために行われた。組合文書のまと
めの部分だけを以下に引用する。

──────────────────────────────

第一に、管理本部長は「意見を聞き話し合いを行うことについては
否定しないが「協議」については合意はない」としました。これに
対して総長は、「開かれた協議を今後行うということでよいか」と
確認を求めたが明確な否定はなかったこと、現大学代表者である総
長・学長と話し合うということが協議であることを主張しました。
しかし本部長は「協議」についてはあくまで認めず、この点は物別
れに終わりました。しかし、総長から意見を聞き話し合うことは行
うとし、その際、新しい教学準備委員会に総長等を加えるか、総長・
学長懇談会で行うかは双方で検討することとなりました。

第二に、指名による新学部長予定者らで構成が予定されている新し
い教学準備委員会について、総長は現大学の学部・研究科等を代表
する人文学部長等のメンバーを加えるべきことを主張しました。本
部長は現大学の代表者との協議を行わないという原則は崩せないと
述べる一方で、総長の推薦については真摯に検討するとしました。

第三に、単位バンクについて総長は、学位設計委員会および科目登
録委員会の役割はともに教育課程編成そのものに関わるので、教授
会のもとにおくかなくすべきことを主張しました。

第四に、都市教養学部等の編成について総長は、学系・コースを学
科・専攻に改めるべきことを主張しました。

第五に、大学院部局化について本部長は、部局化については一度も
認めていないと述べる一方で、そのような方向をとる可能性につい
ても示唆しました。

第六に、暫定大学院人文科学研究科長予定者について本部長は、総
長に指名を求めました。これに対して総長は、指名は大学になじま
ないと主張するとともに、今回の学部長予定者の指名についても学
内で多くの疑義がでていることを述べました。

第七に、総長はこのままでは意思確認書を取り下げる等の動きが学
内に出てくる可能性があるが、これを総長として押さえることがで
きないことを指摘しました。最後に、4月16日または19日に再度総
長・学長懇談を行うことを本部長が提案、総長もこれを了承しまし
た。

------------------------------------------------------------------------

驚くべきことに,管理本部長は「協議については合意していない」,
「意見を聞いて話し合いはする」と述べたようだ。「協議」と「意
見を聞いて話し合いをする」というのは,管理本部では同じ意味で
はないようだ。つまりこうだ。総長さん,どうぞいつでもいらして
意見を述べて下さい。話し合いはしましょう。(でも最初から言っ
ているように,)改革だから現大学との対話や協議に基づく妥協は
しませんからね。「協議する」というと,管理本部の側で意見を変
えることがありうるように聞こえるから,そんな言葉は使いません
よ。

 総長が何と言おうと,評議会が何と言おうと,学生が何と言おう
と,そして都民が何と言おうと,管理本部は,自分達で思ったよう
に「首大」の設計をする。その根拠は,設置者権限(N-3)の拡大解
釈だ。
N-3: http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kiki-n.html#secchisha

「何をやっても許される,なぜなら,今構想しているのは,「新し
い大学」だからだ」という論理だが,初めから「改組転換大学」な
のを偽って「新しい大学」と主張するところからすべてがスタート
しているのだ。どんな抗議をしても,設置者権限だと,トランプの
ジョーカーを出す。いや,ジョーカーは枚数が1枚で一回づつ使わ
れるだけましだ。一度に何回でも使ってくるところは,水戸黄門の
印篭(いんろう)を盗用して,使い方を知らない悪人のようなもの
だ。前から繰り返し言っているように,こんなことを続けていたら,
現都立の4大学の教員や学生は,再び怒り心頭に発し何をするか分
からない。管理本部は,そういった事態に対して,もう覚悟ができ
ているのかな?

━ AcNet Letter 99 【3】━━━━━━━━━━ 2004.04.21 ━━

『東京新聞』2004年4月20日付
特報 カリキュラム変更で競争力強化? 波紋広がる横浜市立大

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抜粋

「来年度からの独立行政法人化に向けた横浜市立大学改革に、現場
の動揺が続いている。「科目などが減らされ、自分の専攻課程がな
くなる」と在学生間で不安が広がっているためだ。学部削減やカリ
キュラム変更の不透明さに不満も募る。「改革は実質的に中田宏市
長のトップダウンで、現場の声を反映していない」との批判が出る
なかで、改革が目指す「競争力のある大学」に生まれ変われるのか
−。(藤原正樹)」

「・・・・・同大改革は、全教員の任期・年俸制や複数学部の二学
部統合などで「教養教育の充実で、もっと社会から評価される大学」
を目指す。だが、改革内容に「大学の文化や学問の自由の危機」な
どと教職員らが反発。学生たちの間では、反発から辞める教員が続
出するのではと懸念が広がっている。」

「・・・・・この状況に、ある大手予備校は「先行き不透明な市大
への進学は勧められないと指導している」と冷淡だ。河合塾の滝紀
子西日本大学事業部長も「高校の進学指導教員も市大を積極的に勧
められないでいる。在学生の不安の方が大きいだろう」と分析する。

「・・・・・独立法人化に伴い大学運営を評価するため、今年三月
に発足した大学評価学会の運営委員で名古屋大学大学院の池内了教
授(天体物理学)は、こう危ぐする。「国立大法人化で幅広い視野
を持った学生を育てようと、基礎教養課程を拡大する動きがあるが、
市大の改革は逆行している。あの改革内容でリベラルアーツの看板
を掲げるのには疑問を感じる。就職に有利な教科を強化し、即戦力
の学生をつくるのが目的だ。これでは研究の質が落ちて“大学の格”
が下がる。市大から優秀な教員や学生がいなくなり、つぶれてしま
うのではないか」」

━ AcNet Letter 99 【4】━━━━━━━━━━ 2004.04.21 ━━

【4】豊島耕一氏のコメント:安倍自民幹事長の「公選法違反」について

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佐賀大学の豊島です.次のニュースについてのコメントです.

[he-forum 7013] 安倍自民幹事長の選挙はがきの推薦人に京大教授
=「公選法違反」と民主追及へ(時事、朝日04/04/19)

確かに中西輝政教授の行為は人事院規則一四 - 七[政治的行為]
の次の条項に違反しています.

5の一:規則一四 - 五に定める公選による公職の選挙において、
特定の候補者を支持し又はこれに反対すること。

6の一:政治的目的のために職名、職権又はその他の公私の影響力
を利用すること。

しかし,私はこの人事院規則自体のかなりの部分が違憲であり,憲
法98条(編集者註:「この憲法は、国の最高法規であって、その条
規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部
又は一部は、その効力を有しない」)により無効と思われます.こ
の件もそれに当てはまり,逆に人事院規則自体を問題にする素材と
して,あるいは憲法98条をupholdした例として利用,宣伝するのが
妥当かと思います.

詳しくは拙稿「国家公務員の政治活動の制限・禁止について」をご
覧いただければありがたく存じます.
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/UniversityIssues/PoliticalActivities.html

840-8502 佐賀市本庄町1
佐賀大学理工学部  豊島耕一
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp
職場電話/ファクス 0952-28-8845

━ AcNet Letter 99 【5】━━━━━━━━━━ 2004.04.21 ━━

お便り紹介 Date: Tue, 20 Apr 2004 19:49:48 +0900
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「・・・・・・ 先日のイラク人質問題に関するメールを記事
としてとりあげられたことに対し、何名かの方から批判的な意
見が寄せられたとの編集後記を読んで思ったことを書かせてい
ただきます。批判的意見の典型的な例としては

> 本メールマガジンはあくまで「国立大学法人化問題」のため
> のものであって、特定の政治活動を行なうためのものではな
> いはずです。

という意見を念頭においています。

私の意見ですが、発行人には「なぜイラク人質問題が大学問題
と関係あると考えるのか」を力説してほしい。手を替え、品を
替え、さまざまな形で、ひとりでも多くの大学関係者が納得す
るようにコメントを書き添えるべきではないでしょうか?失礼
ながら、もしかしたら「読者も両者の関係は分かっているはず、
分からないほうがおかしい」などと考えておられる面があるの
ではないかと邪推したくなる部分もあったものですから…。

私としては、イラクでの人質問題と、たとえば都立大学で起き
ているような問題には、根底に共通するものがあるように感じ
ていますが、しかし、そうは思わない人もいるだろうし、また
「両者に多少の関係はあるけれども切り離して考えるべきだ」
という人もいると思うのです。そのなかであえてイラクの問題
を記事にするからには、編集人は両者に関係があると考えてお
られるのだと思うのですが…しかしそれは決して自明の理だと
は言えないと思います。編集者がそう考える根拠を示す必要が
あるのではないか、と。

くり返しますが、私自身は、イラク問題と都立大学問題はいく
つかの点を共有しているように思っています。たとえば

*「お上に逆らう者は容赦なく切り捨てる」という姿勢が見えること
*「勧告を無視して痛い目にあうのは従わないほうが悪い」という論理
*「国のため」を「人のため」の上におく価値観

などなど。こういう共通点を挙げても「それはこじつけだ」と
感じる人もいるでしょうが、少なくとも、「みんな既に分かっ
ているはずだ」と決めてかかるよりは、編集者の思うところを
丁寧に説明されたほうが良い結果を生むと思うので
す。・・・・・・

追伸

人質解放を求める呼び掛けのなかに「子供たちが『日本のお母
さん』の到着を待っている」という趣旨の文もあったように思
うのですが…(いま見たら
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/297 に
該当する文があるようです)。この子供たちの行く末を、小泉総理
は何と考えているのか?ということが、私にはたいへん気になって
います。

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