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新首都圏ネットワーク


『北國新聞』社説 2004年4月19日付

富山の大学再編 人員削減先送りするな


 国立大の法人化という節目を経て、富大、富山医薬大、高岡短大の再編統合
協議が本格化しようとしている。三大学は本来なら今春の法人化に合わせた再
編統合を、協議が整わずに来年十月に遅らせたことを省みて、課題を一つひと
つ克服しなければならない。

 三大学が一つになるのだから簡単なことではないが、教員らの人員削減など
の改革を統合後に先延ばしする動きがあるのをみると、腰を据えた論議が行わ
れるのかどうか疑問である。再編統合の話し合いを遅らせる一因になった教員
の任期制についても依然、足並みはそろっていない。

 法人化によって、国立大の経営は国任せから大学に委ねられることになった
と言ってもいい。学外者を交えた経営協議会の設置が義務付けられたのもその
ためである。にもかかわらず、教員や職員の人員削減策、教員への任期制導入
で足並みがそろわないのでは、かなめが欠落した再編統合になりかねない。

 三大学の教員数(昨年五月現在)は富大が教授二百十七人、助教授百六十七
人、講師三十六人の計四百二十人、富山医薬大が教授七十一人、助教授七十二
人、講師五十人の計百九十三人、高岡短大が教授三十人、助教授十二人、講師
六人の計四十八人となっている。三大学で六百六十一人の教員を擁することに
なるが、統合する以上、現状のままというわけにいかないのは明らかである。

 三大学では教職員の定数について、方針は未定として「統合後に検討する」
としている。しかし、再編統合でどの学部を残し充実させ、どのような新しい
学科を作るのかによって必然的に教員数は定まってくる。それを統合後に検討
するということは、学部学科の再編についても、本腰を入れて議論されていく
のかどうか心もとない。

 国立大は法人化によって大競争時代に入った。各大学が知恵と汗を絞ってい
る中での再編統合には、学問の府としての存在感とともに和漢薬研究や日本海
学といった富山らしい研究分野が必要である。こうした体制を整えるためには、
新大学の土台を固めた上で明確な構想を描かねばならない。課題の先送りはま
た、土壇場での協議決裂を生みかねない。