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新首都圏ネットワーク


『産経新聞』主張 2004年3月30日付

【主張】国立大法人化 努力が評価される態勢を


 来月から国立大学が法人化される。大学の裁量が広がるとともに、教育や研
究の成果が厳しく評価される。生き残りをかけてしのぎを削る時代に入ったこ
とを、各大学は自覚すべきだ。

 国立大法人化の最大の特徴は、横並び意識が強かった国立大学に成果主義が
導入されることだ。

 これまでは、国から一定の予算を配分され、人件費や研究費などの使途を制
限されてきた。これが大学の自由な研究を抑制する一方、競争社会から隔絶さ
れたメ象牙の塔モの温床になっていた。しかし、これからは、運営交付金が一括
して支給され、大学の判断で自由に使えるようになる。

 ただし、各大学は六年間の中期目標・計画を設定し、達成状況を文部科学省
の国立大学法人評価委員会から評価される。そして、その評価により、その後
の運営交付金の額が決められる。評価が高ければ交付金は増え、低ければ減ら
される。納税者の立場から見れば、当然のことである。

 すでに、悪平等を排する成果主義の試みは一部で始まっている。優れた研究
拠点を選び、そこに予算を重点配分する「21世紀COE(センター・オブ・
エクセレンス)プログラム」だ。徳島大学は平成十五年度、五分野の研究が選
ばれ、十億円以上の研究費を獲得した。地方の国立大学も、「やればできる」
のである。

 教育面で工夫している大学もある。岩手大学は三年生のアンケートで一番良
かった授業を「ナンバーワン授業」に選び、その教員の公開講座を他の教員も
聴講できるようにした。弘前大学は「学生就職支援センター」を発足させ、地
元経済界との連携を深めようとしている。すべての国立大学が東大や京大など
旧帝大を目指す必要はない。地域の特色を生かし、知恵を絞ることが大切だ。

 昭和三十年代から四十年代にかけ次々と地方に設立された国立大学は、前身
の師範学校や高等農林などから総合大学を目指し、旧帝大並みの予算を要求し
た。この国立大学平準化運動が悪平等を招いた面も否定できない。

 法人化に伴い学長の権限が強化される。学長の強い指導力の下、努力する教
員や学生がより評価され、報われる学内の態勢づくりが必要である。