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秋田大学における裁量労働制についての状況です。


過半数代表者・代議員と当局との第3回相談会(1)−裁量労働制−
3/12、過半数代表者・代議員は、6人(位)と、新事務局長、総務部長、人事課長など、
6人(位)が出席しました。本道キャンパスについてだけの協定案でした。当局側が述べ
た点、認めた点は以下のようになっています。
○手形キャンパスで、工学資源、教育文化の教授会が15日行われ、裁量労働制について 
の結論が出されるため、本道と手形の案を同時に扱うことにする。それ故、来週の終わ 
りに検討して協定を結ぶことにしたい。
○代表者から出された点で、苦情の部分は訂正する。
○代表者から出された点で、同意制はとらない。大学教員は、教授、助教授、講師、助手
 すべて、主として研究に従事していると考えており、適用対象者は全員で、適用されな
 い者はいないと考えている。
○助手もすべて適用される。研究助手と、そうでない、事務的、技術的などの助手を分け
 て考えるつもりはない。研究に携わる助手になるというのが、教務職員から助手への昇
 格などに際しての部局からの説明・要求だったと理解している。
助手は授業を担当しないのであるから、「専ら」という文言をとりたてて入れる必要
 はない。教授、助教授等からの命令がある場合であっても、また、教授・助教授の授業
 補助、研究補助の場合であっても、それは「主として研究に従事する」の範疇に入って
 いる。裁量度があるかは問題にしない。
○大学教員に対しては、超過勤務(手当)の考えはなじまない。入試は別だが。
○代表者から出された「要望事項」は賛同しかねる。意見書として出してもらいたい。要
 望事項案の4)については、その通りだろう。

結局のところ、助手の扱いについては、最後まで平行線でした。代表者・代議員側から
は、研究上、業務上の裁量性を有しない者には裁量労働制は適しないし、命令されて残業
することが多い場合に、みなし8時間で、いくら働いても超過分の割増どころか、残業代
そのものが出ないことは問題である、とかなり強く主張しましたが、受け付けられません
でした。第1条は、普通に読めば、主として研究に従事しない大学教員がいるはずだと指
摘したのですが、全員に適用されるとして、譲りませんでした。当局側としては、裁量性
を実際に有しているかどうかは関係なく、教育・研究に関係していればすべて裁量労働制
だという考えのようです。
本来、裁量労働制は、研究主体の教員だけに適用されるものですから、研究時間が半分
以上になる者のみに適用されるはずのものでした。ところが、桜井議員(民主党)に対す
る小泉首相の答弁書で、さらにこの文言に解釈が加えられ「授業の時間が、週の所定労働
時間等のおおむね五割に満たない程度であることをいうもの」となった経緯があります。
その結果、大学教員全体に適用されるような解釈になってしまいました。授業準備、論文
指導、学生指導の時間、教授会等の各種会議の時間のように、明らかに拘束性の高い時間、
授業に密接に関連する時間がカウントされなくなってしまいました(カウントするという
解釈もあるようですが)。
教務職員から助手への昇格は、昇給の頭打ちで、きわめて不利な状況に置かれてきた教
務職員の待遇改善が一番の眼目でした(この点についての自覚・反省が当局側にはないよ
うです)。今回、ようやく実現したわけですが、裁量労働制になることで、超過勤務手当
もなくなり、さらに、今後に予測される成果主義賃金の「畏れ」にさらされることになり
ます。研究を主眼にしてやっている助手はいいでしょうが、そうでない場合にはどうする
のか。現在も、医学部ではテクニカルセンターの中に技術職員とともに位置づけられ、同
様の職務を行っています。その実態を見る必要があります。
 また、助手は、教授、助教授を助けると学校教育法で規定されているのですから、最初
から、裁量や自由の範囲が狭いと考えられるにもかかわらず、裁量労働制の適用でいいの
か。組合としては、各々の助手が、選択できるようにすべきだと考えています。
秋大ネットでお知らせした元々の案では、学部長、病院長が指定した者に適用するとさ
れていました。組合では、上からの指定ではなく同意制を取るべきだとの考えから、指定
に反対したわけですが、今回の人事課案では、指定も、同意も関係なく、最初から全員に
適用だというのですから、指定制よりも後退しています。従前の案では、医学部の基礎医
学講座、保健学科所属教員に限定が付されていますので、テクニカルセンターの助手は除
かれていると言えます(裁量労働制の適用を希望する助手は、講座に配置するなどの措置
を取ることも考えられます)。

専門型裁量労働制に関する労使協定書案(人事課案)
前文略
(適用対象者)
第1条 本協定による裁量労働制の適用対象者は、国立大学法人秋田大学に勤務する教育
 系職員の就業に関する規程第2条第1号に規定する大学教員のうち、主として研究に従
 事するものとする。
(勤務時間の算定)
第2条 前条の規定による裁量労働制を適用される大学教員の労働時間は、所定勤務日に
 勤務した場合には、1日8時間勤務したものとみなし、その業務の遂行手段及び時間配
 分については、各々の教員の裁量に委ねるものとする。
2 出張、業務の都合等により本道キャンパス外で勤務する場合であって、あらかじめ所
 属長の承認を得たときは、前項に定める時間、勤務したものとみなす。
(苦情処理)
第3条 学長は、裁量労働制を適用される大学教員が労働時間その他勤務条件について苦
 情を申し出た場合には、相談窓口を設ける等誠意をもってこれに対処するものとする。
(健康・福祉の確保)
第4条 学長は、裁量労働制を適用される大学教員の健康・福祉を確保するため、健康診
 断時において健康状態についてのヒヤリング等を行い、必要な措置を講じるものとする。
(記録の保持)
第5条 学長は、前2条により特段の措置を講じた場合には、各々の大学教員ごとにその
 記録を作成し、本協定の有効期間及びその期間満了後3年間、これを保存するものとす
 る。
(適用除外者)
第6条 妊娠中の大学教員又は出産後1年を経過しない大学教員が請求した場合には、本
 協定は適用しない。
(協議)
第7条 育児を行う者、老人等の介護を行う者、研究を受ける者その他特別の配慮を要す
 る場合の本協定の適用に当たっては、学長は職員の代表者と協議するものとする。
(有効期間)
第8条 本協定の有効期間は平成16年4月1日から平成17年3月31日までとする。ただし、
 有効期間満了の3か月前までに、学長又は職員の代表者から別段の申出がない限り、引
 き続き1年間有効期間を延長し、以後も同様とする。

この協定案に関して、代表者側から出した文書は以下の内容です。最後の確認事項案は、
当局側が認めなかったことから、代表者・代議員側からの意見書という形になります。

○第1条について
 厚生労働省が教授、助教授、講師の部分と、助手の部分とを分けており、前者は「主に
研究に従事する」であるのに対して、後者は「専ら研究に従事する」とされていることを
規定に反映すべきである。例えば以下のようにする。
「本協定による裁量労働制を適用する者は、国立大学法人秋田大学に勤務する教育系職員
の就業に関する規程第2条第1号に規定する大学教員のうち、教授、助教授、講師につい
ては、主として研究に従事する者、及び助手については、専ら人文科学又は自然科学に関
する研究の業務に従事する者に適用する。」
○第2条について
 裁量に委ねるといっても、会議、授業の時間などをさぼることはできないので、  
 「・・・大学教員の裁量に委ねるものとする。ただし、本学が実施する授業、入試及び
 諸会議並びにこれらに直接関連する業務はこの限りではない。」
と、但し書きを入れた方がいいのではないか。名古屋大学でこのような文言が入っている。
但し書きがなくても、授業等は裁量ではないということが含み込まれているとも言えるが、
誤解が生じないようにするため、但し書きがあった方がいいのではないか。
○第3条について
 苦情処理に関しては、相談窓口の設定が明示されるべきである。今の文言では、苦情を
申し出た場合に初めて窓口が設定されることになっている。そうではなく、苦情が出やす
いように、最初から窓口が設定されるべきである。また、上司や人事課などには苦情を出
しにくいことから、過半数代表代議員なども窓口として設定されるべきである。
せめて、「学長は、裁量労働制を適用される大学教員が勤務時間その他勤務条件につい
て苦情を申し立てるための相談窓口を設けるなど、必要な措置を講じ、苦情を申し立てた
場合には誠意をもってこれに対処するものとする。」とすべきである。
○第1条について
 同意制を入れるべきである。どうしても入れないという場合であっても、下の「確認事
項」が確認されるべきである。
確認事項案(部局長や全教員に周知されるべきこと)
1)大学教員であっても、定型的な業務に従事する者、上司の監督の下に業務を行っている
 者など、勤務時間、勤務内容等について、裁量の余地をほとんど有しない者には適用す
 べきではない。「部局長が指定する」場合においても、当該者の希望を聞いた上で指定
 すべきであって、一律に適用すべきではない。
  特に現在、自発的意志・裁量によらず、研究のためでもなく、定型的な業務により大
 幅な超勤状態にある教員に対しては適用しないか、またはみなし労働時間を8時間以上
 にするか、もしくは増員する措置が必要である。
2)特に助手についての適用は慎重でなければならない。そもそも裁量労働制は、教授、助
 教授、講師で、主として研究に従事する者に適用される制度である。助手は、特例とし
 て、「専ら人文科学又は自然科学に関する研究に従事する」者にのみ適用可能だとされ
 ている。「主として」に比べて、「専ら」とは、研究だけに従事していることを指して
 おり、助手については、教授、助教授、講師とは同列には論じられない。それ故、研究
 に専念している助手を除き、事務作業、技術的作業、授業補助的作業が多い助手には適
 用されるべきではない。ただし、本人が研究専念助手への変更を希望する場合にはこの
 限りではない。
3)勤務時間について、始業時刻と終業時刻の設定が授業や会議など、拘束性が強いもので
 規定され、しかも最初から8時間を超えることがわかっているような、以下の場合など
 は問題である。
・1時限の授業があって、さらに9・10時限など、17:15以降の授業があり、最初から8時
 間を超えるような時間が設定されている場合
・1時限目の授業など、始業時刻が早い日に、17:15以降に会議が設定されていたり、17:
 15以前に会議が始まっても、恒常的に17:15以降に時間が延びるような場合
 ただし、教員自らが望んで一時限目の授業を設定している場合などは除く。
4)裁量労働制の適用を受けるということは、少なくとも研究部分について、各個人の裁量
 ・自由が完全な形で認められることを意味する。それ故、共同研究、プロジェクト研究
 などは、本人の自発的な合意が前提であり、参加の際も、教授、助教授、講師、助手の
 階層的上下関係ではなく、対等平等な関係として考えられなければならない。

来週には、手形も含めた形で協定の締結が行われる予定ですので、過半数代表者・代議
員に対して、みなさんのご意見をお寄せいただくとともに、各部局の教授会等で十分な審
議をしていただくようお願いします。
 裁量労働制は、確かに、大学教員の働き方に合致していて、使いやすいところはあると
思います。教員が通常の労働時間制にとどまる場合、研究室に残って研究するなどという
ことは超過勤務手当の問題が発生します。非常勤講師等の兼業も処理しにくいことも確か
です。裁量労働によって、自由を手にする代わりに、残業代を放棄するわけです(休日と
深夜は別です)。当局側は、財政的に負担が減ります。
 裁量労働制は、同時に、成果主義賃金やさらには任期制に連動してくる可能性がありま
す。評価センターとの関連も含めて、検討すべきところでしょう。極端な例を挙げれば、
授業一コマ何万円、論文何万円とすれば、年功賃金を廃止できるでしょう。教員は必死に
業績稼ぎをする必要が出てきます。それが大学経営にプラスになる場合もあるでしょう。
短期的には、ですが。それ故、裁量労働制で自由を手にしたように見えて、実は、より強
い束縛を受ける可能性があるのです。
 そういう意味で、裁量労働制はもろ刃の剣なのです。成果主義がすべて悪いわけではあ
りませんし、裁量労働制を適用することは自然の流れでしょうが、今後の展開をきちんと
見ておかなければならないということです。