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新首都圏ネットワーク

組合事務所貸与をめぐって討論


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1、組合の事務室貸与について、お伺いします。(大阪外大教職員組合)

@先行独法では、独法化をきっかけに、
使用者から事務室の利用料金を請求されたでしょうか?(光熱費、電話代は除く)
A私立大学では、無料で事務室を貸与されている組合があるでしょうか?
有料で貸与されている場合、月、あるいは年の料金はいくらぐらいでしょうか?
B国立大学法人で、事務室貸与の労働協約について協議した、あるいは協議中の大学では無料で貸与されましたか?(無料貸与の方向で話し合っていますか?)有料の場合は、いくらぐらいでしょうか?(いくらになりそうですか?) このような質問をしますのは、今日の協議で、私たちは労働協約の一つとして事務室貸与につい
て協議を申し入れたにもかかわらず、使用者側は、一般的な会議室の貸し借りとして扱い、学内・外にかからず、利用料金を取る。しかも、「1日2,344円、1年360日と換算して89万8,338円、これに水光熱費を加えて100万円でお願いしたい。」と言いました。
 大学の構成員の自主的な活動をどう見るか、労働組合の正当な活動を保証するのか、という問題がありますし、これまで無償貸与していたにもかかわらず、100万円の賃貸料を請求すること、利用時間を「原則として8:30から17:20」にすることについては、不当労働行為性があるように思います。
 労働組合法第2条第2号には、最小限の事務室の貸与は、労働組合の使用者からの経済的な自律性の要件を満たす範囲であるという内容のことが書かれています。
 これは、実態として、使用者から事務室を無償貸与されている組合が多いということだと思いますが、どうでしょうか?

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2、(山形大学職員組合)

 組合室の貸与に関しましては、もちろん、これまで無償で利用してきたという既成事実を盾にとって、そのまま無償で使用することを認めさせることは可能です。
 しかしながら、無償で組合室貸与を受けますと労働組合法による「使用者からの便宜供与」となり、労働組合法上の適法組合の資格が無くなります。
 この場合、当局が不当労働行為などを行った場合、労働委員会に救済などを申し立てる資格が無くなります。そのデメリットを考えると、なにがしかの使用料を支払って適法組合の資格を持っていた方が得策だと思います。
 ただし、金額については、必ずしも決まりはないので、労使の協議によって決めることとし、組合が支払える範囲で、常識的な額とすればいいかと思います。

 先ほどのメールで抜けていましたが、外大当局の要求する使用料は法外です。組合に対する嫌がらせ以外の何者でもありません。
無償での使用は問題がありますが、よほど広い大講義室のような部屋でも借りるのであれば別ですが、ふつうの古ぼけた狭い組合室なら、月額数千円から1万円くらいでもいいのではないかと思います。
 もし、万一、当局が金額についての話し合いに応じず、使用料について折り合いが付かない場合は、「組合室使用に対して応分の支払いをする意志があるが、協議が合意に至っていないので既得権として組合室は使用を継続する」旨、内容証明郵便で当局に送りつけ、継続しようすればいいと思います。
 そして、労働委員会に救済などを申し立てるような場合、その内容証明郵便を添えて事情を説明すれば、適法組合の資格は失われないものと思います。
 また、こういった法外な使用料を請求し組合活動への嫌がらせを意図的にするのであれば、次回以降の労使協定の締結などに於いても、組合としては、厳しい態度で臨まざるを得ないことを、通告しておくことも必要ではないでしょうか?

 その後、調べてみましたところ、最小限の組合室の貸与は労働組合法で言う「経理援助」に当たらないとする判断もあるようです。ただし、組合室の貸与は、使用者の義務ではないというのも定説のようです。従いまして、当面は、組合室使用料に関して協議が合意に至るまでは、既得権として、現状どおり無償で組合室を使用していればいいかもしれません。

 組合室使用に関して、さらに、いろいろ調べてみましたところ、どうも私の最初の理解が誤っていたようでした。
お詫びして訂正いたします。
 通説としては、労働組合法が禁じている「経費の援助」には、労働時間内の有給での協議・交渉、厚生資金または福利基金に関する寄付、最小限の広さの事務所の供与、組合事務所の光熱費の無償提供、有給の組合休暇などは、含まれないそうです。


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3、組合事務所の貸与(第6条)などについて取り決めた協約
        (奈良県国立大学付属学校・園教職員組合)

 組合事務所の貸与(第6条)などについて取り決めた協約を示します。4月6日に締結しました。 貸与などについて、「組合事務所の無償貸与及び組合掲示板の提供について、早期実現に努める」となっているのは、いまのところ適当な場所が無く、すぐに貸与できる状況でないからです。

◆◇◆『労使関係の基本事項に関する協約』◆◇◆

国立大学法人奈良教育大学(以下「大学」という)と労働組合奈良教育大学組合連合(以下「組合」という)とは、労使関係の基本事項について、次のとおり労働協約を締結する。
第1章 総則 
(協約の目的及び義務)
第1条 この協約は、大学と組合が、日本国憲法によっても保障された学問の自由と、それに基づく大学の自治に拠る良識の府にふさわしい話し合いの基調を確認し、対等の立場に立って相互に尊重しあい、協力して、奈良教育大学の永続的発展と組合員の労働条件その他待遇の向上に努め、もって将来にわたる労使関係の長期安定を図るため締結するものである。
2 大学と組合は、相互信義と誠意をもって、この協約を遵守し、各々その義務を履行しなければならない。
(協約の適用範囲)
第2条 この協約は、大学、組合及び組合員に対して適用する。
(協約の優先)
第3条 この協約は、就業規則、その他大学が定める労働条件などに関する諸規則、または、大学と組合及び組合員間におけるすべての労働契約に優先する。
2 就業規則の改廃については、大学はその都度、組合と協議し、これを行う。
第2章 組合活動
(組合活動の原則)
第4条 組合員は、組合活動の自由と権利を有する。
2 大学は、組合員が組合活動を行ったことを理由として、いかなる不利益な取り扱いもしない。
(組合活動と就業時間との関係)
第5条 組合活動は、原則として就業時間(休憩時間を除く)外に行う。ただし、次の各号の一に該当し、事前に日時・場所・理由・人員を大学に通知した場合は、この限りではない。
   一 団体交渉その他大学と組合で行うすべての協議、折衝等に出席する場合
   二 大学と組合で構成する各種委員会に委員として出席する場合
   三 その他、大学が業務に支障がないと認めて許可した場合
2 前項の各号に該当する場合は、その間勤務したものとみなす。
(大学施設の利用)
第6条 大学は組合に対し、組合事務所の無償貸与及び組合掲示板の提供について、早期実現に努める。
2 大学は、組合の申し出に基づき、集会、会議等に大学の施設の使用を認める。
(文書の配布)
第7条 組合は、大学内で組合活動に必要な文書等の配布を行うことができる。
第3章 団体交渉
(団体交渉権)
第8条 大学は組合の団体交渉権を尊重し、労働条件等に関する一切の交渉は組合を通じて行う。
(信義誠実の義務)
第9条 大学と組合は、団体交渉に際し、双方対等の立場に立ち、信義と誠実をもって、平和的かつすみやかに解決するよう努力しなければならない。
(応諾の義務)
第10条 大学及び組合は、いずれか一方又は双方より団体交渉の申し入れを受けた場合には、これに応じなければならない。
(団体交渉の対象)
第11条 団体交渉の対象とする事項は、組合員の労働条件その他待遇に関する事項、大学と組合との労使関係に関する事項、及び双方が認めた事項とする。ただし、事務折衝による交渉の進展をはかることを妨げない。
(団体交渉参加者) 第12条 団体交渉への参加者は、大学、組合双方が協議のうえ決定する。
ただし、大学、組合 双方ともに交渉
事項に関して決定権限を有する立場にある者を必ず含めるものとする。
(団体交渉開催の手続き)
第13条 団体交渉を行おうとする場合は、事前に次の事項を記した書面をもって、相手方に申し入れるとともに、次の事項について、充分話し合いを行い、取り決めるものとする。
  一 交渉事項
  二 交渉日時と場所
  三 交渉委員の氏名ならびに員数
2 開催の手続きの不備をもって、団体交渉に応じることを拒否しない。
(公開の原則)
第14条 団体交渉は原則として公開する。ただし、大学と組合の協議により、非公開とすることがある。
2 団体交渉に、とくに傍聴の必要ある場合は、あらかじめ相手方の同意をえて、出席させることができる。 
(交渉妥結事項の効力)
第15条 団体交渉事項について、大学及び組合双方が合意した内容については、原則として直ちに成文化し、それぞれを代表する者が記名押印し、この協約と同一の効力があるものとする。
2 前項の文書は2通作成し、大学及び組合が各1通を保管する。
3 合意事項について大学及び組合は双方誠意をもって実施する。
(遵守事項)
第16条 団体交渉において、問題の円滑かつ迅速な解決を図るため、大学と組合は次の各号を遵守する。
  一 交渉が予定時間を超過しても未了の場合、大学又は組合いずれか一方の意志により交渉を打ち切ることができる。ただし、交渉打ち切りに当たっては、次回の交渉期日、場所等について大学と組合が協議の上決定しなければならない。
  二 交渉中に大学と組合の交渉委員が行う外部との通信、連絡、交渉場所への出入り等の自由を妨げる
行為をしてはならない。

第4章 付則
(協約内容の一部改定)
第17条 大学及び組合は、この協約の一部を改定する必要を認めたときは、団体交渉により、これを処理する。
(疑義・適用の解明)
第18条 この協約に疑義を生じた場合、またはその適用の解明を必要とする場合には書面をもって相手方に通告し、その日より30日以内に協議する。
(有効期間)
第19条 この協約の有効期間は、2004年4月1日より1年間とする。
2 ただし、有効期間満了の30日前までに、大学又は組合のどちらか一方、又は双方から、改廃の意思表示がないときは、協約はさらに1カ年間有効とする。それ以降も同様とする。
3 前項により、大学・組合いずれかの申し入れにより、団体交渉において交渉しても、期間満了に際し協約が成立しない場合には、90日間にかぎり、この協約が引き続き効力を有するものとする。
(保管)
第20条 この協約は原本を2通作成し、大学及び組合が各1通ずつ保管する。


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4、組合事務所貸与については以下のように理解しています。
     (東北大学K)

・どこまでの便宜供与なら支配介入に当たらないかは様々な学説や判例があるので、一概には言えない。
・「最小限の広さの事務所の供与」は支配介入にあたらないので、無償で供与させても労組法には違反しない(労組法第7条第3項)。
・「最小限の広さ」は社会通念による。
・その事務所に社会通念上当然含まれると考えられる備品も含まれてよい(松岡三郎・松岡二郎『口語労働法』自由国民社)。
・ただし、組合が当然に事務所貸与を要求しうるのではないというのが通説(西谷敏『労働組合法』有斐閣)。
 大阪外大の場合は、上記の一般論だけでなく、従来から貸与されてきた事務所ということが重要だと思います。
・従来慣行として事務所が貸与されてきたことについて、合理的理由なく使用条件を悪化させることは支配介入であり不当労働行為を構成する(西谷、前掲書)(いま手元に本がないので表現が正確でないかもしれません)。
 他の大学で同様の事態が生じた場合もこの見地が重要と思います。


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5、熱心なご指導と暖かい応援に感謝(大阪外大教職員組合)

 当局が、3月末になって、採用日を恣意的に変更して、就業規則の過半数代表の母数から非常勤講師を削除しようとしたことを31日に阻止したことから始まり、労使協定の協議を2日間で終わらせようとしたことに対し、充分な協議を行うよう軌道修正し、36、裁量労働制の協定が9日になったり、当局の不当なやり方を押し返しましたが、労使協定が終わるやいなや、態度は豹変し、89万+光熱費=100万円の事務室利用料金を請求し、ハラスメントにあっているような不快な思いがしました。
 「じゃあ、中とって50万円!」という副学長は、半年前までは純粋な学問の世界に生きてきた方で、びっくりするとともに恥かしく思いました。
4月1日以降、こういうことを言わせる思想と様々な問題で闘うことになるんだな、と改めて実感しました。
 また、過半数代表は組合の委員長なので、過半数代表の不利益取り扱いになるのではないか、とも思っています。
 私たちは3月末に組合規約を一旦現状にあうよう改正し、労働委員会の救済を受けるレベルにはどこを修正したらいいか指導を受けました。
 就業規則の作成段階では労働基準監督署に通いましたが、これからは労働委員会、総合労働事務所に相談して解決することになりますが、民間企業と違う元国立大学の実態はどうか、ということについてこれからも教えていただくことと思います。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。
 そして心から感謝申し上げます。