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『愛媛新聞』社説 2004年4月9日付 国立大法人化スタート 効率一辺倒でなく個性重視を 全国の国立大学が「国立大学法人」として再スタートした。愛媛大でも新制 度になって初めての入学式が行われた。 授業や学費など当面はあまり変化がないものの、中長期的には大きな変化も 予想される。それは必ずしもプラスばかりではないだろう。不安がつきまとう 中での船出といった印象だ。 国立大学の独立行政法人化は、政府が行政組織のスリム化を目指して提唱し たいきさつがある。それだけに、大学経営の効率化、低コスト化が柱の一つに なっている。 そのことは早くも大学側にとって頭痛の種になっている。国が配分する運営 費交付金(大学の予算)はすでに削減の方針が出され、教育研究費や一般管理 費は二〇〇五年度以降、毎年1%ずつ削減されるという。一部の大学では非常 勤講師のリストラなどが始まっている。 一定の効率化はやむを得ないとはいえ、予算は教育、研究を保証する根幹だ。 一律削減には慎重であるべきで、見直しも検討すべきだ。 法人化で国の関与が過剰になるのではないか、という懸念も強い。大学の経 営方針を定める中期目標(期間六年)は文部科学相が策定し、さらに目標の達 成度や研究成果を文科省が設けた評価委員会が評価して、予算の配分に反映さ せる仕組みになっているからだ。 予算の執行については大学の裁量が増すとはいえ、こうした仕組みがある以 上、過剰介入が懸念されるのは当然だ。その兆しがもう見え始めている。 今年初め、評価委員会は国立大学がまとめた中期目標・計画の素案に、もっ と数値目標を増やすよう注文をつけた。 こうした数値目標はもともと教育や研究にはなじみにくいものだ。特に文系 や、短期間では成果が出ない基礎研究などは数値化が困難で、押し付けは厳に 慎むべきだ。評価委の姿勢には疑問を感じる。 他方、これまでの国立大学の一部に、ぬるま湯的な面があったことも否めな い。十年一日のごとき無気力な授業などは論外で、教員の任期制導入や、学生 による授業評価制度などの方針を打ち出している大学も少なくない。キャンパ スに活気をもたらす意味で評価できる。 法人化で国立大学は厳しい環境にさらされる。企業の支援が得られにくい地 方では、なおさらだ。だからこそ各大学が個性を発揮し、存在感をアピールす ることが重要となる。 その点で、愛媛大の努力は光っている。世界最高水準の研究を目指す「21 世紀COEプログラム」に四国で唯一選ばれた沿岸環境科学研究センターや、 無細胞生命科学工学研究センターなどの先端的研究は今や大学の「看板」にな りつつある。 研究センターの関連学部には意識の高い学生を募集する「特進コース」を設 置し、研究エリートの養成を目指す計画もある。法人化と少子化による厳しい 競争を生き抜くためには、こうした前向きの姿勢を続けていくことが大切であ る。 |